SOUL CATCHER(S)でエロパロ
0001名無しさん@ピンキー2013/11/21(木) 15:34:54.48ID:EC9VYa+e
SOUL CATCHER(S)の女の子達を皆それぞれ自分勝手に指揮するスレ。

自由に指揮してOKですが基本を守ることは大前提。

何かアブノーマルな要素を加えたい?
指揮者は周りの人間に気を使わなければならない存在です。
十分に注意して人の心と向き合いましょう。

男同士の絡みを指揮したい?
当スレの題材とは異なる曲目なのでご遠慮ください。
0004名無しさん@ピンキー2013/11/22(金) 17:46:56.58ID:XjESE/J7
カスミンに後ろから手コキされながら
「早速イこう!ゴゥゴーゥ!」って言われながら射精したい
0005名無しさん@ピンキー2013/11/22(金) 18:15:38.64ID:V59afu7u
(2週間溜め込んだ特濃精子に)さ よ な ら を
0006『谺先生パないっす』2013/11/23(土) 05:52:58.21ID:4Obc0aqT
「谺先生…もう、うっ…!出ないっす…!」
「お…俺ももう…」
「なに…弱音吐いてるの…!
お前達、まだ…こんなに元気じゃない…!」

放課後、音楽準備室──
今日も私は男子部員を二人ばかり立ち並ばせてチンポを手でしごいてやっている。
単刀直入に言えば性欲処理をしてやっている。
まあ手コキ以外はやらないけど。
私を含めて誰も何も着てない。
膝立ちの私の胸と股間に血走った目線が集中している。
こいつらときたら、私がこうして処理しないと部活の最中に発情しかねないほど滾っている。
うちの部はそれなりの女子は揃ってるとは思うが、
こんな風に日替わりで何人か発散させなきゃ爆発しそうにまでなるものなのか?
思春期ってのは全く恐ろしいな…
まあ、部員同士でトラブル起こされるよりはマシだろう。

「あっ、また出ます…!」
「お、俺もっ!」
「顔にはかけるなよ…!」

張り詰めたチンポを自分でしごきだした二人は、
今日何度目か(少なくとも五回。数えても仕方ないが)、
私の胸に、熱く濃く匂い立つ精液をぶちまける。
膝と腰を震わせながら、私に見られながら射精するのに興奮し、
惚けた表情でこちらを見下ろしている。

「ふう…全くお前達、毎回毎回よく出すな…。
どこにそんなに溜まるんだか…」

照れくさそうに私に目をやる二人。
この反応を見ると、やっぱりまだ子供だなと思う。

「さて、じゃあ今日はこの辺で…」

いつも弱音吐くぐらい射精させてやれば、
皆満足して帰っていく。
今、今日この時もそのタイミングのはずだった。

「先生…俺もうガマンできないっすよ!」
「え?きゃあっ!?」
0007『谺先生パないっす』2013/11/23(土) 05:53:48.74ID:4Obc0aqT
後始末をしようと立ち上がった瞬間、
背後から急に羽交い締めされる。
さらに、前からもう一人に両手首を掴まれ身動きがとれなくなってしまう。

「ちょっ、バカ!お前達何やって…!」
「いつも…先生の身体見て興奮してたんすよ…!」
「そうですよ…そんなエロいラインの身体毎日見せつけられて…
勃たない男子なんて居ませんよ!」

え?あれ…コイツ達が発情してたのって女子達に対してじゃ…?

「こんなブチ込みたくなる尻いつも強調して…」

後ろから尻の割れ目に精液でヌルヌルの硬いチンポを擦り付けられる。

「キレイな胸の谷間覗けるような服着てさあ…」

前からは抵抗して揺れる乳房に顔を近づ熱い息がかかってくる。

「ほ、本当にやめろってば…!」
「そんなこと言って乳首立ってますよ…
襲われるの好きなんでしょう…?」
「股間からも汁垂れてるっすよ…はは…」

必死に閉じようとしても、何故か力が入り切らない脚の間にチンポを差し込まれ、
熱くぬめった舌と唇で乳首にむしゃぶりつかれる。

「ちょ、ちょっと…そんなダメ…ひうっ!」

震えて一瞬脚を開いてしまった隙を見逃さず、
自らの潤滑油に塗れたチンポが一気に膣内に侵入してくる。

「くあああああああああああっ!」
「あれ?先生イっちゃったの?そんな全身ガクガクさせちゃって…」
「うわやば…マジエロすぎ谺先生…」
0008『谺先生パないっす』2013/11/23(土) 05:55:20.73ID:4Obc0aqT
前方の男子は放心状態の私から離れ、
チンポをしごきだした。

「先生のナカぐちゃぐちゃ蠢いて最高…
これならまだ何回もいけるわマジで…」
「ああ…この光景見てるだけで出そう…」

こんな…生徒に立ちバックでハメられて…
それをオカズにされて…私…私…!

「ひぐぅっ!そんな、奥っ!グリグリするなぁ!」

羽交い締めのまま腰を思い切り押し付けられ、
子宮口まで届くチンポに身体が喜んでもっと締め付けてしまう。

「くあっ!ナカすっげ…こ、谺先生!出すよっ!」
「お、俺もイク…!」
「ば、バカ!中はダメっ…ふぁああっ!」

下腹部からドクドクと熱すぎる粘液を注がれ、
脚に力が入らなくなった私の身体は崩れ落ち、
直後、さらに前から顔面全体にぶちまけられた。
若々しい精液の匂い、味、感触に、
私の理性はどこかにとろけて無くなっていった。

「あっ…んっ、はああああ…」

それから何度犯されただろうか…。
今も突かれる度に精液なのか愛液なのか分からない白濁が、
グチャグチャ音を立て膣から押し出され飛び散っていく。
もう腹の中も外も、尻も胸も顔も精液で粘ついて動く度ににちゃにちゃ音がして、
部屋中熱気に満ちてて誰もが汗だくで、
体力なんてもう無いのに、雄の匂いに子宮が反応してしまう…。
あれ…?私なんでコイツの上で腰振ってるんだろ…?
0009『谺先生パないっす』2013/11/23(土) 05:56:27.45ID:4Obc0aqT
「はは…ちょっと先生…こっちの穴までパクパクして欲しがってますよ?」
「うわ先生…どんだけ開発してんすか…」

え…ダメそこは…あ、声うまく出ない…。

「ひっ…くっ、はあああああっ!」

未だに硬さを失わないチンポが私の二つの孔を深く激しくえぐってくる。

「先生さあ…部のためとか言ってるけど、
実際チンポ欲しいだけなんでしょ…?」
「だよな…いつも俺らの股間ばっか見てるもんな…」

そう…その通りなんだ。
もう…駄目だ…全部認めてしまおう。
今の私の心は、性器の奴隷なんだ──

「ああ…そうだ、チンポ大好きだからぁ…
早く、もっと…掻き回してくれ…」

下から尻を捕まれ、後ろから両腕を掴まれ、
宙に浮いたような感覚の私の身体に、
下から、後ろから、若さが激しく突き込まれる。

「あっ、あっ!チンポぉ、あっ!二本ともガチガチですごいぃっ!」
「谺先生すげえっ…!俺またいっぱい出ちゃいそうっ!」
「ああ…全部吸い取られそうだ…」

いろんな液体があちこちに飛び散る。
嬌声がいくつも交差する。
もうこの快楽にむしゃぶりつくことしか考えられない…!

「イ…ク…生徒の勃起チンポで犯されてぇ…!
生臭い、ドロドロザーメン注がれてぇ!またっ…またイクうううううううっ!」

全身に精液をぶちまけられたような感覚に、
私の意識は弾け飛んだ──
0010『谺先生パないっす』2013/11/23(土) 05:57:32.37ID:4Obc0aqT
数十分後。
仁王立ちの私。
対して正座する二人の男子生徒。
私を含めて誰も何も着てない。

「全くお前ら…本当に散々やってくれたな…
相手が私だから良かったものの…」

数分ほど前から説教。
頭が冷えてきた二人は気まずそうに顔を伏せている。
うん、そろそろ…。

「しかし、学生の欲求を舐めていた私にも責任はある…。
仕方無いから今回に限って大目に見てあげるわ」

安堵した表情でこちらに目を向ける二人。

「まあ…でも…お前達?」

下腹部から漏れ落ちる熱の感覚を確かめる。
それだけで少し滾ってきてしまう。
こんな風にされた責任はとってもらわないとな。
無用な確認だろうが、一応私は訊いてみる。

「次からは今まで以上に搾れるってことだよな?」

さあ、明日からも部員達を鍛えてやらないとな。


end.
0011名無しさん@ピンキー2013/11/23(土) 05:58:35.13ID:4Obc0aqT
ただひたすら谺先生をほにゃららしたかったので、
他の要素は殆ど気にしてませんサーセン
0014名無しさん@ピンキー2013/11/24(日) 21:30:21.21ID:+Ii2yyi5
御器谷先輩の卑屈ガチムチチンポを笑顔で搾り取る天然ドSカスミンが見たい
0015名無しさん@ピンキー2013/11/26(火) 23:19:28.96ID:c2MdRxq+
実際神峰が誰かとヤルとなると女側より神峰側をその気にさせるのに苦労するな
0016名無しさん@ピンキー2013/11/30(土) 01:55:52.38ID:hLOqMGED
カスミンのニーソにぶっかけたい
カスミンのニーソに挟まれたい
カスミンのスカートに顔を突っ込みたい
カスミンのおっぱいを後ろから鷲掴みにして困らせたい
カスミンに泣きながら土下座して頼んでおっぱい触らせてもらいたい
カスミンのおっぱい吸いたい
カスミンに笑顔でしごかれたい
カスミンの三つ編みでしごきたい
カスミンの唇を無理やり奪いたい
カスミンのお尻に踏まれたい
カスミンのおっぱいに俺のフルートを挟んでもらいたい
カスミンに俺のフルートを踏んでもらいたい
カスミンに俺のフルート咥えてもらいたい
カスミンの顔に精子ぶっかけて汚したい
カスミンに射精後のお掃除フェラしてもらいたい
そのままカスミンと本番セッションしたい
0018名無しさん@ピンキー2013/12/05(木) 00:28:56.43ID:RsSQDHGe
本番前では経験豊富のように振る舞っているがいざ本番になると赤ん坊のようにカスミンのおっぱいにむしゃぶりつく暴君
0019名無しさん@ピンキー2013/12/18(水) 18:53:07.01ID:zTRpnJfu
ふぅ…
0020名無しさん@ピンキー2013/12/22(日) 02:29:11.21ID:ks4GK0m5
「ティータイムは終わりだ
翔太ァ!今すぐ指揮棒を抜けィ!!」ヌギヌギ

「はッ!?」ボロン

「翔太!その指揮棒であたしと勝負しだ!!」
0021名無しさん@ピンキー2013/12/27(金) 19:20:33.21ID:9XemHxRL
誰か助けてくれ
大人になった翔太とメグ先輩が漏れの脳内に同棲してイチャイチャしてるんだorz
0022名無しさん@ピンキー2013/12/27(金) 21:51:55.50ID:ipZgCrC7
>>21

ハコから出してやらなきゃ……

・部屋を借りて同棲し始めるもイチャついてしまい片付けが捗らない
・料理張り切りすぎで片付けが捗らない
・ピアノだけは整えてあるので取り敢えず練習
・みやびん近づいて指導しようとするけどフワフワした空気に煽られスキンシップ開始
・学生時代にはあまりイチャついてなかったので、
今でも『こういうとき』は「神峰」「邑楽先輩」呼びになってイケナイ学生気分で励む


さあ……>>21のソロだ↓
0023名無しさん@ピンキー2013/12/29(日) 03:07:11.19ID:i1zuR7LQ
>>15
神峰の場合はラッキースケベから入る以外は想像つかんな

保健室(保健師不在)で神峰がベッドに倒れ込んだらカスミンが寝ていて胸を触る
→神峰にその気がなくても体は反応
→カスミンやる気「神峰くんー我慢はだめだよー」

邑楽が相手なら何かショックなことがあって泣いてる神峰を抱きしめて慰める系H。

誰か書いてくれorz
0024名無しさん@ピンキー2013/12/29(日) 23:58:44.70ID:HYMLV+52
誤解を恐れず真摯に言うぜ?

神峰(オトコ)がいなくても

エロパロは書ける
0025名無しさん@ピンキー2013/12/30(月) 03:24:09.40ID:HL7Y04c0
百合はいいのか?

カスミン×コダマン、ミヤビン×メグミンもいいし、美子×舞なんてのも・・
楓姉さんとモコ・・・
0026212013/12/30(月) 13:44:29.11ID:/D2coOTD
うーんどうしたもんか・・・

実家のPCだから書き溜め出来ない
即興で書くか?
002821 ◆w7T2yFC1l7Bh 2013/12/31(火) 21:24:58.14ID:oFGrB5Qn
即興で書いてみるが果たしていつ終わるか(^^;
NGは名前のトリか番号で。タイトル無し
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(1)
もうすぐ帰って来る頃だ。
恵は上機嫌で鼻唄を歌いながらキッチンで動き回っていた。
師匠のスパルタ的な日程を言いつけられてから1ヶ月、翔太が今日、帰って来る。
先ほど彼女にも連絡が入った。日本の空港に着いたらしい。
つまり、もうそろそろだ。
愛用の可愛らしいエプロンを身に纏い、いつもより少し豪華なメニューを揃えていく。
今日は気合が入っているようだ。
何せ、ニュースや仲間のコネで聞いた彼の指揮は上々の評判で、恋人の自分としても鼻が高い。
おっと、もうすぐ妻になるんだったか。自分の指に光る物を見て、その事を再認識した。
1ヶ月振りに帰宅する彼を迎える準備はほぼ万端だ。
恐らく、今の顔の緩み具合は見るに堪えないだろう。自分でも分かるが、こればかりはどうしようもない。
盛り付けが終わった所でチャイムが鳴り、未来の夫の帰宅を告げた。

* * * * * *

翔太はただいまを言い、ドアを開けた。
ダイニングから恵が顔だけ覗かせてお帰りと言ったのを横目に見ながら鍵を掛ける。
靴を脱ぎ、恵の方を向いた時、彼女の華奢な体が勢い良く飛び込んで来た。
「おっと」
少しびっくりして抱きとめた。
「えへへへへへへへへへへへへ」
胸板に顔の感触を感じる。スリスリと頬を擦り付けているようだ。

出会った頃は、恵がこんな風にデレるとは想わなかった。
付き合い始めも、先輩後輩が抜けなくてぎこちなかったものだ。
恋愛の機微に詳しい先輩や友人達に聞くとどうやら”ツンデレ”であるらしい。
翔太には今もって良く分からないが、皆が言うならそうなのだろうと思う事にしている。

シャンプーの匂いが彼の鼻腔をくすぐり、家に帰って来た事を実感させる。
だが、抱きしめた瞬間、両手は重大な違和感を翔太に伝えた。
「あの、さぁ」
「なぁに?」
尚も胸板に顔を埋めながら、恵が聞き返す。
「あの、えっと……」
躊躇いがちに口を開いた。
「何で…エプロン以外に何も着てないの…?」
身長差故に上から見下ろす格好の翔太には、黒髪の下にまっさらな肌色が見え隠れしている。
目線を下に移すと、本来なら下着や服に隠れているハズの二つの柔肉もさらけ出されていた。

