バッターボックスに立つ。2塁には矢部部。お得意のヘッドスライディングでセーフをもぎ取ったのだろう、只でさえ色黒な顔は正に真っ黒だった。
ベンチには蛇島、渋谷、少豪月、鶴屋、大塔……見事送りバントを決めたらしい六道は説教をしている。相手は勿論、一番端でばつが悪そうにしている橘である。
ピッチャーは直井。相手のエース、大曲が変化球を軸にした軟投派だったのに対して、こちらは本格派といった所。
審判の合図。観客席からの大きな声援。ベンチから聞こえる、仲間達の必死の願い。
狙うのは初球だ。俺達の夏を、ここで決める。その一心を、次の一振りに込めるのだ。
『壱琉高校、ピッチャーは2番手直井、対する激闘は4番、友沢。第一球……!打ちました!友沢初球から打って出た、センター下がる、下がる、大きいぞ――!!』