だがそれでもこの仕事を辞めるわけにはいかない。
生活費の為でもあった。
実は他でも皆やっているからという、罪の意識の低さからでもあった。
だがそれ以上に、これは男たちの夢だったから、というどうしようもない理由があったのであった。


今日のお客は特別な客である。
すでに塾も閉じた深夜、フードを被りゴーグルをつけた怪しい客がこそこそと遊勝塾へと入ってくる。
事前に話を聞いていた修造は、ステージへの扉を開けた。
ステージに入った客はフードを脱ぎ捨てる。
彼はこの塾の目玉である少年、赤と緑の髪を持つ14才、榊遊矢。
いつもはエンタメデュエルの精神で飛んだり跳ねたりするデュエリストも、ただの一人の男の子。
己の若い性欲には勝てず、夜のアクションデュエルの話を知った時、修造にこっそり願い出た。
そして母親にばれないよう、自分の家をこっそり抜け出しここに来たのである。
全ては女性モンスターとセックスするため、全ては脱童貞のため。

ソリッドビジョンシステムが作動する、そしてフィールド魔法『LOVEホテル』が起動した。
ばら撒かれるアクションカード。だが遊矢はそんなものに目もくれず、目の前への大きな看板のホテルへと突撃する。
誰もいないカウンターを気にせず、指定された部屋へと階段を駆け上がり、その部屋の扉の前へとつく。
アクションデュエルの為に鍛えた体は四階まで猛ダッシュで来たのに、息一つ乱れない。
だが別の興奮によって呼吸と動悸が止まらず、顔が赤くなった。
ゴーグルの中の目に力が入る、背筋をまっすぐにし、唾を飲み込む。
さきほどまでのダッシュとは違い、今度はゆっくりと扉を開けた。

部屋の中には丸い大きなベッドがある。
そしてその上に二人の少女がちょこんと、崩れた正座でいた。
一人は紫の服の少女「EMヘルプリンセス」。
もう一人は黒いマスクを目につけた派手な服の少女「EMトランプ・ウィッチ」。
この二枚は事前に遊矢から修造に渡された物である。
間違ってカバを渡すはずがない、そんなことを期待する人もいるはずがない。
ともかく彼が渡した女性モンスターはこの二枚だった。
というかこの二枚しかいなかった。
さすがに柊柚子の幻奏とセックスする勇気はなかった、彼女のカードを汚して悦に浸る歪んだ煩悩はもっていなかった。