僕は自動ドアを抜けて、アイテムショップに入った。対戦に勝つためには、
それなりの準備が必要だ。手持ちは心細いがとにかく整えておかないと。
「いらっしゃいませ」
 鈴を転がすような声に迎えられる。僕の目は、アイテムが並ぶショーウイン
ドーよりも彼女に、彼女の胸に吸いつけられる。
 ここの店員、布川ミクさんは可愛い顔にポニーテール、そして驚くべき爆乳
の持ち主。ふりふりのウェイトレス服が抜群に似合い、服を見事に押しあげる
ふたつのふくらみに目を奪われない男はいないだろう。もちろん僕もそうだ。
 ……目の保養に来たわけじゃないって。
「えっと、あはは」
 ごまかし笑いをして、ウインドーに目を移す。
 といってもなにを買うべきか。迷う僕は見栄を張ることなく素直に、ミクさ
んにアドバイスを求めた。
「……勝ちたいですか?」
「え? そ、そりゃそうですよ」
 話を聞いてくれたミクさんは、じっと僕の顔を見て、尋ねてきた。あまりに
当たり前なことを聞かれて僕は面食らう。
 ミクさんは可愛い顔を曇らせて、小さく咳払い。
「失礼ですけど、そのようには見えません」
「そんな、『見えません』って言われても」
 まっすぐ見つめられ、うつむいて頭を掻く。
 僕は、典型的な『草食系男子』だ。がつがつと食らう強さなんかないし、な
いものは顔に出るわけがない。自覚はあった。
 だからこそアイテムでカバーしたい、そう言おうとしたらミクさんの顔の曇
りが消えていて、華やかな笑みを浮かべている。