はぁ、と進はため息をついた。聖は有名人だ。厄介なことに、本人にはあまり自覚が無いのだが。
なにせ一国の代表選抜に残る女性となれば、どんな女傑や怪物かと思われがちな所を、この儚げな美貌だ。他国の屈強な男達の関心の的にもなる。


「……ところで、進さんはどうやって彼らを追い返したんですか?」

「……まぁ、ネームバリューってやつですかね?」

「ねーむばりゅー……」


ススム・イカリの名は、野球の世界では数々の輝かしい実績と共に知られている。今回のプレミア12でも最も注目されている選手の一人だろう。
だから聖は、進が自分のことを後輩だとでも言って守ってくれたのだろうと考えた。


「なるほど……進さんの貫禄勝ちといったところですか」

「あはは……そういうことにしておきましょうかね。ところで、散歩にでも行くつもりだったんでしょう?付き合いますよ」

「むっ。お願いします」


――
(『人のものに手を出すな』はちょっと不味かったかな?)