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話はまだ続くけど一旦投稿ε-(ーωー;フゥ
002921 ◆w7T2yFC1l7Bh 2013/12/31(火) 21:55:15.83ID:oFGrB5Qn
(2)
狼狽える彼を見上げ、恵は急に不安に駆られた。
「も、もしかして、こういうの嫌い…?」
「いや…突然だったから、その…どういう事?」
「えと…み、皆に聞いたら、こういうのがいーかもって…言われ…たんだ、け、どぉ…」
しどろもどろになり、語尾が細く小さくなっていく。心の内もおろおろしているらしい。
(『皆』…?)
翔太の心にそれが引っ掛かった。
「皆って?」
何やら嫌な予感がする。
「え〜と…翔太がもうすぐ帰って来るって聞いたからさぁ…何か喜んで貰えるような事無いかな〜って…」
もじもじしながら上目遣いでこちらを窺う。
まるで怒られそうな子供のようだ。
「一昨日ね、皆に相談したの…ほら、鳴苑の」

吹奏楽部で一緒だったメンバーに連絡を取り、個別に少し相談を持ちかけたらしい。
無論、大学やその他の友人も居たが、二人の共通の知り合いはあの頃とは比ぶべくもない。
正確には、二人を非常に良く知っている、という枕詞が付くレベルの、という意味だが。
別に悪くは無いのだが――。

何故だろう、昔の仲間達がニヤニヤとこっちを見ている映像がありありと思い浮かぶ。
背筋に悪寒が走った翔太は、思わず目の前の華奢な体を強く抱きしめた。
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取り敢えずここまで
003021 ◆w7T2yFC1l7Bh 2013/12/31(火) 21:58:25.15ID:oFGrB5Qn
全体が長くなりそうだorz
今日はここまでかな
0032名無しさん@ピンキー2014/01/01(水) 04:16:32.48ID:IIy4ceMk
おつ!あけおめだオラァ!
なんか別漫画だが千秋×のだめを見てるようだw
003321 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/01(水) 11:16:13.60ID:SgXFl0m1
>>31
改行・・・これでも空けてる方だが、もうちょいやってみるか
>>32
確かにキャラ崩壊してんなorz
二人きりではデレまくるって事で許してくれ
続き↓
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(3)
力強く包み込まれ、恵はポカポカした安心感に浸る。
彼女も翔太の背中に両腕を回し、体の隙間を潰した。
大きな胸が重量感と熱を翔太に伝える。

普通の男なら恐らく押し倒してしまうだろう。
だが翔太は現在、脳裏で皆の顔がぐるぐると渦を巻いている。
恐らく恵の心が作用しているのだろう。
声を掛けられるまで抱きしめたままぼうっとしていた。

「あ、ねぇ、ご飯とお風呂とどっちがいい?」
「え、あ、えっと…」

はっと我に返り、自分が現在置かれた状況を整理する。
帰宅直後で、裸にエプロンを引っ掛けただけの恋人が自分に抱き付いている。
そう言えば、お帰りの口付けをしてない。

「恵」
「うん?」

きょとんとした顔で見上げてくる。
翔太はふっと微笑み、彼女の顎を持ち上げた。


「ただいま」

「んぅっ」


1ヶ月ぶりのキスは、二人の頭に甘い痺れをもたらした。

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一旦投稿
流れは組み立てたが途中が長いかも試練orz
003421 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/01(水) 21:44:24.36ID:SgXFl0m1
(4)
最初は軽いキスだったが、やがて濃厚な味に変わっていく。
舌を絡め、唾液を混ぜ返す。
体が蕩けるようだ。

恵が翔太の首にしがみつく。
返事のように、翔太の両腕が恵の頭と背中を支えた。

――ちゅぱっ、ちゅっ――

涎が溢れ、口の端から漏れる。
それすらも逃すまいと二人で舐めあい、ディープキスは尚も続いた。

何度も味わう内に、恵の体の内側が熱を湧き上がらせる。
本能的に足をムズムズさせ、翔太に片足を擦り付けた。
太ももをマーキングするように擦り付けていると、不意に翔太が動いた。

「ふぁっ…?」

顔を離され、壁に押し付けられる。
壁の冷たさを感じた瞬間、耳たぶを舐められた。

「ひゃんっ!?」

ビクッと肩を竦める。
翔太は間髪入れずに、重量感の有る両乳房を文字通り手中に収めた。

「ぁっ…」

指が硬くなった先端に触れたらしい。
恥じらいで掠れた声が翔太の耳に飛び込む。

「ここ、弱いもんな…」
「ぅん…」

耳元で囁く。
弱弱しい返事が返ってくる。
恵の肩が震えているのは、恐怖では全く無い。

「恵」
「あぅっ…んっ…」

耳を甘噛みしながら、片手では零れてしまう双丘を揉みしだく。
息が荒くなってきた。
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取り敢えず投稿
003521 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/02(木) 11:28:59.02ID:pbi7GQFB
(5)
耳や首筋にキスの雨を降らせ、胸を弄ぶ。

「しょっ…たぁ…」

切なげな懇願が頭に響く。
正直自分も興奮はしているが、まだまだ。
翔太はこういう時、指揮者の癖が少し出る。


――演奏者たる彼女の限界を知りたいという欲求――


胸元まで舐め回し、屹立して存在を主張する頂を口に含んだ。

「あふっ」

また恵の体がビクッと跳ねる。
肌が上気し、少しピンク色に染まっている。
ちらりと表情を覗くと、潤んだ目で惚けているのが見えた。

でもまだ限界では無い。

舌でちろちろと先端を突っつき、乳房を揉み上げる。
ひくひくと体が痙攣しているのが分かる。
翔太は片手を離し、彼女の体に這わせながら下半身に移動させていく。
焦らすように、ゆっくりと。

「ば、ばかぁ…」

せめてもの抗議に、恵が翔太の髪の毛を掴んだ。
003621 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/02(木) 11:32:59.87ID:pbi7GQFB
一旦投稿
少しは見やすくなったか?
003821 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/03(金) 18:28:28.68ID:RWVonbo8
続き投稿
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(6)
掴んだ両手は震えていて、力が入って無い。
何の抗議かは分かる。焦らすな、と。
だが翔太は、敢えて無視する事にした。

エプロンの腰紐を解き、布地を脇に寄せる。
乳房をゆるゆると刺激しながら、解いた手で背中から腰を優しく撫でる。
まるで宥めるように。

「はぁっ…んっ…」

恵からしてみれば、翔太の触れた所全てが火照りを帯びてくる。
前から感じる気配と内側からの熱、それに後ろから感じる壁の冷たさのコントラスト。
それが辛うじて理性を保たせている。

落ち着いた所で、翔太の手がまた下に伸びた。
今度はテンポを変えるように、一気に秘所に潜り込ませる。

ぐじゅっ

「ひんっ!あっ、はっ」

背筋が反り、首も仰け反り、体が大きく跳ねた。
目尻から溜まった涙が零れる。
うっとりとした表情で口を開けてパクパクしている。

最初の1本はすんなり受け入れられた。
逆に言えば、愛撫の必要が無い程に濡れていたという事だ。

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一旦投稿
0039名無しさん@ピンキー2014/01/03(金) 18:47:07.01ID:fIELJkdH
続き投稿
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一旦投稿

これ無くしてくれ
あとガンバレ
004021 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/03(金) 22:20:19.20ID:RWVonbo8
(7)
翔太もそれは分かっていた事だ。最初のディープキスの時点で。
そもそも二人で試行錯誤し、「調律」を重ねてきたのだから。
世間では「調教」とでも言うのだろうか。
知識があまり無かったため、二人の間でそう呼ぶ事にしているだけだが。

「あぅっ、あひっ、はっ、やっ」

翔太の指が内部でしなやかに揺れ、その度に恵の体がビクビクと反応する。
頃合を見計らい、指が増えていく。
2本目も3本目も抵抗無く飲み込み、内壁が蠢動する。

「あっ、ああああっ、はゃぁっ」

リズムがランダムに変調し、彼女の理性を引き剥がしていく。
なけなしの意識がイメージしたのは、オーケストラで使う指揮棒だった。

恵は翔太にしがみつくのが精一杯で、彼が既に胸の愛撫を止めている事に気付いていない。

「恵」

耳元で優しく囁き、指を曲げる。
彼女の体がビクッと震え、子宮と膣が大きくうねった。

「あはぁっ!あっ…はっ…」

小刻みに痙攣し、ぐったりと脱力している。
翔太の首に巻きついた両腕は今にも外れそうである。
支えて貰わなければ立てないようだ。

ちゅっ

「んぅっ…」

唇を合わせ、舌を潜り込ませる。
恵は殆ど本能的に口を開けて、ディープキスを受け入れた。
004221 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/05(日) 18:01:29.46ID:3bSeCXwm
(8)
抱き寄せられ、胸が潰れる。
中に入ったままの指が再び締め付けられるのを翔太は感じた。

「んはっ」

唇を離し、また壁に恵をもたれさせる。
彼女は喪失感を感じて、一瞬寂しそうな表情を浮かべたが、彼がしゃがむのを見て笑みを浮かべた。
本能的な雌の顔――。

「あっはぅっ!…あひっはぁっ…!」

直後に押し寄せてきた刺激が全身を駆け回る。
埋没した指で中を掻き混ぜ、同時に陰核を舌で弄る。
自己主張する豆を突っつく度に、恵の体がビクビクと震えた。
恍惚の表情で全身を仰け反らせ、心許ない力で翔太の髪を握っている。
最後に溢れて来た愛液を、クリトリスと共に吸い上げると――

「ああぃっ、やああぁっ…」

また大きく跳ね、フルフルと痙攣した。
視界が明滅して意識が定まらない。
ただ、狭まった世界の中心に翔太が見える。
彼の顔は段々大きくなってきて、耳元で声が聞こえた。


――そろそろメインテーマだ――


恵の心に、優しく暖かくこだました。
004321 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/07(火) 01:09:09.91ID:kwdnwacG
(9)
下の方でカチャカチャと音がする。
外気に晒されたそれは太く大きく怒張し、恵を魅了していた。
恵は無意識の内に妖艶に笑い、翔太の興奮を増長させる。

「恵…後ろ、向いて」
「…うん…」

言われるがままに壁に手を付き、腰を突き出した。
その腰を翔太のがっしりした手が掴む。
艶やかな期待感が胸に広がる。
それは、体の芯を貫く衝撃で満たされた。

「あぁっ、はぁっ…っ」

一気に子宮の奥まで抉られ、頭がクラクラした。
子宮筋と襞が反応し、翔太の肉棒を扱きに掛かる。

「うっ…」

少し焦ったらしい。
翔太の1か月分の性欲が搾り取られそうだ。
だがまだ果てる段階では無い。
倒れ込むように彼女の背中に覆い被さり、重力で垂れ下がるおっぱいをまた包み込む。

「恵…」
「あっ…しょぅ、たぁ」

耳元の囁きに反応し、内壁がうねる。
彼はそのまま彼女にキスして腰を動かし始めた。
004421 ◆w7T2yFC1l7Bh 2014/01/09(木) 01:04:15.51ID:b/E5gS0m
(10)
肌がぶつかり、エプロンが揺れる。
翔太の荒い息遣いと恵の喘ぐ声がそれに同調する。
醸し出す音色が二人の心に染み込み、或いは二人を包み込む。

翔太は時にリズムを変え、恵の意識を翻弄していく。
彼女の表情からは、既に理性は欠片も見えない。
口を半開きにし、頬を紅潮させ、潤んだ目は焦点が合ってないようだ。
体を穿つテンポに合わせ、ひたすら揺れ続ける。

硬く尖った乳首を摘み上げると、彼女の体がビクッと震えた。
背中が少し仰け反り、内部が蠢く。
翔太をきつく絞り上げ――

「はあぁっ…!」
「うっ…くぅっ…」

翔太は恵の中に子種を流し込み、辛うじて生き残った意識を総動員して、痙攣する彼女を支えた。
繋がったまま後ろから抱きしめる。
今度は自分が壁に寄りかかり、彼女を腰の上に座らせる。
虚ろな目に翔太の顔が映り、恵は呟いた。

「す、き…」

翔太は、彼女の涎を舐め取り、そのままキスをした。
1か月ぶりの夜は、まだ始まったばかりだ――。

〜fin〜
0045名無しさん@ピンキー2014/01/09(木) 01:06:37.56ID:b/E5gS0m
オワタアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
本当はもっと長い予定だったけど多少強引にorz

そいじゃノシ
0047名無しさん@ピンキー2014/01/11(土) 15:15:35.58ID:9pPbAXhT
グッドじゃない・・・
最高(ファンタスティック)!!!
0048名無しさん@ピンキー2014/01/21(火) 03:05:03.31ID:ZL7ao8JC
街中でカスミンと待ち合わせして
出会い頭にスカートを思いっきり捲って反応を楽しみたい

真っ赤になるのも可愛いし普通に怒られるのもいいしスカート捲られても特に反応しない天然ビッチなのも興奮するしドバンされるのもいい
0049名無しさん@ピンキー2014/01/27(月) 23:59:21.42ID:tnB9KFNS
今週と単行本のカスミンの太股が実にけしからんので誰かかけください
0050名無しさん@ピンキー2014/01/28(火) 01:05:29.19ID:ZLxpfny4
絡み少ないが暴君ってカスミン呼びしていたんだよな

ただ好きに演奏していただけなのに周りとうまくいかなくなった2人だから、
セッションするうちに気持ちが通い合って夜のセッションが始まる流れは
強引だろうか
0052名無しさん@ピンキー2014/02/09(日) 23:29:37.74ID:Xz7N0Mrl
当たり前だ
こんなエロいネタここ以外で使えると思うな・・・!ニヤニヤ
0053名無しさん@ピンキー2014/02/21(金) 20:00:05.03ID:dAchWqcI
アダルティに暴君先輩両親の夜も気になったり
ママン美人だし

>>48
今更だが
カスミンが反応する前に突然現れたイモミンに>>48が蹴り飛ばされる
も追加で
0054名無しさん@ピンキー2014/03/10(月) 02:01:32.66ID:bLuuz2Zb
「甲子園1回戦の報告しねェと…」

神峰は音楽準備室の扉に手をかけるが、
そこで室内からの妙な声に気付き、
恐る恐るドアの隙間から中を覗いてみる。

「全く…本当お前はいつもいつも勝手ばかり…
こんなにギラギラして、吸い取ってくださいってオネダリしてるぞ?
ほら、ちょっとコスったぐらいでこんな…」
「漏れ出て…すみません…ちょ…いや…もう…出るから…」
「んー?ダメダメ、今日の罰はかなり重いぞ?
一晩コースだ。親御さんには連絡しといたから心配しなくていいぞ?」

神峰は動揺に震える身体を必死に抑え込みながら、
2人に気付かれぬよう、早々にその場を離れ学校をあとにした。

(あんなグチャグチャに溶けた心見たこと無ェ…
二人ともノリノリ過ぎて…とてもじゃねェが邪魔出来ねェ…!)

