「確かに……百見は一行に如かずですね」

ザスキア卿を見下ろす者がいる。
入れ替わりに立ち上がったセイズマリー公は、その瞳で床に倒れたザスキア卿を観察していた。

「何故……確かに薬の、効果は……」

「ザスキア卿、貴女は私と似ている。
 私がこの無限書庫から滅多に出ないように、貴女もまた実験室から出ることはない。
 出るとするなら、必ず何か穏やかならぬ事を企んでいるはず……そうでしょう?」

ザスキアは体を動かそうとするが、意志に反して手足の感覚は段々となくなり
やがて意識を除いて彼女は完全に動かなくなった。

「貴女が紅茶を用意した時、私は後から霧を出しました。
 薬を排したのはその時です。
 私は抜き去った薬の効果を調べ、紅茶に入っていた薬を
 効果の薄いものに替えました。そして……
 貴女の紅茶に在ったその薬は、今ここに」

セイズマリーはザスキアの紅茶に掌をかざして薬を落とす。

「……では、改めていただきましょうか」

セイズマリーはその紅茶を飲んだ。
ザスキア自身が服用する予定だった薬ならば
よもや害は少ないはずだと踏んだのだ。
すると、下腹が炎の如く熱くなり、子を為す穴から異形の肉塊が生じた。
驢馬に似た大きさと先端の形状に加えて幹部には猫のものに似て無数の突起がある。

「なるほど、この凶悪な形状……これなら我らも
 ……女性同士でも子を為せるという訳、ですか」

ザスキアを尻目にセイズマリーは己の股より生え出でた巨塊を興味深げにしごく。
それは細く小さな彼女の手の中で、あの忌まわしい太陽の如き禍々しさを
浅ましい痴臭と共に放っている。
その時、ザスキアは白い靄に包まれた。
すると衣服が糖のように溶け消えて、白く華奢な体が晒される。
乙女のままに歳を重ねて叙勲した彼女の肢体はなだらかであり
異形の精槍の前には儚く見えた。

「……卿にも教えておきましょう。私もまた、知識の虜なのだと……」

そう言ってセイズマリーは無抵抗のザスキアに組み敷き、未踏の花園を無惨に散らした。
夜獣卿の如き荒々しさが、冒涜卿を翻弄する。
年の離れた友を苛めながら、セイズマリーはにこやかに微笑み
充足されていく知識と法悦を堪能する。
ザスキアの慎ましい乳房に、彼女の白掌がそっと重なる。