ガーデンアーチを潜り抜けた先には、甘い芳香を漂わせる白い花々の垣根が広がっている。
アスターの少し後ろで感嘆の声が聞こえた。純粋に花々を、甘い香りを楽しんでいるようだ。
だがずいずいと進んでいくアスターに違和感を覚えたのか、次第にその声が不安げなものに変わる。
そして。人気の全くない垣根の角にたどり着くと、ようやく振り返って彼女の体を引き寄せ、後ろから抱きしめた。
「お前、ネリーと何を話してたんだ?」
耳元に唇を寄せ、囁く。彼女の首筋が粟立っていく。
「な、なんでもないんです! あの、大したことでは…」
「ふーん。そうか、俺には話せないんだな?」
彼女の首筋から漂う果実のような芳香が堪らない。刺激するのは、何もアスターの鼻腔だけではなくて。
彼女が小さく悲鳴を上げた。どうやら、アスターの変化に気付いたらしい。
「や、やだっ…アスター様!」
「たまには外でするのもいいだろ」
服の上からやんわりと胸を揉む。先ほどまで腕から抜け出そうともがいていたのに、急に動きが鈍った。
「いつもより感じるのが早いな。」
「そんなこと、……っ!」
口ではそう言うがやはり体は正直なもの。胸を強く揉むにつれ、体がどんどん熱を帯びていく。
抵抗の意で身を捩っていたはずが、いつの間にかくすぐったさによる身体の反応へと変わっている。
この素直過ぎる身体がアスターを欲情させる。最も、そう開発したのは自分なのだが。
「言いますっ…、言い、ますか、らっ……! も、やめて……」
甘い吐息を漏らしながらミオは切なげに懇願する。だが、もう遅い。
「やだね。」
耳筋に舌を這わせながら、手を徐々に服の中へ侵入させていく……

そんな時だった。

「おい…こんなとこで楽しんでる場合じゃねーぞ! アスター!!」
突然の乱入者により、漂っていた甘い空気が一瞬にして打破される。
乱入者の介入によって生じた一瞬の隙に、ミオはアスターの腕から逃れ慌てて衣服を正した。
恨み言の一つや二つ述べてやりたい気分だったが、乱入者の…シュロの珍しく慌てた様子がまたもそれを打破する。
「何があった? そんなに慌てるとはお前らしくない」
「それは…今ここで言う事はできね。だが、不味い事になってるのは確かだ。」
シュロがちらりと見遣ったのは、ミオの姿。その視線を察した瞬間、今起きている“不味い事”というのが何なのか、おおよそ察知できた。
「すぐに謁見の間へ向かう。…ミオ、お前は部屋へ戻っていろ。」
「ですが…アスター様」
「今すぐ部屋へ戻り、一歩も出るな!!」
冷静なアスターからは考えられないような怒号にミオはただ圧倒され、言葉無く了解するしかなかった。