無事、難を逃れたかに見えた神峰だったが、しかし翌日。

「か〜み〜ね〜?お前昨日…一回戦の報告しないで帰ったよな?
放課後、音楽準備室な」

逃げた先では同じ試練が待っていた。
0058名無しさん@ピンキー2014/05/06(火) 22:37:32.32ID:qvr3wpkp
仏の部長を誘惑しまくって狼に変貌させる女性陣とかいいな
0059名無しさん@ピンキー2014/05/17(土) 19:07:02.68ID:/tEpQf85
リンデンガーデンで服を渡した際に
服のサイズ位なら服の上から見れば分かると言う暴君
それを聞いて個別に気になる女性のサイズを聞きに行く男性陣
一人聞きに行かないので紳士と尊敬されたキョクリス先輩だが
真相は既に知ってるから聞く必要がないだけだったとさ
0060名無しさん@ピンキー2014/05/26(月) 14:11:55.25ID:/nYLsO0p
星合先輩のむちむちおっぱい揉みしだきたい!(アイアムアドリーマー)
0064序章2014/08/23(土) 22:22:03.61ID:CHeDrY3q
放課後の音楽室。

細く白い指がピアノの鍵盤を叩いている。
その度に心も蕩かすような旋律が溢れ出して、ついつい聞き惚れてしまうほどだ。
演奏に没頭している凛とした邑楽の美しい横顔を眺めながら、その隣で旋律に魂を奪われそうになり
ながらも、神峰は何度か首を傾げた。
邑楽の心の中には瓜二つの少女がいて、その少女の澄んだ瞳はいつも神峰を凝視している。時に
憤り、時に気遣わしげに、またある時には母のような慈愛の眼差しで。

そりゃあまだ経験なんか全然足りない素人同然の身だけど、そんなに頼りなく見えるのかなあ。

そんなことを考えながら混乱をしかける神峰の思いを知ることもなく、演奏は滞りなく終わった。さらりと
頬にかかる一筋の黒髪を払って、邑楽がこちらを向いた。
「…分かった?次は自分で弾いてみて」
「え、ああ…つい見惚れてて…邑楽先輩、メッチャ綺麗だったんで」
そう言った途端、現実の邑楽と心の中の少女が揃って顔を赤くした。何かまずいことを言ったかな、と
内心慌てる神峰をよそに、ますます真っ赤な顔になった邑楽はそっぽを向いてしまった。
「…あんたにはまだまだ教え込まなきゃいけないことが、あるみたいね」
決して神峰の方を見ようともせずに、邑楽はぎこちない早口でそう告げてきた。

ああやっぱりなあ、まだ覚えなきゃいけないことが多過ぎる。

あまりにも前途多難な先行きにがっくりと項垂れる神峰はつい見逃してしまったのだが、その一瞬、
邑楽の心の中にいる少女は人差し指を突き出して、銃でも撃つようなジェスチャーをしていた。




0065名無しさん@ピンキー2014/08/23(土) 23:06:13.03ID:poPs3voR
>>64
おおW邑楽先輩可愛い!神峰がんばれ!
序章ということは続きを期待しても良いという事ッスか?
0066名無しさん@ピンキー2014/08/23(土) 23:56:13.97ID:CHeDrY3q
早速ありがとう
正直、まだどう発展させていいのか分からないけど、スレの為にもなんか書いてみる
邑楽先輩メチャクチャ大好きだ
0069雨が招くもの 1/32014/09/06(土) 05:17:19.02ID:0PN4yzSG
その日は朝から薄曇りのはっきりしない天気だったが、午後になってから次第に雲が厚くなって夕方
近くには雨が降り始めた。
朝方は日も差していたので傘を持っていない生徒も結構いるらしく、それはこの吹奏楽部も同じことで、
家までの帰途をどうしようかという話題がひっきりなしに続いていた。
「恵」
帰り支度を終えて部室を出ようとした邑楽の背後から、御器谷が話しかけてくる。
「何よ」
ああいつもの戯言が始まるかと特に気に留めることもなく振り向きもせずに答えると、御器谷はとんでも
ないことを口にしてきた。
「今日は雨だし神峰君と一緒に帰ってくれないかな」
「はあァ??」
思い掛けない名前を聞いて、ついつい声が甲高く裏返る。しかしそんな邑楽の動揺を気付かぬ振り
でもしているのか、普段は何事においても卑屈な御器谷はまるで用意していたような言葉をすらすらと
並べ始めた。
「だって神峰君、傘持ってないって言うからさ。恵の家は途中にあるんだし丁度いいと思って」
「いやいや無理だって、あたしの傘折り畳みだから。二人じゃ小さいから!そんなに言うなら忍が送って
けばいいじゃない。勝手に決めないでよ!!」
顔を真っ赤にしながらじたばたと必死に拒否する邑楽に、しれっと爆弾を落とす御器谷は何だかとても
楽しそうだ。
「神峰君にはもう言っておいた。雨に濡れなくて済むって喜んでたよ」

ざあざあと耳障りな雨が降り続く。
雨の音が湿っぽい匂いと共に街の喧騒を消していく。
「いやー、今日はほんと助かったッス」
黒い大きな傘の下で、神峰は胸が痛くなるほどの笑顔でしきりと話しかけてきた。けれど邑楽はそれ
どころではない。只でさえ意識してしまって仕方のない相手と相合傘なんて、心臓が今にも破裂して
しまいそうで気もそぞろだ。極力平然と見えるように繕っている仏頂面もそろそろ怪しい。
「そ、そう…運が良かったわね、でも不用心。普段から鞄に傘は入れておくものよ」
「んー、まあそうなんスけど、つい忘れることが多いんで」
こんなに側にいたらどこを見ていいのか分からず、ふと目線を下げると傘の持ち手を握る大きな手が
目に入った。この手で指揮棒を振るって誰にも真似の出来ない指揮をするのだと思うと不思議な気持ち
がした。
0070雨が招くもの 2/32014/09/06(土) 05:18:02.00ID:0PN4yzSG
それにしても。
本当なら、今日は一人で帰る筈だった。なのに何がどうなったのか神峰との帰途に、まだ心がついて
いかない。
邑楽の小さな折り畳み傘は『二人で帰るならこっちの方がいいよね』と、どこからか御器谷が持って
来た大きな傘と替えられた。お陰で二人とも濡れずに済んではいるものの、その分だけ距離がより
近くなるから困る。

一体、何が困るの?

不意に、どこからか紛れもない自分自身の声がしたように思えて、邑楽はふっと顔を上げた。目の
前にはやや不思議そうな顔をしながらも、穏やかに笑っている神峰がいる。何だかもっと見ていたい
ような、この時間が羨望の果てに得られたもののような、そんな奇妙な思いが込み上げてきて足を
止めた。
降りしきる雨の音が、一層強くなる。
「…神峰」
「あ、はい」
一体何を言われるのかと、神峰は急に真顔になった。
「あんたは一体、何者…?」
こんな滅多にない状況だから、何かもっと気の利いたことを言いたかったのに、邑楽の口から出たのは
そんな言葉だった。
「え、な、何スか」
当然のことだが、神峰の顔は鳩が豆鉄砲を食らっている図だ。しかし滑り始めた口は止まらなかった。
「あんたは音楽のことなんて全然知らない、ピアノさえ満足に弾けない素人同然なのに、どうしてあんたがいるとみんな変えられてしまうの?あんたには何が見えてるの?どうしてあたしは」
一気にそこまで言ってしまうと、顔どころか全身がぽうっと熱くなった。そこで口を閉じなければそれこそ
自分でも気付かないことを口走りそうで怖かった。
「邑楽先輩?」
きょとんとしている神峰の目に、自分が映っている。この純粋な後輩が今まで何か少しでも悪いことを
した訳ではない。ひどいことなど決して言いたくないのだ。なのにこうして目の前にいると、どうしても
心が逸って訳の分からないことを口走る。
これは一体、どういう厄介な感情なのだろうか。これまでの自分には一切なかったものだ。
「…ごめん、あんたは全然悪くない」
0071雨が招くもの 3/32014/09/06(土) 05:18:49.36ID:0PN4yzSG
言葉に出来ないものが心の中に黒く渦巻いている。そんな感覚を抱えながら神峰を凝視して傘の柄を
持つ手の上に手を重ねた。
その一瞬、にわかに激しい雨が地面を叩き、傘の外が白くなる。
「悪いのは、みんなあたし」
今だけは完全に外界から遮断されていることを知って、邑楽はするりと神峰に身を添わせ、半開きの
唇に触れるだけのキスをした。
「え…?」
やはり何が起こったか分かっていない神峰は、何か言おうとしたのかぱくぱくと口を動かしていた。
「だから、何も分からなくてもあたしが悪いことにしておいて。いいわね神峰」
「あ、えーと…そう、なんスか」
本当に訳が分かっていない様子の神峰は、目を丸くしたまま考え込むように首を傾げた。
傘を持つ手は少し骨ばっていたが、この後輩の人格を表すように温かい。今後接していくうちにきっと
自分は更に変えられていくのだろうと思いながらも、その変化の果てにある未来がもう少しも怖くなく
なっていることに邑楽はようやく気付いた。

あたしが神峰に変えられるのなら、神峰を変えるのはあたしになればいい。
それだけのこと。

先程よりは弱まった雨の下、邑楽はやっと少しだけ余裕を取り戻した。こうして腹が決まったからには
もう迷う余地などどこにもない。
感情が、動き出す。




0072名無しさん@ピンキー2014/09/06(土) 05:26:35.37ID:0PN4yzSG
投下して気付いた
ホントに一気に喋らせてごめん、邑楽先輩
0074名無しさん@ピンキー2014/09/07(日) 01:47:10.12ID:V2E8qyZL
乙です!
(つまり二人の関係のターニングポイントとなる物語としてとても萌えました
二人の未来が大変気になります
という事だな!)コクッ
0076汝がこゑ 1/62014/09/14(日) 15:41:29.43ID:hF3SQDB8
汝がこゑの したたる露
汝がこゑの ただよふ香
汝がこゑの ゆらめくひかり
汝がこゑの ひらく花びら
汝がこゑの ちらばふ星
汝がこゑの こぼるる蜜
汝がこゑの くれなゐのつぼみの瓊
汝がこゑの みどりの風
……

刻坂家のリビングでは、刻坂がモコと呼んでいる幼馴染の滝沢桃子が澄んだ瑞々しい声で一つの詩を
朗読していた。甘く優しい抑揚が美しい詩を鮮やかに彩っていく。
招かれてその日刻坂家を訪れていた神峰は、出されたお茶を飲むことすらすっかり忘れてその美しい
声に聞き惚れていた。出会った頃は声すら出なかったモコの喉はリハビリの甲斐もあり、前年のロック
フェスでボーカルとして復帰して以後はめきめきと良くなっているようで、それは本当に奇跡のようだと
思った。
そういえば、最初に刻坂と親しくなるきっかけになったのはこのあどけない少女だったことも、今となっては
感慨深いものがある。
「ね、神峰さん、どうだった?」
最後まで朗読し終えたモコは、人懐こくソファーに座る神峰の隣に腰掛けた。そしてちゃっかりと腕を
回してくる。
「え」
「えへへー」
突然のことで動揺する神峰の様子が面白いのか、モコはあくまでも無邪気に擦り寄る。
「ちょ、モコ…何やっ」
向かい合って座っている刻坂の心に、例の頑固親父が出現した。モコを妹のように溺愛しているから
こそのことだとは思うが、こいつも色々面倒臭いな、と思いながらもにこにこしている少女への敬意として
ドキマギしつつ率直な感想を言う。
「うん、すっげー良かった。モコちゃん歌もだけど朗読もうめーよな」
「嬉しいー。これ、昔からすっごく大好きな詩なの。あたしもいつかこんな恋したいなーって思う」
喜色満面で腕にしがみついているモコに、刻坂は無表情ではあるのだが心の中の頑固親父が卓袱台を
ひっくり返して暴れていた。これはそろそろ何とかしないと、と焦る神峰に、何も知らないモコはにっこりと
笑いかけた。
0077汝がこゑ 2/62014/09/14(日) 15:42:40.38ID:hF3SQDB8
「神峰さん、これほどまでにたくさんの綺麗な言葉で例えられ、飾られている『汝がこゑ』って、一体どんな
素晴らしい声だと思う?」
おどけたような声はまるでクイズでも出題するような調子だ。
「え、さ、さあ…なんか声優みたいな声、とか…?」
全然分からないので適当に答える神峰に、モコは吹き出した。無邪気な表情が瞬間ごとにコロコロと
変わってとても愛らしい。ああ、そりゃあ刻坂もついつい頑固親父になるわ、とある意味不思議な共感を
覚えた。
モコは人差し指を突き出して可愛らしく微笑む。
「ブー!!!正解はね、好きな人の声なら、例えどんな声だって『汝がこゑ』になるの。恋する心をもって
純粋に耳を傾けるのならね。恋ってそれほど素敵なものなの」
まだ恋も知らない少女が恋に憧れて話す言葉は、何だかキラキラして眩しい。それだけ恋というものは
素晴らしく晴れがましいものなのだろう。
「ねえ神峰さんは、恋をしてるの?」
キラキラした瞳で唐突なことを聞いてくるモコの様子には、純粋な興味だけがさざめいている。学校での
友人同士の気軽な恋バナ的なものと同じ感覚なんだろう。
そんな人はまだいないよ、と答えかけて、不意にある一人の姿が脳裏をよぎった。
「誰が好きなの?」
モコの追及はストレートだ。どんな人が好き?ではないところが、神峰を妙に動揺させる。だから今の
気持ちがそのまま口に出てしまった。
「んーと…恋なのかどうか分かんないけど、なんか気になってる人はいる」
「えー、誰誰?神峰さんにそんな人がいるなんて知らなかったー!」
すごい秘密を知ってしまったように、モコは口に両手を当てて興奮していた。更にそれが誰なのかを
聞き出そうとしたのだが、止めたのは刻坂だった。
「モコ、誰だってあえて明かす必要のないことを詮索されるのは嫌なものだ。だろ?」
優しい兄のような刻坂に静かに諭されて、ようやくモコの興奮は収まった。
「…うん、そっか…だよね。ごめんね神峰さん、なんか不躾なこと聞いちゃって。興奮したらなんか喉が
乾いちゃった」
ぺこんと頭を下げ、空になったカップを持ってキッチンへと走り去るモコの後姿を見届けてから、刻坂は
隣に腰を下ろすと含みの有りげな妙な笑顔で尋ねてきた。
「あれから、まだ何も進展してなかったのか」
「何がだよ」
「さあ、何だろうな♪」
刻坂もやはりそれなりには下衆かった。
0078汝がこゑ 3/62014/09/14(日) 15:43:49.86ID:hF3SQDB8
「ちぇっ…」
やや不愉快な気分になりながらもカップに残ったお茶を飲み干そうとした神峰は、急にあの雨の日の
出来事を思い出した。同時にさらりと触れるだけだった唇の感触も。
そういえばあの時、邑楽はどうしてあんなことをしたのだろう。
彼女の性格上軽い気持ちでふざけてやったとはとても思えないのだが、だとしても真意そのものが
本当に分からずにいる。
あれが現実にあったことだったのかさえ分からなくなっていた。
さすがに真正面から聞く訳にもいかず、あれから数日、話のいい切り出し方が分からないこともあり、
まともに顔も合わせられないままでいる。
邑楽も同様なのだろう。心の中にいる少女も神峰を一切見ずにそっぽを向いているが、やはり何かが
引っ掛かっているのか、時折頬を染めてちらちらとこちらを伺っているような表情をしている。
心が見えても、見えるだけじゃ意味がない。まだ上手く読み解けないでいる神峰はこういう時に本当に
窮することになるから、自分のこの能力が嫌いなのだ。
「参ったなあ…」
こんな時は考えが纏まる筈もない。分かってはいるが自ら混乱に巻き込まれるのも嫌なので必死に
何かいい答えはないかと足掻き続けるばかりだ。
そんな神峰を眺めて何を思うのか、刻坂は相変わらず下衆いニヤニヤ笑いを続けている。

