無事にNYでの仕事を終えて、1年ぶりのSOBAR。
「ただいま」
「凛太郎〜!さびしかったわよ〜。元気だった?」
「おぅ。ケンちゃんこそ、元気だった?」
「もちろんよ〜。そんなことより、桜ちゃんには会った?」
「いや。明日、店に顔出すよ」
「…桜ちゃん、別れたのよ」
「え?何で?」
「う〜ん…あっ!噂をすれば…」
階段を下りて来たのは件の元彼だった。
「立花さん。やっぱりここに来たんだ。桜さんには会いました?」
「…別れたんだってな。…どういうことだよ」
「どういうことって…あなたがいちばんよくわかっているんじゃないんですか?」
「はぁ?俺は、あいつに幸せになってほしくて、君のところに行かせたんだよっ」
「最初は幸せでしたよ。でも、桜さん、だんだん元気がなくなって…。店長になって忙しくなって、疲れて傷ついて帰って来るんですよ。心が綺麗だから、余計に。
でも、俺が励ましても、逆に桜さんに気をつかわせるみたいで…。立花さんがいれば、相談したり、…いや、きっと冗談を言い合ったりするだけで立ち直れるんだろうけど…。
桜さんが桜さんらしくいるためには、あなたが必要なんです。俺じゃなくて」
「無責任なやつだな、君は。だいたい、俺とあいつの関係はそそういうんじゃない。家族みたいなもんなんだ」
「桜さんもそんなこと言ってたけど。家族って…恋人を超えてますよね。俺は桜さんの恋人にはなれるけど、家族にはなれない。
彼女が、一緒にいて本当にくつろげる男はあなたしかいません。桜さんのこと、よろしくお願いします。まだお店にいると思いますよ。それじゃ。」
広斗は風のように去って行き、半ば茫然とした凛太郎が取り残された。
「ケンちゃん…俺、あいつはてっきり幸せになってると思ってたんだよ。それなのに…。俺はどうすりゃいいんだ…」
「…凛太郎?桜ちゃんに幸せになって欲しいって気持ちは変わってないんでしょう?それに、もう若くないんだから、自分の幸せも真剣に考えなきゃ」
「…うん。わかった。行って来る」