「……」

すると、彼女は少し怪訝な目をしてすぐ掌を離し、大袈裟に動いて攻め立てた。
抵抗する力を奪われたままのザスキアは、ただただ書斎公の狼藉を受けるのみである。
二人の女の吐息は薄暗い無限書庫に響き、やがてはそれすらも闇に溶けていく。
民衆の男にしか知り得ない快感の奔流がセイズマリー公の内に渦巻き、氾濫していく。
やがて白き閃光が瞬き、それと共に罪深き蜜が夥しい量でザスキア卿の内に溢れ出た。
それは別の生き物の如く跳ね、疼き、不浄の悦びを二人にもたらしていく。
二人の白肌に眩い玉汗が滲み、火照った身体を潤している。
永遠とも思われる雄々しく浅ましく愛しい律動の果てに
それは徐々に姿を根元に潜り込ませ、二人が折り重なって痴悦に微睡む頃には完全に消滅していた。

「……なるほど、発想はともかくとしてこの手法はいささか品格に欠けますね。
 男はともかく女騎士は賛同しかねるに違いありません」

陸に上げられた魚のように痙攣し、痴悦と苦痛の狭間に燻るザスキアを尻目に
セイズマリー公は裸身に花弁を散らした。
花弁は一つ一つが繋がり合い、花を刺繍された無縫の衣となって
火照った彼女の体を覆う。

「多少は気が紛れました。
 卿の体に今夜の結果が出ましたら、また知らせて欲しいものです」

彼女はザスキアに暗色のローブのみを与えた。
冒涜卿の周りに現れた魔霧は、みすぼらしい彼女の姿を隠し、包み込んだまま消えていく。
非情にも彼女をあの姿のまま城外へと放逐した書斎公は
また椅子に腰を掛けて古書を読み始めた。