次の日の放課後、神峰は音楽室で一人ピアノの練習を続けていた。まだまだ簡単な曲すら手こずって
いるのだが、落ち着いてさえいれば何とか最後まで弾けるようにはなっている。
気が付けば、日が落ちかけているのか室内は少し暗くなっていた。
「神峰、いるの?」
少し休もうと立ち上がりかけた時、足音と共に背後から邑楽の声がした。
「あ、ハイ。邑楽先輩が作ってくれたプログラムやってたんスけど、やっぱムズイッスね」
邑楽はさらりと肩にかかった髪を払って、いつものように隣に座った。
最初から何事もなかったような顔をして。
「そう、感心なことね。こっちのパート練習はもう終わったんで、あんたの進捗状況を見てあげるつもり
だったけど、まだそこまでは至ってない感じかな。もうちょっと練習を重ねないとね」
まだ拙い神峰の弾き方がもどかしく感じるのだろう、白い指がうずうずしているのが分かった。
「楽器は何でもそうだけど、練習を重ねて身体で覚え込まないと上達しないものよ。じゃあ、参考の為に
比較的スローテンポな曲を弾くから、まずは指の動きをよく見ておいて」
手早く前に置かれた楽譜の曲名には見覚えがあった。
「あ、ドビュッシーの夢想ッスね。前にCMで聴いたことあるス」
「そう、この曲はスローだけど運指は比較的難しいからあんたはもう少し先ね」
0079汝がこゑ 4/62014/09/14(日) 15:45:04.15ID:hF3SQDB8
呼吸を整えると、邑楽の表情が演奏者のものに変わる。
しなやかな指が鍵盤の上で踊り、快い分散和音を奏で始めた。
指先に目が釘付けになりながらも、神峰は何故だか昨日モコが美しい声で朗読していた詩の一遍を
思い出していた。

汝がこゑの したたる露
汝がこゑの ただよふ香

静やかな表情でピアノを弾く邑楽の横顔には音楽と共にあることの喜びが溢れている。同時にこんな
時だから見える素の感情が垣間見えていた。それが奏でる曲に溶け込んで得も言われぬ音色を生み
出している。
モコがあの美しい声で恋を諳んじるように、邑楽は指先で音色で心の内を曝け出す。今、ピアノが奏でて
いる音はそっくりそのまましたたる露、ただよふ香となっていた。

ああ、そうか。

その時、神峰の中で何もかもがパズルのように合致する。
経験のないことだったとはいえ、初めから迷ったり、悩む必要のないことだったのだ。
「あの。すんません、邑楽先輩」
意を決して、神峰は演奏中の邑楽に話し掛けた。こんな風に心を乱す行為は奏者にとってタブー中の
タブーなのは分かっていたが止まらなかった。額に滲んだ汗が頬を伝い落ちる。
「なに」
何事もないように、邑楽は短く言葉を返す。
「あの、邑楽先輩。この前の雨の日のことッスけど」
瞬間、完璧に奏でられていた旋律がやや乱れた。
「…あれって、そういうことだったんスよね」
気を取り直したのか、何とか演奏を続ける邑楽の横顔はわずかに震えていた。そして曲が終わって
からようやく言葉を返してくる。
「……うん…」
鍵盤の上に置かれた指が、何故か痛々しく見えた。
「率直に言うんなら、嬉しかったス。だけどどうしてオレだったんスか」
「…それがあたしなのは、嫌?」
縋るような眼差しを向けて来る様子はひどく儚くて、答えひとつで脆く崩れてしまいそうだった。それが
分かるからこそ何とか上手い言葉を選びつつも、つかえながら懸命に話す。
「…いや、そうじゃなくて…邑楽先輩がどうとかじゃなくて…オレなんかにそういう気持ちを持ってくれて
いるのはすっげー有難いんスけど、元々あんまり人とコミュニケーションを取るのが上手くないせいで、
人に対して猜疑心が強くなっている面倒な奴なんス、オレ」
0080汝がこゑ 5/62014/09/14(日) 15:47:10.52ID:hF3SQDB8
邑楽の心の中の少女が涙を溜めながらも、真剣に神峰を見ていた。これまでになかったことの連続で
テンパりかけていた神峰はそれでやや平静を取り戻す。
そうだ、この人に関しては少女の様子を見ていれば間違いがなかった。余計なことを色々と考えていた
せいで分からなくなっていたのだが、知るべきことはたった一つだったのだ。
邑楽は首を傾げながら答える。
「その猜疑心の強いあんたの前に現れたのが、あの馬鹿正直な刻坂だった訳よね。それってすごい
奇跡だったと思う、お互いにね。刻坂のことだから一度心を許したあんたのことを全面的に信じてきた
でしょ。あいつのことなら、あんたも信じていけるって思っている筈だしね」
黒く澄んだ瞳をもう逸らすことなく、邑楽は言葉を続けた。その口調に一切の迷いもない。
「それと同じように、あたしもあんたを信じて、先行きを見守っていきたいの。そして信じて欲しい。望んで
いるのはただそれだけよ。それは嫌?」
その時、本当にこの人は綺麗な心を持っていると思った。なので余計に答えを慎重に選びながら神峰は
更にどもりそうになる。
「嫌、じゃなくて畏れ多いっつーか、光栄っつーか…ひたすらメッチャ嬉しいッス」
人の心が見えるせいで猜疑心が強い分、嘘偽りのない心をまっすぐに向けてくれる人は子供の頃から
誰よりも大事にすることに決めていた。
人生の糧になる友人や生涯を共にする女性なら尚のこと。
刻坂が真っ先に腹心の友人になってくれたように、邑楽もまた紆余曲折後に信頼を勝ち得た後は驚く
ほど真摯な感情と剥き出しの好意を向けてきた。それもまた奇跡の一つなのだろう。
とん、とんと鍵盤を叩くように邑楽の指が神峰の手の甲の上で翻る。再びどもりがちになりながらも、
ようやく間近で見つめてくる邑楽の顔をまともに見ることが出来た。意志の強そうな黒い瞳とウェーブの
かかった髪が改めて綺麗だと思った。
「音楽に関しちゃまだド素人も同然なオレからすれば、邑楽先輩は雲の上の存在なんス。綺麗だし、
ピアノもクラリネットもメチャ上手だし。だからそんな人が何でオレになんかって、ホント分かんなくて」
「……理屈、じゃないの。あたしは、不器用でも必死で頑張ってみんなの為にいつも奔走している今の
あんたがいい。それだけなの」
「そう、ッスか」
「うん」
鍵盤を叩くように動いていた白い指が、くるりと神峰の指に絡んできた。そのまま力を込めてくるのが
いじらしく思える。心に留めたのが、この人で良かったと温かい思いが胸に満ちていく。
「あたしはあんたがいればいい」
「オレなんかで良ければ、喜んで」
0081汝がこゑ 6/62014/09/14(日) 15:48:00.17ID:hF3SQDB8
絡められた指に神峰から力を込めると、邑楽は少し驚いたような顔をしたがすぐに心の中の少女と
全く同じに頬を染めて顔を伏せた。
「……うん」
絡め合っている指先までが妙に熱く感じ、急に気恥ずかしい気持ちになってしまった。そのま二人とも
しばらくの間、何も言えないまま時だけがゆっくりと過ぎていく。

「あ、あの…あのね」
すっかり暗くなった音楽室には緩やかな沈黙だけが続いていたのだが、先に口火を切ったのは邑楽
だった。どんな顔をすればいいのか分からない分、この慈愛のような暗がりは有難い。
「え?」
「時々、で良ければお弁当作っても…いいかな?」
照れ隠しなのか、ぼそぼそとした声が妙に可愛らしい。
「え、あ、ああ…そりゃもう大歓迎ッス。邑楽先輩の作ったモンは何でもすっげー美味いんで」
「良かった…じゃ、いつでもいいから好きなものとか、嫌いなもの教えてね」
「んー、タ」
タコさんウィンナー、と言いかけた神峰の言葉はもう続かなかった。周囲も見えないほどの暗がりが
邑楽の気持ちを大胆にしたのか、唇を塞がれたからだ。
身じろぎする度に細い髪が頬に乱れかかってくるのを感じながらも、この甘やかな時間に身を置く
心地良さに次第に酔い始めていた。確かめるように唇を噛み合わせながらもおずおずと腕を回して
くる邑楽の感情が痛いほど伝わってくる。
心のリミッターの外れた今は、声なき声が絶え間なく熱く狂おしい思いを訴え続けていた。
この人が零すこゑは、この世のどんな美辞麗句もとても追い付かない。

その後、神峰の弁当の毎回のクオリティーの高さに、吹奏楽部の面々が一同に下衆いニヤニヤ
笑いを浮かべて、これはもう愛妻弁当だとしきりに噂したことは言うまでもない。




0086その手は離さない 1/42014/09/28(日) 00:29:47.44ID:4Kb/DlBo
その日、クラリネットのパート練習を終えた頃のこと。
後片付けをしていた邑楽に数人の女子が何やらもじもじとした様子で話しかけてきた。とはいえ互いに
どう切り出せばいいかと困っているようで、肘でつつきあっている。
「…メグ先輩」
「んー、何?」
振り返りもせずに言葉を返しててきぱきと作業をひなしていた邑楽だったが、女子たちは口籠りながらも
無邪気に尋ねてきた。
「今日も音楽室に行くんですか?」
「え…?」
内心音楽室でのことが色々とばれているのかと焦ったのだが、女子たちの口は止まらなかった。
「神峰、結構真面目に毎日ピアノ練習してるんで、やっぱ気になるのかなーって」
「え、あたしもう付き合ってるのかと思ってた」
「あたしも」
「お弁当も作ってやってるみたいだしね」
「…ちょっと!」
放っておいたらいつまでも喋っていそうな彼女たちに呆れながら、邑楽は溜息をついて腕を組んだ。
「それの何が悪いの?」
その言葉に、彼女たちはたじろいだ。
「あたしはクラリネットパートを一番に考えてる。何をするにもパートのあんたたちのことはないがしろに
しているつもりはないわ。だけど時間に余裕があったら、それはあたしの自由にさせて欲しいの。神峰は
まだあたしの助力が必要なんだし」
一週間ほど前から付き合いの始まった神峰とのことは、別に特別隠しだてすることでもない。元々交際
禁止を謳う部ではないのだから堂々としていればいい。ただ、まだ神峰の立場も部内では不安定なの
だし、こんなことで不要な雑音が出ないとも限らない。今は非常にデリケートな時期なのだから浮かれて
いられないのだ。
「分かったかなあ」
「…はい」
先程まで雀が群れるようにかしましかった女子たちは、あくまでも毅然としている邑楽に威力をそがれた
のか、急に大人しくなった。
「…ごめんなさい。あたしたち、ずっとメグ先輩と頑張ってきたのに、なんかマンツーマンで指導されてる
神峰が羨ましくて」
「分かればいいの、じゃ、あたしもう行くね」
0087その手は離さない 2/42014/09/28(日) 00:30:37.59ID:4Kb/DlBo
何かと噂にしたがるのが女の子というものだけど、ここは堂々としていればいいんだと心に決めて邑楽は
スカートを翻した。元々それなりに覚悟があったからこそ、この恋は始まったのだから、何も気にする
ことはない。
肩に零れる髪を払い、きっと前を向いてドアへとまっすぐに歩いていく邑楽を見送りながら、女子たちは
放心したようになっていた。
「やっぱメグ先輩かっこいいなあ…」
「神峰、いいなあ」
年齢的にも恋に恋をし恋に憧れる時期なのか、女子たちの口からは再び止まらぬ憧憬と羨望が溢れ
出した。

「あ、来た」
音楽室のドアを開けると、時折一緒に神峰に指導している御器谷が顔を向けて笑った。肝心の神峰は
というと神妙な面持ちで鍵盤を叩いている。まだわずかの心の余裕も持てないようなのが微笑ましくて
つい目元が緩む。
しかしのんびりとした御器谷の声が現実に引き戻した。
「遅かったね、恵」
「あたしだって忙しいの、忍、あんたと違ってね」
「うん、そうかなあ…」
噛み合っているのかどうか分からない、いつもの会話をして普段の定位置に座ると、ようやく邑楽の
存在に気付いた神峰が顔を上げて笑った。
「…邑楽先輩、今日はどうッスか」
「まだまだだけど、精進はしているみたいね。少し休みなさい」
「はい!」
大分手が痛そうなのは。すぐに見て取れた。一人でいる時も神峰はここでずっと可能な限り練習を
続けているのだろう。運指はまだぎこちないものの、音そのものは大分滑らかに出るようになってきて
いる。
「神峰君は熱心だよ、恵に言われた通りにきっちりこなしている」
まるで自分のことのように、御器谷は嬉しそうだ。
「当たり前じゃない。あたしは自分の経験から初心者でも出来る適正な練習を課しているの。これで
上手くならなきゃおかしいでしょ、ねえ神峰」
「そうッスよ、最近我ながら結構いい調子で進んでると思うんで」
神峰も御器谷につられるように笑顔を見せたが、やはり手は痛いのだろう。何となく不愉快な気分に
なって、やや強い語調になってしまう。
0088その手は離さない 3/42014/09/28(日) 00:31:32.69ID:4Kb/DlBo
「調子に乗らないの。あんたみたいな初心者が同じ動きを反復していたら、腱鞘炎を起こすんだから。
大体、休憩もろくに取ってないでしょ」
「あ、はあ…」
そこで、思い出したようにぱん、と御器谷が大きく手を叩いた。
「じゃあ、神峰君。何か飲み物買って来るから少し休もうか。何がいい?」
「あ、じゃあカフェオレを…」
「恵も一緒でいいよね、ちょっと待ってて」
「あ、ちょっと」
二人に気を利かせたつもりなのか普段の卑屈さはどこへやら、御器谷は颯爽と音楽室を立ち去って
しまった。これは当分戻って来ないつもりだと悟る。
「…んもう…」
二人きりにされたことで何となく気まずい気分になっていたのだが、神峰の方はまだ呑気に鍵盤の
上で指を動かしている。
「神峰、手」
ぶっきらぼうに顔を向けると、びっくりしたような表情が飛び込んできた。
「はい?」
「痛いんでしょ。ちょっと見せてみなさい」
「あ、でも」
「指揮者がこんなことで手を痛めて指揮棒を振れないなんて事態、有り得ないでしょ。あんたはもっと
自分の価値を知りなさい。自分にどれだけの期待がかかっているか分かんないの?」
そう言ってもまだ反応は鈍かったが、気にせず無理矢理に手を取ると、見慣れた神峰の手はやはり
熱を帯びて少し腫れを持っていた。ピアノを長く続けている邑楽だからこそすぐに判断を下す。
「やっぱりね。神峰、あんたは今後三日ほどピアノ禁止よ」
「んー…そうッスね。残念だけど」
真剣に心配している邑楽に比べて、神峰の方はといえば顔を赤くして目も合わせない。下を向いて
何か言いたげにしているのだが、苛立っているせいかそれすらも腹立たしく思える。
「もう、神峰!」
「あの…」
視線を逸らしてしばらくもごもごと続きを言い淀んでいた神峰の口が、やがてゆっくりと動き出した。
「オレ…前より邑楽先輩のこと、すっげー好きになった」
「え?」
0089その手は離さない 4/42014/09/28(日) 00:32:35.53ID:4Kb/DlBo
「こんなことがなかったらずっと勝手に憧れてただけだったかも知れないんで、なんか夢みたいで…
で、思ってた以上に邑楽先輩がオレのことを考えてくれてるからもうそれだけで一杯一杯なんス」
「神峰…?」
下手をすればお節介と思われかねないほど、邑楽は常に人を気遣い行動する。もしやつい過ぎたことを
したのではと危惧したのだが、別に神峰は嫌がってもいないようだ。
だが、一体何を言いたいのかさっぱり分からない。
首を傾げて様子を伺う邑楽にまだ視線を合わせようとしない神峰は、更に重くなっている口をやっとと
いう感じで開く。
「なんで…手、離して貰えないッスか」
熱を持っている手が、するりと離された。
「あたし、迷惑だった?」
「……じゃなくて」
元々それほど口の上手くない神峰のことだ、どういえば一番なのかしばらく考えあぐねているように俯き、
脂汗を流している。これから一体何を言い出すのかと気を揉みながらも、邑楽はただ黙って見守るばかり
だった。
そうして互いに無言のまま五分ほど経った後、遂に神峰が心に溜まっていたことを吐き出した。
「オレだって一応健全な男子なんで、こんな感じで好きな人と二人っきりでいたらヤバい気分になる…
ってことッス」
それまで伏せていた顔を上げて、縋るような真剣な目をして見つめてきた表情に、邑楽はそれこそ魂を
掴まれたような気がして尚更何も言えなくなった。
一応付き合っている間柄で、キスも何度かしたことがある。けれどそれ以上のことはまだ何も考えられ
なかった。神峰自身の生真面目な性格や、まだ予断を許さない吹奏楽部内での立場もあって欲求にも
ブレーキをかけがちになっていたのだろう。
しかし、神峰がその性格ゆえに劣情が湧き上がるのを許せずに余計に悩む羽目になってしまったのなら、
やはり責任は自分にある。
いや、そんなことは全て只の綺麗事だ。この年下の男の一挙手一投足が気になり始めてから、傘の下で
キスをしたのがきっかけで付き合い出した時からもう分かっていたこと。これから訪れる筈の出来事の
何もかもひっくるめて、他の誰でもない、神峰と経験するのでなければ絶対に嫌なのだ。
「神峰」
別にこれから仲を深めていくのは不自然なことじゃない。互いに何も知らない分、道のりは遠いだろうが
得るものは大きい筈だ。この男とならば。
その為にも、二度とその手は離したくなかった。
だから次の一歩を踏み出す為に、言葉で背中を押してみる。互いに好意を抱いているのだから、もう
ここから引き返す必要もない。
「あたしもそういう気分」
愛しい、可愛い、全ての思いを込めてもう一度神峰の手を取ると、頬に押し当てた。何故だか感極まって
しまって、流れ落ちてくる涙が熱い。
再び、日の暮れかかる音楽室には長い沈黙が訪れた。




0090名無しさん@ピンキー2014/09/28(日) 00:34:10.04ID:4Kb/DlBo
ジャンプ系でずっとエロ書いてきたけど、この二人はなんか色々と時間かかるわー
0091名無しさん@ピンキー2014/09/28(日) 21:14:27.93ID:VWbmYsbc
>>90
いつも萌えをありがとうございます
ゆっくりな所がこの二人にふさわしく思います
0093crescendo(クレシェンド) 1/22014/09/29(月) 00:42:04.41ID:W2wE6oDG
「えーと…」
「ストップ。神峰君、今はドレミはひとまず忘れようね。どうしても出て来るかも知れないけど、それは
階名だから」
色々なものがまだ覚えきれていず頭を抱えている神峰の隣で、御器谷は冷静に言い放った。
まず当面の君に必要なものはこれだけあるよ、と机上に広げた御器谷自作のテキストはかなりの量に
上った。普通なら纏めて一抱えすれば重くてよろめいてしまう程に。
ようやく譜面が読めるようになった程度で技術だけでなく知識も初心者な神峰にとっては、それは見た
だけで圧倒されてしまうものだろう。
子供の頃から音楽教育を受けている訳ではないから大変だとは思う。それでも神峰なら石に齧りついて
でも、この自己流の勉強について来てくれると確信していた。

神峰が腱鞘炎を起こしかけている、と邑楽から聞いた。
幸いにも今日は割と神峰の為に割ける時間があるので、理科室の使用許可を貰っての勉強再開で
ある。テキストの中から幹音名とシャープ・フラット別の派生音名一覧表を抜き出し、指で示しながら
説明を続ける。
「まず肝心なのは英米式なんで、これはしっかり覚えよう。コードネームには必要なものだから」
「んー…なんか激ムズッすね」
「うん、でも慣れれば簡単だし」
「えーと…変ハがC♭で…」
ぶつぶつと口の中で音読するように呟きながら、一覧表に赤ペンで覚えやすいように書き込みを入れて
いる神峰の横顔は真剣そのものだ。
刻阪はこの目の前にいる少年が世界的指揮者となった未来が見えると言う。邑楽にも見えてきた
らしい。自分にはまだ良く分からないが、それでも子供の頃から大事に思っていたそを託したことで
以前にも増して自分の持てるもの全てを教えたいと思った。それが神峰の飛躍の一助力になれるなら
本望だと。
御器谷は考える。
音楽知識だけなら何とかそれなりに備えてはいるが、自分にはそれだけだ。今後厳しい音楽の世界で
生きていくことはきっと難しい。それなら可能性のある者に賭けてみるのは逃げではないだろうと。
それに、邑楽の存在もある。

「ねえ神峰君」
髪を掻きむしりながら必死で覚えようとしている神峰に、御器谷は唐突に話し掛けた。
「何スか?」
「恵の話を、してもいいかな」
0094crescendo(クレシェンド) 2/22014/09/29(月) 00:42:34.38ID:W2wE6oDG
その瞬間、眉間に皺を寄せていた神峰の表情がぱっと変わってわずかに頬が染まる。その顔を見ると、
あ、二人とも幸せでいる。関係は順調に進んでいる。良かったと不思議な安堵が胸に広がって温かい
気持ちになった。
「恵はね、昔から本当に可愛くて利発な子だったよ。だから出来ないことなんて一つもなかった。勉強も
良く出来たし運動神経も良かった。当然恵のことが嫌いな子なんていなくて、それがボクの密かな自慢
だった。ボクのイトコはこんなにすごいんだぞって、誇らしかった」
「へえ、じゃああんな感じでずっと変わらずに大きくなったんスね」
昔話に興味を持ったのか、神峰の目が輝いた。
「そうだよ。だけど、そんな恵でも無理なことがあった。以前君にも言った5年連続ダメ金のことだ。その
責任はボクにあるとはいえ、向上心をなくした恵を見ているのは辛かったよ。だから君にはとても感謝
している。君じゃなかったら…恵も、ボクも、ずっと救われなかった」
「ちょちょっと、そんな…」
急な話の流れに、神峰はついて行けないのか混乱しているようだ。あたふたしながら言葉を選んで
いるのが微笑ましい。
「そんなの、邑楽先輩や御器谷先輩に…えーと、元々の自力があったからッスよ。だからオレみたいに
無茶な指揮をしても対応出来るし、自分で解決策を見つけられたんじゃないッスか」

違う。

この一直線で素直な、嘘もつけない後輩のただ一つの嘘が何故だか見抜けた。
神峰は確実に指揮をしている最中だけでなく、普段から見えざる何かが見えている。だから的確に
各人のコンプレックスや欠けているものを見出し、それを指揮に乗せて巧みに指摘しながら引き上げて
いく。あたかも浄化するように。
何者にも勝る自力があってもどうにも出来なかったのは、音羽や奏馬を見ても明らかではないか。
しかし、それを口にしたところで神峰にとっては単なる結果論だし、堂々巡りになるだけだ。
「…そうかも知れない、けどね」
御器谷は頭の中を巡っていた思いにその一言で蓋をした。やはり子供の頃から誰よりも大切で、一番に
守りたいと思っていたイトコをこの頼もしく誠実な後輩に託して間違いはなかったと思えた。これから
先は恐らく広い世界へ羽ばたく二人の後姿を見送るだけになるだろうが、それもまた誇らしい。
「神峰君」
丸椅子を引いて座り直すと、ぐっと間近で顔を覗き込んだ。
「え、は、はい」
「恵はね、君のことがとても好きだよ。だから頼むね」
その時、神峰の目には今ここにいない邑楽の姿が傍らに見えていたのかも知れない。その姿は誰も
見たことがないほど美しいものに違いなかった。
その証拠に、はにかみながら返事をする神峰の眼差しは妖しく揺れている。
「それは、俺も…」




0095crescendo(クレシェンド) 2/22014/09/29(月) 00:44:10.29ID:W2wE6oDG
>>91
あざす
ホントにすぐエロいことにはなりそうもないんで、気が済むまで書きたいように書くよ
0096名無しさん@ピンキー2014/09/29(月) 01:41:50.36ID:W2wE6oDG
間違い間違い

× 子供の頃から大事に思っていたそを
○ 子供の頃から大事に思っていた彼女を
0098誰でもない時間 1/32014/10/20(月) 01:13:09.43ID:on9ZOVCM
吹奏楽部に入部した新入生たちが落ち着いてきた頃のこと。
その日は初夏と勘違いしかねない暑さで、夕方になっても気温が下がらなかった。

放課後、神峰は刻阪に連れられて馴染みだという楽器店に立ち寄っていて、スワブやクロス等の
手入れ道具を選ぶのを漠然と眺めていた。
そして時々周囲をぐるりと見回す。
楽器店は何だか不思議で異世界にいる感覚に陥る。
様々な楽器がずらりと並んでいるのは壮観で、高額な商品も珍しくないだけにどことなく威圧感が
ある。そんな感覚のせいかこの空間は妙にひやりと冷たく感じた。以前なら特に用事もなかったので
立ち入らなかった場所だ。
「神峰?」
ようやく普段使いしているクロスと新商品のポリシングガーゼを購入した刻阪は、神峰の様子に首を
傾げた。
「え?ああ…なんかまだこういうとこ、慣れなくてさ」
「それはあんまり気にしなくていい」
楽器は取って食いやしない、と刻阪はからりと笑う。
そんなものなのかな。
楽器には何か宿っていそうな気がするのは、決して間違ってはいないのだろう。怖いと感じるのは
また別の問題として。
だから知らず知らずにみんな真摯に楽器と向き合い、自分なりの音を導き出すのだ。

「さ、出ようか」
「そうだな」
促されて店を出ようとした時、入り口のドアが開いて別の客が入って来た。
「あっ」
聞き慣れた声がした。
無意識に顔を向けると、そこには驚いた顔で邑楽が立ち尽くしている。急に顔を見たせいで何を言えば
いいのか分からずにいるうちに、空気を読んだのか刻阪がさりげなく声を掛ける。
「偶然ですね、邑楽先輩」
「……あんたたちも買い物?」
「はい。でももう終わりましたので、帰ろうかと」
「そ、う…」
何か言いたげに視線を彷徨わせていた邑楽は、それでも当初の目的を忘れることもなく足早に店の
奥へ消える。背中でリズムを取るように波打つ豊かな髪が綺麗だった。
0099誰でもない時間 2/32014/10/20(月) 01:14:15.69ID:on9ZOVCM
目で追っていた神峰の肩を、とん、と合図のように二・三度刻阪の指が叩いた。
「チャンスじゃないか、お前は邑楽先輩と帰るんだな」
「え?」
刻阪はやや悪戯っぽい声で告げてから、じゃあまた明日な、と入り口に向かいながらひらりと手を
振った。
かなわないなあ、と溜息をつく。ある程度面白がられている面はあるが、応援してくれているのは
やはり有難い。
恋の一つすらこれまで経験がなかったこともあり、こういう後押しがあると行動に移しやすいのは確か
だったのだ。
「ありがとな、刻阪」
もう姿が見えなくなった友人に、改めて感謝の言葉を呟く。

「邑楽先輩」
楽譜の収められている棚の前にいる邑楽に声をかけると、何冊か手に取っている途中だった彼女は
心底驚いたように振り向いて目を見開く。
「え…なんで」
「なんでって」
「あんた、もう帰ったんじゃなかったの?」
真っ赤な顔をして、それでも毅然と言い放った邑楽は何だかとても幼く見えた。瓜二つの心の少女も
全く同じように拗ねた顔で、それでもじっとこちらを見つめている。
「なんか、刻阪に置いてかれたんで」
「…ふーん、仕方がないわね」
そんな短い遣り取りはあったが、後は何となく余計な言葉などかけるのは憚られる気がして、ただ
側でどんなものを選ぶのか眺めているだけになった。普段こういった姿をあまり見ないだけに新鮮で、
颯爽とした身のこなしやツバメの羽のように軽い腕の動き、端麗な横顔から醸される表情の変化を
余すことなく眺めているだけで幸せな気持ちになる。
「……あんたって、変な奴…」
見られることは慣れていないのか、居心地悪そうにそう吐き捨てながらも、邑楽もまた満更でもない
気分なのは少女の様子を見ていれば分かった。
心の中の少女は、ややはにかんだようにもじもじしながらも神峰に笑いかけている。
夕刻の店内には他に客もなく、佇む二人の様子は特別不審がられることもなかった。

程なくして邑楽は一冊の楽譜を選んだようで、レジに向かいがてら素っ気なく言葉を掛けた。
「偶然会ったんだし、仕方ないから一緒に帰る?」
徹底してどこか気まずそうな表情は、単に繕っているだけ。
それが今は分かるから、基本的に過剰に猜疑心の強い性質の神峰も彼女に対しては自信を持って
答えられた。
「はいッス」
0100誰でもない時間 3/32014/10/20(月) 01:15:01.33ID:on9ZOVCM
店を出ると空は既に夕暮れの色をしていた。
そろそろ街も帰途を急ぐ人で賑わうのだろう。そんなことを思いながら、足早に歩く邑楽の後をついて
行く。
忙しなく歩く邑楽の歩幅に合わせて間隔を一定に保つのは苦ではない。無駄なことは何も言わずに
こうして歩くのは既に二人の間で当たり前のことになっていた。つかず離れず、それでも心だけは決して
離れずにいる感覚が妙に楽しい。
ちらり、と邑楽の中の少女が振り向いて顔を赤くした。
やはり黙ってはいてもそれなりに背後が気になっているのだろう。本当に可愛い人だ、と思った。
そうしているうちに二人は駅前の道を通りかかる。この近辺はターミナルもあって人通りが特に多い。
うっかりはぐれて見失わないように慌てて距離を詰める。
「邑楽先輩」
だが、行き交う人たちが様々に発する言葉や物思う心が、急に聴覚視覚の巨大なジャングルのように思えて
息が詰まりそうになった。
ここで離れてしまったら二度と会えないような気がして、溺れてしまいそうな勢いで必死に目の前の邑楽に手を
伸ばす。
「邑楽先輩」
背中で揺れる髪に手が触れた途端、気配を感じたのか邑楽は不意に立ち止まって振り返った。
「…なに」
その顔は、先程の少女以上に真っ赤だった。
「置いてかれたら、悲しいッスよ」
「そんな訳、ないじゃない」
もごもごと一言二言呟いた後、そっぽを向いたまま鞄を持っていない片手を差し出してくる。これは、
繋いでもいいということだろうか。こんなに人がいるところで?
迷っているうちに急かすような声が掛かる。
「ほら、はぐれないでよ」
「あ、はい」
雑踏の中、繋いだ手が熱く感じた。
少しずつ、少しずつ、ゆっくりでもこの人と確実に繋がっていく。やはりそっぽを向いたまま再び歩き
出してはいても、歩みは少し緩やかになった。周囲の人の流れに逆らわず歩く二人の手はもう離れる
ことはない。
とうに日はとっぷりと落ちて、誰も二人のことは気にせず、二人が誰かも知らない。
誰でもない人たちの中の只の二人になって、誰でもない時間を泳ぐ。
突然、邑楽が呟いた。
「…あたしは」
「え?何スか?」
怖い、と聞こえた気がしたが、空耳だったかも知れない。
どんなことがあっても、この手を離しさえしなければいい。それが一番シンプルなコミュニケーションで
あり、また今の二人には必要なものに感じた。




0101名無しさん@ピンキー2014/10/20(月) 23:07:26.12ID:hx05qp5K
しばらく来てない間にこの大量投下…
もどかしさがこの2人らしくていい
あざす
0102幸福の傍観者2014/10/25(土) 03:21:37.60ID:i95rNj92
日曜日のシネコンは家族連れやカップルで大混雑していた。
ほとんどが前日に封切りされたハリウッド大作目当てなのだろう。

刻阪はその映画が観たいと前々からモコにねだられていたこともあって、二週間ほど前に席を予約して
出掛けていた。
映画は前評判通りとても面白かったし、普段音楽漬けで日を送っていることもあっていい気分転換にも
なっている。こんな日があるのも、たまにはいいものだ。
「あー、面白かったねー」
シネコンから出た途端、モコは大興奮で目をキラキラさせながら早口で感動した場面について色々と
話し始めた。
「モコ、あまり喉を酷使するなよ。少し休もうか」
「うん、何か飲みたくなっちゃった」
この日の為に買ったという、可愛らしいワンピースの裾を翻してモコはおどけて見せた。
心から可愛らしいと思える少女を眺めながら、刻阪は今ここにはいない友人をふと思い浮かべた。
席を予約する段階で神峰も映画に誘ったのだが、困ったような顔で断られてしまった。神峰にも何か
用事があったのだろうが、寂しい気持ちはやはりどこかに残っていた。
しかし、もしかしたら用事というのは。
そんな埒もない考えがふと頭の隅をよぎる。

二人で出掛ける時はよく入るコーヒーショップで、まだご機嫌が続いているモコはクリームたっぷりの
ラテを注文して、先に窓際の席に着こうとしていた。
「あっ」
小さな声が上がったのは、刻阪も注文した品を持って席に向かっていた時のこと。
「響」
モコは短く名を呼んで、焦った様子で手招きをしてきた。
「何だよ、モコ」
「今ね、そこで神峰さんを見たの」
モコは窓一枚隔てた外を指差している。
「ええっ?」
驚きはしたが、別段有り得ないことではなかった。
「一人でいたのかい?」
「うーん…女の人と笑ってた。あたしあの人なんか見覚えがある」
「そうか」
意外なところで見た、と言わんばかりのモコに対して刻阪は冷静なものだった。以前の神峰ならいざ
知らず、今は共に楽しむ為に時を過ごす相手がいる。自分たちが観たあの映画を彼等も観たのかも
知れない。
別にお前たちの邪魔はしない。これからもずっと上手くやっていけるといいな、と既に影も形も見えない
友人にせめてものエールを送る。
「あ」
甘いラテを一口飲んで何とか落ち着いたのか、急に閃いたようにモコが目を輝かせた。髪を束ねて
いるリボンが身振りの度に揺れるのが愛らしい。
「神峰さんの好きな人、あの人だったんだ」




0104Metamorphose(メタモルフォーゼ) 1/62014/10/27(月) 00:33:24.61ID:KK8q5zKv
日曜日のシネコン。
スクリーンに映し出される場面は既に佳境に入っている。
ストーリーの巧みさに引き付けられながらも、邑楽は隣で一心に見入っている神峰の様子が気になって
ちらちらと眺めていた。
神峰は食い入るように画面を見つめたまま、身じろぎもしない。持ち込んだドリンクも脇のホルダーに
セットしたままだ。そのうちにラストが近付いてくると、登場人物に感情移入したのか涙が頬を伝っていく
のが分かった。
普段は友人や後輩たちと賑やかに話題になった映画を観るのが当たり前になっていたけれど、大切な
相手とこんな風に静かに鑑賞するのも悪くない。上映されている間中ただの一言の会話もなかったのに、
不思議と充実した時間を過ごせた気がした。

今日の映画は邑楽から誘ったものだ。
元々は単館上映だった日本の無名監督の作品だったが、評判がとても良かったので上映館が増え、
ここのシネコンでも観られるようになった。しかし、それもあと一週間で終了する。だから観るのであれば
今しかなかったのだ。
前日封切りされたハリウッド大作にも興味はあったものの、それは二週間後でも一ヶ月後でも観る
機会がある。どちらを選ぶかと言われれば明白だろう。
映画のストーリーは単純そのものだ。
一人の男が幼少時に出会った初恋の相手をただ一心に思い続け、彼女の為だけに生涯の全てを
費やして守り続ける究極の純愛の物語だ。普通であれば凡庸そのものの内容になりかねないところ
だが、愚直なまでの男の生涯を丹念に情感豊かに綴った脚本、主役を含めた役者陣のリアルな熱演、
主役の男の心情を繊細に表現した音楽が口コミで評判を呼び、既に映画関係の賞を数多く受賞して
いる。

「超感動作だっていうから、観ない?」
さりげなくを装って神峰を誘ったのは二週間と少し前だ。神峰にも色々と用事があったので結局今日の
この日になってしまったが、それでも予定を合わせてくれたことが嬉しい。

映画が終わり、シネコンから出た後もしばらく神峰は無言だった。
それでいて何か言いたそうに邑楽を見ていたり、溜息をついたりと落ち着きがない。
「…もうお昼過ぎたね、何か食べようか」
「あ、そうッスね…」
先導して歩き出す邑楽に慌てて並んで歩きながらも、やはり何事か考えているような様子のままだ。
そんなにもあの映画に感動したのか、と立ち止まってじっと澄んだ瞳の奥を見つめると何故だか困った
ような顔になった。
0105Metamorphose(メタモルフォーゼ) 2/62014/10/27(月) 00:34:48.23ID:KK8q5zKv
「そんなに、映画良かった?」
「…あ、ああ…すっげー感動して、なんかまだ頭がついていかないんス」
「そう、そんなに感動したんなら誘って良かった」
「邑楽先輩」
急に声を張り上げた神峰は、口籠りながらも言葉を続けた。
「映画…あんな風に一生ずっと誰かを思い続けられるのって、難しいけど何より大事なことだって思って…
オレはそれが出来るのかなって思いながら観てました」
「神峰?」
ぎのシネコン前は行き交う人でごった返している。繁華街も近いから尚更だ。人の流れを完全に
遮断した二人を見知らぬ人々が迷惑そうに見遣りながら通り過ぎていく。
「ちょっと前なら主人公の気持ちは良く分からなかったかも知れない、でも今は…すごく」
二人の側を急いで通り過ぎた誰かが、神峰に荷物を乱暴にぶつけていく。
それでようやく我に返ったのか、神峰は一瞬周囲を見回してから邑楽の手を取った。
「行きましょう、ここじゃ邪魔になっちゃうんで」
「あ、神峰」
それがただ焦っているだけだったとしても、普段あまり見ない強引さにときめいてしまったのはやはり
欲目なのだろうか。握られている手が妙に熱くて、それもまたドキドキした。
「ねえ神峰」
「何スか」
「どこに行くの」
「わからない…」
その口調に、神峰自身の中に今までにない変化が訪れているのを感じた。迷っている訳でも動揺でも
ない、しかしまだ明確に形を成さないものが心を占めているような様子が心に引っ掛かった。
それでも、それは決して不快なものではない。
「……あたしは」
聞こえていないのか、神峰は何も言わない。
「どこにでも、ついて行く」

5分ほど歩いただろうか。
ようやく通行人を気にせず落ち着いて話せる場所だと思ったのか、神峰はファッションビルの脇にある
小道に入って行った。
シネコンの通りからも繁華街からもやや離れたその小道の奥の突き当りには、誰かが住んでいるのか
小さな家が並んでいるのがちらりと見えた。しかし人の気配はせず静まり返っている。それが今の神峰の
テンションに合ったのだろう。
0106Metamorphose(メタモルフォーゼ) 3/62014/10/27(月) 00:35:43.47ID:KK8q5zKv
小道に入った途端それまで強引だったのが嘘のように、いつものどこか人の顔色を伺うような雰囲気に
戻る。そして、やっちまったとがりがり頭を掻いた。
「乱暴にひっぱり回して、申し訳なかったッス」
「うん、それはいいけど…何か言いたいことがあったんでしょ?」
「ええ、まあ…」
その目には一体何が見えているのか、しきりに視線を泳がせながらも言うべきことを頭の中で纏めて
いるようだ。この可愛い男が真剣に何かを考えて思い巡らせる顔を見るのは好きだったので、邑楽は
特別急かすこともせずに見守るだけだ。
「怒らないで、くれますか?」
ふうっと大きく息を吐くと、汗ばんだ額を片手で拭って空を見上げる。つられて邑楽も見上げてみると
ビルの狭間で細長く切り取られた青空に、飛行機雲が白く残っていた。
「なんかこうやって邑楽先輩と一緒にいるのがすげー信じられないほど嬉しいのに、その分不安に
なったりするのは何なんスかね」
間近で見つめて来る顔は真剣そのものだ。
「…不安?何がよ」
「早く一人前にならなきゃ邑楽先輩に呆れられる、置いてかれたくないって気持ちかなあ。とにかく今の
ままじゃいけないってもどかしいンス」
「馬鹿ね」
邑楽はあっさりと両断した。
「あんたが情けないのはもう分かってる、でもそれでいいと言ったのはあたし。あんたは自分の未来
だけ目を向けてればいいの」
青空を横切る飛行機雲は綺麗に消え失せている。時の流れには誰も逆らえないが、決して恐れること
なく突き進めばいい。それが一番神峰らしいのだから。
「本当は、邑楽先輩にそう言って欲しかったのかも知れないのかな」
気が抜けたように神峰は壁に頭をもたれさせて、疲れたような声を出した。神峰が不安を感じていると
いうのなら、全く同じことが邑楽にも言えた。
今はまだ指揮者として人間として未熟にも程があるこの男だが、いずれ近いうちに飛躍的に才能を
伸ばして世界を目指すだろう。その時に置いていかれるのはきっと邑楽自身だ。その予感が甚だしい
からこそ不安に気付かない振りをしながらも恐れていたのがこれまでの姿だった。
互いに不安を抱いていたなど随分と滑稽なことだ。まだまだ相手を図りかねている部分があるなら、
更なる相互理解が必要な証拠でもある。それを重ねていけば、きっと今後も幾度となく迷い続けるに
違いない二人を救うのだろう。
邑楽も、このまま呑気に置いていかれたりはしない。
「馬鹿ね、あんたは」
0107Metamorphose(メタモルフォーゼ) 4/62014/10/27(月) 00:36:25.60ID:KK8q5zKv
うなだれている神峰の髪を撫でて抱き寄せ、宥めるように背中をさすってやると、おずおずとだが腕を
回してきた。その力が少しずつ強くなる。こうして抱き合っている時でしか感じない神峰の匂いに、頭が
くらくらした。
薄いシャツ越しにも確実な筋肉の張りが分かって安堵出来るから、こうしているのは好きだった。この
男とこうしているのは自分だけだという喜びがある。
「邑楽先輩、オレ…」
「あんたが好き。それでいいじゃないの」
「はい、それは有難いんスけど…ちょっとヤバくなった」
「は?」
微妙にトーンの変わった神峰の声が耳元で聞こえた。
「二人きりなのは、マジでヤバいんで」
とは言いながらも、腕の力は全く緩まない。なのに声の熱さは増していく。以前も言っていたことを
繰り返すからには、今がまさにその状態ということなのだろう。
これまで仄めかしながらも抑えていただろうに、今日は明確な欲情をあからさまにしてくる神峰がやや
怖いと思った。
しかしもっと怖がっているのは神峰当人なのだろう。それまで自制出来ると思っていた衝動がどうしよう
もなくなったなら、とひどく怯えている。
「…一緒にいるとやっぱり舞い上がって、自分が分からなくなるんス。どうかしたら、メチャクチャ邑楽
先輩に嫌われそうなんで」
「それは、多分ないけど…」
頬が火照ったように熱い。
急に、それまで感じていた神峰の匂いがやたらと生々しいものとなった。
それでも決して逃げてはいけないと覚悟を決める。もとよりこの男とならとどうなってもいいと願って
いたことなのだ。
今この時のリアルな感触を確かめるように再び髪を撫でると、背中に回っていた片手を引き寄せて
両手で包み込む。
「いい?あたしを見くびらないで。あんたに価値を見出してるのは冗談でも何でもないの」
言いながら引き寄せた片手を胸の膨らみにぴたりと押し当てる。あまりのことに驚いて声も出ない
神峰に構わず、言いたいことだけを全部言い切った。
「あたしの心はここ。あんたの目には何が見えてても、ここにいつもある。だからあんたの心もちゃんと
見せてよ」
「オレの、心…?」
「そう、あたしの目にも見えるような、あんたの気持ちを知りたい」
0108Metamorphose(メタモルフォーゼ) 5/62014/10/27(月) 00:37:40.14ID:KK8q5zKv
胸に押し当てた大きな手の感触がじんわり熱っぽく感じて、身体の芯まで痺れてきそうだった。今日の
朝までは意識していてもどこか漠然とした感覚だったのに、こうして二人きりの空間で身体を密着させて
いると、目の前にいる神峰の存在が妙にエロティックなものに感じて仕方がない。
普段の神峰の捉えどころのない淡々とした雰囲気は完全に変化している。
神峰からすれば、邑楽もまた同じく淫靡で扇情的な匂いを発散しているのだろう。
「… あ ん た は い や ?」
じっと目を凝視しながら一語ずつ念入りに言葉を発すると、まだどこかに戸惑いを残していた目の
奥で一つの確かな色が結ばれた。そして前触れもなく唇を塞がれる。当たり前のように口腔内に差し
入れられる舌に夢中で応えているうちに、身体に灯った熱が堪らない痺れを更に誘発させ、次第に
足に力が入らなくなっていく。
これまで聞こえていた小道の外の雑踏の喧騒さえ、もう分からなくなっていた。
どれだけの間そうしていたのか、名残りを残して唇がわずかに離れた後で吐息のような声がふわりと
かかる。
「嫌、なんかじゃないッスよ、邑楽先輩。むしろずっとそうしたいって思って…」
「ん…でないとあたしが困る」
こうして心が通っている実感があるだけで、とても幸せな気持ちだった。
少し歩けば繁華街がある。
いつ誰が乱入してきてもおかしくない場所にも関わらず、互いにしっかりと腕を回して抱き合い、鼻を
擦り合わせるほど近くで囁いていると奇妙な高揚感に身体も心も囚われた。
もうここでどうなってもいいと。

「なにしてるの?」
突然、二人きりで築き上げた時間は切り裂かれた。
幼い声にはっとして顔を向けると、不思議そうに二人を見上げて首を傾げている小さな男の子がいた。
偶然見慣れないものを小道の入り口で発見して入り込んだのだろう。
「えっ」
「ぎゅーで、ちゅーしてるのって、こいびとどうしってことだよね」
「あ、うんそうだよ」
「おにいちゃんは、おねえちゃんのことすき?」
そんな無邪気な質問に、抱き締めている腕の力をわずかも緩めることなく神峰ははっきりとした声で
答えた。
「大好きだよ、もちろん」
「そっか、よかったぁ」
何を納得したのか、男の子は急に満面の笑みになってそのまま小道を駆け抜け、賑やかな表通り
へと飛び出して行った。母親か友達が近くにいたのだろうか。また誰かが来るかとしばらく警戒していた
のだが、以後はもう無粋な乱入者などなかった。
0109Metamorphose(メタモルフォーゼ) 6/62014/10/27(月) 00:38:38.77ID:KK8q5zKv
それでも、何となくそれまで危険な領域まで盛り上がっていた雰囲気がそがれた気がして、二人とも
ただ互いの温みと匂いを確かめ合うだけになっていた。今はまだそんなに急がなくても、これで充分に
思える。
しかし。
またこういう状況に陥ったのなら、その時はきっと欲求のままに何もかもかなぐり捨ててしまうに違い
ない。そんな危うさもどこかで感じていた。
「ねえ神峰」
寄り添ってぼんやりと表通りを往く人達を眺めている間、神峰のシャツの胸に顔を埋めている邑楽は
ぽつりと呟いた。
「あたしがどれだけ幸せなのか、分かる?」
その答えなのか、ゆっくりと慈しむように髪を撫でてくる神峰の手がするりと頬にかかる。既に慣れた
筈の温かさではあったが、今はとても胸に沁みた。




0111名無しさん@ピンキー2014/11/08(土) 01:46:51.38ID:eTec1U7i
>>110
あざす

小説読んだ
神峰と刻阪がコンビニで買い食いしてるというので、そのネタだけで書いてみた
0112甘党男子の操縦法 1/22014/11/08(土) 01:48:11.36ID:eTec1U7i
週に何度か、普段より十五分早い登校をする。
家を出てすぐの四つ角の先に、大きな屋敷がある。周囲を威圧するほどの立派な黒塀がそびえている
のだが、その脇に屋敷を外界から区切るような道が伸びていた。
日当たりが良く道幅もそこそこ広いその道は近所の子供たちにとって格好の遊び場所になっていた。
邑楽も幼い頃は毎日日が暮れるまで夢中で友達と鬼ごっこや影踏みをして遊んだものだ。大通りと
違って滅多に車が通らず、周辺住人たちは子供たちに優しかったことも、安心して遊べた理由だ。
その道で、少し大人になった今の邑楽はわくわくしながら待っている。
抑えきれない恋心を抱えながら。

「邑楽先輩、今日も早いッスね」
ここを待ち合わせ場所にしてから、神峰は約束を気に掛けているのかいつも息を切らせて走って来る。
その姿を見るのが好きだった。
「当たり前じゃない」
いつものようにさりげなくを装いながら、邑楽は抱えていたサブバッグから小さな包みを取り出した。
これが十五分早い登校の理由である。
「はい、どうぞ」
「うわー、邑楽先輩の弁当、いつも楽しみなんスよ。今日は何かなあって」
一つ年下の可愛い男は弁当を受け取る時に毎回盛大に喜んでくれる。これが犬だったら千切れる
ほど尻尾を振っていることだろう。無邪気で大きな犬にじゃれつかれている想像をして、照れ隠しに
ぼそぼそと呟く。
「…期待に添えてればいいんだけど」
「そんなこと…あの、中見てもいいッスか?」
「え?」
「邑楽先輩が作ってくれる日は、昼になるのが待ちきれないんで」
目をキラキラさせて宝物のように弁当を抱いている神峰に、嫌とはとても言えない。それほど期待して
いてくれるなんて、嬉しいような不思議なくすぐったい気持ちだ。自然と顔が熱くなるのを必死で隠し
ながらも答えを吐き出す。
「それはいい…もうあんたにあげたものだし」
「あざす、んじゃ早速」
邑楽の葛藤を知ってか知らずか、大きな犬と化した神峰はそそくさと包みをほどいて弁当箱の蓋を
開いた。その途端、弾けたように叫び出す。
「うわー!すっげーすっげー。メッチャ美味そーだなあ!」
「ちょ、声大きいって」
慌てて制止させようとするのだが、神峰の興奮はなかなか収まりそうになかった。
ちなみに、普段も今日も特に変わったおかずを入れている訳ではない。身体のことを考えていつもの
ように野菜中心で、出来るだけ品数を多くしているだけだ。
「ほうれんそうの胡麻和えとタコさんのウィンナー、すっげー好きなんス。あとこの卵焼き!」
「もう、騒ぎ過ぎ…」
「あ、でも邑楽先輩ホント料理上手いんで、感激してる。なんかいつも一方的に負担かけさせてるのが
心苦しいッスけど」
0113甘党男子の操縦法 2/22014/11/08(土) 01:49:33.43ID:eTec1U7i
無邪気にはしゃいでいるのに急に殊勝なことを言い出すのは神峰の癖だと、最近ようやく分かって
きた。やはりまだ気持ちの片隅に臆病でネガティブな部分がわずかに残っているのだろう。それを
払拭するように、さらりと笑い飛ばした。
「あんたはそんなこと、何も気にしなくていい。あたしがしたいだけなんだもの。美味しいって言って
くれればそれでいい」
「…はい!」
本当に昼まで待てないのか、ウィンナーを一つ頬張って満足そうに笑う表情がやたら幼く見える。
「もう、あんたってば」
「あ、そうだ邑楽先輩!」
やたら名残り惜しそうに弁当箱の蓋を閉めた神峰は、急に思いついたように尋ねてきた。
「この卵焼き、いつもすっげーふわふわしてて甘いんで超大好きなんスけど、どうやって作ってるの
かなーって」
「あ、それは」
答えかけて、ここで時間を取り過ぎていることに気が付いた。二人きりでいるのは確かに楽しいが、
揃って遅刻をしては何もならない。
「…それは後で教えてあげる。それより神峰、あたしがちゃんとあんたの身体のこと考えてバランス
良くお弁当を作ってるんだから、コンビニの買い食いは出来るだけやめなさいね」
神峰が再び弁当箱を包み終えてカバンに入れたのを目の端で確認すると、いかにも先を急いでいる
というように邑楽は大通りへと出て行った。
「あ、待って下さいってば!」
慌てて神峰も後を追って来る。きっちり邑楽の数歩後をキープしながらも弁解のように呟いた。
「暇な時に刻阪と行ってるだけッスよ、新作スイーツとか気になるんで。特にプリンとかロールケーキ
とかついつい」
「もうっ!」
何だかそんな戯言の全てが煩わしくて足を止め、邑楽はくるりと振り向いて神峰の身長に合わせる
ように少しだけ見上げた。
「プリンだったら、あたしが作ってあげるから」
「え…マジスか…え??」
「そ。もういいでしょ」
そんなことをしているうちに始業時間も迫っているのか、通りには鳴苑の生徒たちが目立つように
なってきた。
顔が熱いのを周囲に気付かれないように、邑楽も二度と後ろを振り向くことなく黙ったまま登校の歩を
進めるばかりだ。
それでも。
振り向かなくても分かる。
神峰がとても嬉しそうにしていることだけは。
それだけで、今日も一日楽しくなりそうな気がして嬉しくなった。



0115恋の孵化 1/42014/11/20(木) 23:03:56.08ID:Gs+EgmlO
その日も良く晴れていたので、昼休みは屋上に行きたくなった。
「いい天気だなあ…」
弁当を抱えて屋上のドアを開くと、心地良い風が吹いた。空には薄い雲が一筋浮いているだけだ。
このところ色々なことがあったので季節の移ろいには気付くこともなかったが、慌しかった春も過ぎて
空気が夏の色を帯びようとしている。
「ホントに、いい天気だ」
その場で大きく伸びをしてから、神峰は定位置になっている場所まで行って腰を下ろした。抱えていた
弁当を開くと色とりどりのおかずが目に飛び込んできた。
「うわ、すっげ…」
少し前から週に一度なり二度、神峰の弁当は邑楽が作るようになった。適当に購買で買ったパンで
済ませてしまうのは身体に悪い、というのが邑楽の主張する理由だったが、今ではそれを楽しみにして
いる自分がいる。邑楽は料理上手で部内でも有名なだけに彩りもおかずの配置も綺麗で、味ときたら
もう絶品としか言いようがない。
わざわざ作るのは大変だからと辞退しようとしたこともあったが、おかずはまとめて作り置きしているし
アレンジも利くからいいのと押し切られた格好だ。それでもやはり細々とした手間がかかっているのは
普段鈍い神峰でも分かる。
だからお返しとして世話好きで優しいあの人が喜んでくれることをしたいのだが、今のところは何も案が
浮かばない状態だ。

それにしても。
女の人はみんなあんな風にどこも柔らかいのだろうか。

天気が良く過ごしやすい屋上で一人思考を巡らせていると、つい普段から悶々と考えていることが
頭をもたげてくる。
神峰を好きだと言ってくれたあの人は、まっすぐな心と同じようにどこもかしこも綺麗だ。艶のある髪、
滑らかな頬、なまめく唇、そして胸の膨らみの温みと柔らかさが掌にまだ感触を残している。
あれは、この間映画を観に行った帰りのことだった。
カットソーと下着越しの感触だったとはいえ果実のような膨らみの柔らかさは魅惑的で、直に触れて
いたならどれほど素晴らしいかとその後も度々妄想するほどだった。
あの狭い道で二人きりで身を寄せていた時間はそれほど長くなかったが、もしももう少し触れていたい、
一緒にいたいという欲求に負けていたならどうなっていたか分からない。
当たり前のように交わすようになったキスだけでは、もう気持ちも欲求もはちきれそうになっている。
「贅沢な悩みだろうな…」
そればかりは今悩んでいても仕方がない。
一旦堂々巡りの考えにけりをつけて、弁当を食べようと箸をつけ始めた時。
0116恋の孵化 1/42014/11/20(木) 23:04:36.66ID:Gs+EgmlO
「あ、神峰さんいた、やっほー!」
屋上の出入り口で、モコが手を振っているのが見えた。その後ろから刻阪もついて来ていた。
「ほら、やっぱりここだった」
「ねえねえ神峰さん、お昼一緒していいかな」
屈託のないモコがちっゃかり隣に座って、可愛らしいピンクの包みを開いた。小さな弁当箱の中には
お菓子のようにカラフルなおかずがぎっしり並んでいる。それがいかにもモコらしくて、何となく鬱々と
していた気分が晴れていくのが分かった。
不躾でごめんな、というように小さく動作で詫びる刻阪もその隣に陣取る。一人だけで終わらせるつもり
だった昼休みの時間が急に賑やかなものになった。
「うん、天気がいいからおいしー」
モコの無邪気な様子を眺めているだけで空腹感が増して、つられるように神峰も食べ始めた。やはり
どれも本当に美味しい。弁当箱一つ分のおかずに一体どれだけ気を配っているのだろうと気になって
しまうほどの完成度だ。しかも、卵焼きの甘さがちょうど良いのが驚きですらある。
「ねえねえ神峰さん」
そんな時、いきなりモコに話しかけられた。
「え?ああ…何?」
早くも弁当を食べ終え、最後のプチトマトをフォークで刺したモコは、まるでインタビューでもするように
プチトマトを突き出してきた。
「この間の日曜日、あたし神峰さんを見たよ」
「あー、うん」
「んふふ、神峰さんあの綺麗な人と一緒で楽しそうだった」
「うん、すごく楽しかったよ」
以前封切り直後の映画を一緒に観ようと誘われた時、既に邑楽から誘われて承諾していた。ただし
別の映画で、その上に色々と予定があったのでたまたま同じ日になってしまった。だからどこかで二人と
出会うかもとは思っていたが、やはり邑楽と一緒にいるところを見られていたようだ。
とはいえ、あえて秘密にしている訳でもないので気楽なものだ。
「いいなあ幸せそうで」
モコは邑楽と以前面識がある。なのにこの間のことを軽く尋ねるだけで済ませ、素直に羨ましがって
いる様子が本当に恋に恋をしているようで可愛らしい。
「神峰」
ゆっくりと弁当を食べ終えた刻阪が、モコの背後から声をかけてきた。
「お前は、上手くいっているようだな。良かった」
普段から比較的平静な刻阪の心は今こうしていても凪いでいるように穏やかなままだ。きっと不器用な
神峰の恋をこれからも何かと応援してくれることだろう。それは本当に嬉しいし有難い。
0117恋の孵化 3/42014/11/20(木) 23:05:54.21ID:Gs+EgmlO
けれど、そんな親友にも決して言えないことがある。
それが今後増えていきそうな気がして、神峰は心の乱れを気付かれないように必死に取り繕いながら
言葉を返した。
「まあ…お陰様で、かな」
そんなちっぽけな気鬱を知ることもなく、今日の空はあくまで澄み渡って青く美しい。本来ならば悩む
必要のないことまで抱え込んでしまうのは悪い癖だと自嘲しながらも、頭の中で思い浮かべているのは
やはり見惚れるばかりに美しい人の姿だ。
それを自覚すると、今すぐに会いたい気持ちが湧き出して止まらなくなった。

その日は吹奏楽部で合同練習があった。
合同では音合わせを重視するだけに、全パートリーダーが納得する結果が得られるまでは何時間でも
かけるのが当たり前になっている。時間はかかっても音が綺麗に合った瞬間は場の空気感が見事に
変わる。神峰もその瞬間を待ち侘びて懸命に指揮棒を振るい、全ての音の流れが最善なものになる
よう奮闘を続けた。

結果的に二時間半ほどで満足のいく結果を迎えることが出来、合同練習はつつがなく終了した。
それぞれ楽器の掃除や手入れをして粛々と帰宅の準備が進む中、神峰はパートメンバーと楽しげに
談笑している邑楽の姿を意識的に追っていた。これから言わなければならないこと、やることがまだ
あったからだ。
決して見失う訳にはいかない。
「邑楽先輩」
帰り支度をして教室を出たところで、ようやく声を掛けることが出来た。幸いにして、もう時刻は夜に
差し掛かっていたので教室にも廊下にも他に人はいなかった。周辺の暗がりと異様な静けさが妙な
胸騒ぎと不安な気持ちを誘発させる。
「あ、お疲れ様」
「あの、ちょっといいッスか?」
「…うん」
一体何があるのかと、邑楽は首を傾げている。
「今日も、弁当すっげー美味かった。あ、弁当箱は洗っておきましたんで」
言いながら、後ろ手に持っていた弁当箱の包みを差し出した。黙って受け取った邑楽はまだ不審な
表情をしているが、弁当の評価は気になっていたのかほっとしたように笑った。
「そう。美味しかったんなら、良かった」
「……それでですね」
果たしてこのタイミングで言っていいものか、これまで何度も色々なパターンをシミュレーションして
きた筈だったのに、いざ目の前にすると全部吹き飛んでしまった。一大決心をしなければ言えない
ことででもあるように、足が震える。
「邑楽先輩、この間のことなんスけど」
0118恋の孵化 4/42014/11/20(木) 23:07:52.18ID:Gs+EgmlO
唐突な言葉に、邑楽はくっきりと形作られた目を見開いていた。とはいっても別段怒っている様子は
ない。じっと息を詰めて静かに神峰が次に何を言い出すのか待っている。その表情がとても綺麗で
見惚れそうになる。
「あの時言ってた、オレの気持ちを邑楽先輩にも見えるようにするにはどうすればいいのかって」
「…神峰?」
「あれからずっと、どうすれば分かって貰えるのか考えてたんス」
違う、本当はこんな曖昧にぼかされたことを言うつもりではなかった。もう姑息なシミュレーションも
意味を成さない。ただ目も眩むばかりに欲情していたあの時のように、言葉すら不要になるほどの
激情に突き動かされたかった。
元々上手い言い回しなど得意ではないだけに、感情の上っ面だけを浚うような浅い言葉しか出ない
のがひたすらもどかしい。
内心慌てふためいている神峰の頬を、綺麗な指が撫でた。
「神峰、あんたはバカね」
とてもとても穏やかな声で、邑楽は呟く。
「あの、邑楽先輩」
「今更、何の理屈がいるの?あたしはずっとあんたを待ってた」
頬をするりと撫でる指が髪に絡まり、一筋巻きつけるとそのまま戯れるように引き寄せてきた。何の
躊躇もない流れるような動作に一瞬にして美しい蜘蛛の糸に絡め取られているような錯覚を覚え、
胸の中が甘くとろりとしたもので満たされていく。
愛しく狂おしい思いが今にも溢れてしまいそうで、腕を回してきつく抱き締めると華奢な身体が震えて
小さな吐息が漏れた。
「邑楽先輩、ホントにすっげー好きだ…」
神峰の気持ちを見透かしたように、しばらく黙って抱き締められていた邑楽はやがてさらりと腕を振り
ほどくと夕闇迫る教室の扉を開いた。
「だったら…ね」
振り返った表情はこれまでに見たこともないほどひどく艶然としていて、あまりのなまめかしさに息を
呑むしかない。つい先程望んだように、言葉も不要な激情の刻が今二人に訪れている。
神峰は誘い込むように微笑する邑楽の艶やかな口元に目を奪われながら、ふらりともう誰もいない
教室へと立ち入った。
その先は、誰も邪魔など出来ない。









途中、番号を間違えた

ところで時系列的には、おジジイ主催のスプリングコンサートの後ぐらいで想像して書いてる。
0119名無しさん@ピンキー2014/11/21(金) 22:57:36.93ID:+OqZ0zyn
そして前編・とつけるのも忘れた
この勢いがあるうちに、エロ突入の後編も書く
0121名無しさん@ピンキー2017/04/17(月) 05:15:33.73ID:pqJfp6qW
唄方幸乃と御器谷忍のエロパロです。
0122美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)@2017/04/17(月) 05:16:25.47ID:pqJfp6qW
「あの……」

御器谷忍はバスクラリネットの入ったケースを片手に待ち合わせていた少女に声をかけた。
彼女は道立呂旋高等学校の唄方幸乃である。
鳴苑高校があの全国大会で見事金賞に輝いた時
彼女はさりげに舞台裏で忍とメアド交換をしていた。
都会に遊びに行くと言うのでそのついでに
バスクラリネットの練習に付き合って欲しいとの事だった。
他校の生徒と練習を重ねる事は、決してマイナスではない。
承諾した彼だったが、彼女がモーションをかけた神峰を誘うつもりはなかった。
彼女と彼が会ったら、従姉の恵がどうなるか推して量るべしだ。

「あれから神峰君に付きまとっていない?」

誰もいない鳴苑高校の音楽室で基礎となる曲を
通しでやった時、忍は休憩の前に幸乃に聞いた。

「ううん、神峰君とはあれから会ってないけど……
 えっ、忍ちゃん、ひょっとして男の子が好きなの? そっち系?」

「なっ!? 違うよ! そっち系って何!?
 ボクが言いたいのは、君がもし神峰君と、その……
 付き合う事になったら、悲しむ人がいるから……それで……」

「ふーん、なるほどね……神峰君って案外モテるんだ。
 でも神峰君って可愛いよね。本気で狙っちゃうのも悪くないかな?」

忍の顔にみるみると焦りが見えてきた。
それを見て幸乃は面白がっている。

「でもぉ、忍ちゃんがお願い聞いてくれたら諦めてもいいかなぁ」

「え……ボク……?」

「そう……ふふっ……」

幸乃は隣に立っていた忍にすり寄った。
忍は思わず後ずさりするも、いつの間にか窓際まで追い詰められていた。
彼女は彼の胸板に、自身の豊かな柔乳を
押し付けて、彼の脚の間に膝を割り込ませて寄り添う。
0123美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)A2017/04/17(月) 05:17:42.73ID:pqJfp6qW
「あのっ、これは……!」

「ふふっ、本当に可愛い顔ね。忍ちゃんって……♪」

忍は一瞬何が起こったのか分からなかった。
気づいた時には幸乃の顔が鼻先が擦れ合うくらいに
近づいていて、彼の唇に柔らかな感触が訪れていた。

「ん……、んん……」

忍はキスをされた驚きと共に息苦しさを覚えて大きく鼻で息を吸う。
蠱惑的なくらいに甘い女の子の匂いが鼻を犯して幸福感を与えてきた。
どうして幸乃はキスを? ……そう思っている間に
彼の口内へと彼女のやらしい舌が蛇のように侵入してきた。
それはねっとりと動き回った後で彼の舌を見つけて
執拗に奥から引きずり出そうとする。
おずおずと彼が舌を伸ばすと、交尾するように絡めてきた。
繋がった二人の口内に、互いの唾液が流れていく。
それをこくこくとゆっくり飲みながら、互いの口の味を交換し合った。

「んっ……♪」

幸乃はキスをしながら剥き出しの白い太腿で忍の股を上下に擦る。
忍の敏感な所はズボン越しに女の肉を感じ、ゆっくりと兜を持ち上げていく。
戸惑う彼の反応を味わいながら、彼女は
彼のシャツのボタンを一つまた一つと取っていった。

「へぇ……可愛い顔して結構鍛えてるのね」

はだけたシャツから覗く引き締まった肉体に
口を離した幸乃はうっとりとして眺め、手で愛で撫でる。
口内を蹂躙された忍は、口端からだらしなく唾糸を垂らして放心しかかっていた。

「あの、止めて下さい……。こんなボクのつまらない体なんか見ても……」

「あら、恥ずかしい? じゃあ……」

幸乃はにこりと微笑むと、その場でカッターシャツを脱ぎ始めた。
忍は逃げる場所すら与えられず、ブラジャーの下で
窮屈そうに自己主張している豊かな女乳に釘付けになった。
同じ年頃の女の子の下着姿を見るのは初めてだ。
甘い匂いが一層濃くなり、それは挑発的に理性を萎縮させてくる。

「はぁい、これでおあいこでしょ♪」

忍は生で見る女の子の艶姿に思わず帆を立たせた。
それはもう隠しようがないくらい膨らんで、幸乃の太腿をぐいぐい押している。

「ふふっ、おっきくなっちゃった? ほんとぉに忍ちゃんて男の子なんだぁ♪」
0124美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)B2017/04/17(月) 05:18:55.74ID:pqJfp6qW
幸乃は柔らかな笑みを浮かべて、その自己主張しているものを布越しに優しく撫でた。

「わたしね、忍ちゃんの事も気に入っちゃったんだよね。
 忍ちゃんがわたしと付き合ってくれるなら、神峰君にアプローチはしないわ」

「そ、それは……あうっ……!」

幸乃はそのまま、突き破らんばかりに布地を引っ張っている箇所のジッパーを外す。
押さえつけられていた忍の男性自身が、勢い良くその剥き出しの身を震わせて出てきた。
あまりマスターベーションをした事のない彼のそれは
被った包皮の内から籠った臭いを発していて
何かを期待しているかのようにひくひくと頭を振っていた。

「ふふっ、すっごぉい。忍ちゃんのオチンチン、おっきいね♪」
「そんな、ボクのなんて……」

忍の言葉も聞かないうちに、幸乃はその活きの良いぺニスを
軽く握り、その恥熱を手のひらにじんじんと感じていた。

「でもお腹より鍛えてないんだね。
 皮被ってるし、怖いくらいおっきいのに……可愛い♪」

幸乃はしばらく鼻をそれに近づけて嗅いでいたが
段々と吐息が荒くなったかと思うとそれをつぷといきなり頬張った。

「んふ……んむっ……♪」

「あうっ……!」

忍は初めて味わう異性の口淫に思わず腰を引いた。
しかし、幸乃は忍の引き締まった尻肉に手を回してすがり付き
チュパチュパと貪欲にぺニスを舐め嬲った。
まるで乳汁を欲しがる赤ちゃんのように、夢中で忍の童貞をしゃぶっている。

「ちゅぱ、ちゅっ、んん……おっきいよぉ……
 はふ……ん……エッチな味、すごぉい……ちゅぷ……むふ、ん……♪」

幸乃の舌がぺニスを責める度、忍は理性が
太陽の下にある氷のように融けていくのを感じていた。
マスターベーションとは全く違う甘い切なさに、彼は犯されていく。
口はだらしなく開いて唾液を口端から漏らして快楽に喘いでいる。

「ふふっ、忍ちゃん、気持ち良さそうだね?
 わたしのフェラ、気に入ってくれた?」

唾液まみれのぺニスを甲斐甲斐しくしごきながら幸乃は笑っている。

「もっと気持ち良くしてあげる♪」

幸乃はその豊満な美巨乳を下から支えるように
持ち上げて、その魅惑の谷間に忍のを柔らかく包んだ。
石のように硬くなっているそれを、彼女の乳肉は優しく圧迫する。
0125美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)C2017/04/17(月) 05:19:42.33ID:pqJfp6qW
「おっぱい、好き?」

幸乃は上目遣いに忍を見ながら、その白く巨きな乳肉を
外側から内へと押し付けるように動かした。
豊満な乳のもたらす、優しくも小悪魔的な快感に、忍は身震いして喘いだ。
柔らかな牝の乳は、芯に溜まる男の欲望を一層熱く濃くさせてくる。
上下に擦れる度に彼の皮帽子がめくれ、籠った臭いを散らしながら翻弄される。
その快感は理性すらも圧迫して身動きを許さない。

「ああっ……!」

忍は仰け反った。
乳間から覗いていた膨れた先端を、幸乃はいとおしそうに舐め始めたのだ。
剥き出しになっている敏感な彼のを、彼女は飴のようにコロコロと舌先で転がした。
雁首に彼女の厚く美しい唇が寄り添い、甘く締めつける。
口腔に囚われた先端は蛇のような舌に存分に嬲られた。
乳は男の欲望を煽るように忙しく動いて射精を促す。

「ちゅっ、んん……ちゅぱ、ちゅぷ♪」

「ああっ、幸乃さん……!」

口と舌と乳の波状攻撃に抗えず、幸乃の熱い口腔に忍は濃縮したその種を迸らせる。
視界がちらつくほどの性感に酩酊した彼は、歓喜の喘ぎを吐いて乳間で精を漏らしていた。
彼女は口腔で受け止めきれず、ポトッポトッと忍の精を乳肌に落とした。
口一杯に広がる青臭い淫らな味に悦びながら、彼女はそれをすすり飲んだ。

「あはぁ……お口の中、忍ちゃんのでいっぱぁい……♪」

幸乃は口端からだらしなく精液をぶら下げながら
舌の上に溜まっている精液を忍に見せつけた。
美少女の舌を汚している自分の濃精を見て
そのアンバランスに魅惑的な美しさに彼はぞくぞくとした。
何をされたのか分からないまま終わったからか
それとも迎えた口内射精に満足していないのか
彼のものは依然として反り立ったままだ。

「忍ちゃん、初めて?」

幸乃は肉根の根元に手を添えながら幹部にまとわりつく残滓を舌で掬い取っていく。
敏感な彼のは、美少女の淫らな舌が這う度に頭を揺らして反応する。

「うん……」

「そう……。ねぇ、……これさ、わたしの中に入ったら……どうなると思う?」

幸乃はそう言って忍の赤黒い膨張にキスをした。
彼の返事を待たずに、彼女はにこりと笑って剥き出しのそれの上に跨がった。
やらしい涎を垂らした肉根の先が、美少女の花弁に口づけをする。

「ん……」

幸乃は腰をゆっくりと落としていく。
忍のはそのまま柔らかな肉色の門をくぐり、長い胴体をその中に隠していった。
口内とは違う、温かく柔らかな肉の感触に、無垢な忍は身悶えた。
0126美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)D2017/04/17(月) 05:20:39.36ID:pqJfp6qW
「んっ、ああっ、やっぱり、いいっ……♪」

天に向かって喘いだ幸乃は、汗ばんだ己の乳房を揉み慰める。
指の合間より見える薄桃色の乳首が悩ましくも愛らしい。
やがて忍のを根元まで咥え込んだ彼女は
見事なプロポーションの肉体を見せびらかすようにして彼の腰上で軽やかに跳ねる。
豊かな乳房が淫らにたゆみ、彼女の強い興奮を表している。
彼女の中は数合のうちに妖しい痴汁を溢れ満ちさせた。
無数の肉襞が無垢な美少年の分身を淫乱に責め立てていく。
彼女のはその根元をきゅうきゅうとしきりに締め付けて、更なる射精を求めた。
彼の鈴口が、雁首が、竿が、裏筋が、初めて味わう魔性の媚肉によって
魅了され、一切の理性が泥のように蕩けていった。

「ああっ、ああっ……!」

腹筋が締まり、四肢に強張りが走った直後
ビュグンビュグン、と甘い痺れと共に先程のような律動が起きた。
無理やり膣内でいかされた忍のは、若い白蜜をたっぷりと相手の肉孔にまぶし散らしていった。

「ああっ……すごい。忍ちゃんのがお腹の中で
 ビクンビクンして、エッチなお汁……沢山出しちゃってるよ♪」

幸乃は自らの乳首をちゅっ、ちゅっ、と吸いながら授精の悦びに酔いしれた。
その間も、忍の射精は終わる様子がなかった。
何度か身震いする度に先端が魚のように跳ねて
根元から一層熱く濃い精を惜しげなく彼女へと捧げた。

「ん……ちゅっ、ふふっ……まだカチカチ……♪ 体力あるんだね、忍ちゃんて♪」

幸乃が腰を上げると、ぬるんとべとついた体液を纏ったぺニスが押し出された。
それを美味しそうに舐めしゃぶりながら
彼女は硬度の変わらない雄の頼もしさにときめいた。
すっかり舐め拭った後、彼女はそのまま床に仰向けになり、彼の前でその美脚を開いた。
見せびらかすように開いた恥花からは、
卑猥な恥悦の残滓がとろとろと漏れ滴っている。
阿呆のように開いた肉穴から外を窺うように垂れているそれは
この上なく淫らで、忍は思わずぺニスを跳ねさせて興奮した。

「さぁ……今度は忍ちゃんの番よ。わたしの体に二回戦決めちゃってぇ♪」

「でも……ボクたち、こんな事は……」

卑屈精神の塊である忍は、勃起したぺニスを両手で隠して理性にすがった。
どこまでもやらしい幸乃の肉体をこれ以上犯せば、深みに嵌まるのは目に見えている。

「そ、それに……ボクのなんか使わなくても
 他にもっと気持ち良くしてくれる男子が……」

童貞を卒業したのに煮え切らない忍に、幸乃は少し苛立った。
彼女は大会で見せたあの雄々しい御器谷忍をもう一度見たかった。
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