「私―…思ってました。あんな状態は続かない。いずれ救世主(メシア)が現れてこの村を救ってくださると。そしてシオン様は現われました」
ミリアさんはゆっくりと自分の身の上を話してくれた。
お母さんがクライアントに逆らって殺されたこと、村長であるお父さんはミリアさんまで失うことを恐れてクライアントと取引したこと。
十五歳になった友達はみんな館で毎日有力者の相手をしていたこと、その有力者にミリアさんのお父さんもいたこと、友達が話してくれるまでミリアさんはそれらのことを知らなかったこと。
それでも、お父さんはミリアさんを大事にしていたのだろう。ミリアさんだけはお父さんの計らいで社交界を免れていた。
そのことを聞いて、ボクも腑に落ちた。乱交が当たり前のあの館でどうしてミリアさんが――
「そんな時シオン様の噂を聞いたんです。たった一人でクライアントと戦っている魔狩人がいると――……まだ若く従者を従えた吸血鬼(ヴァンパイア)でクライアントを憎んでいるんだと」
ミリアさんはそれでボクのことを調べたという。
「なぜ戦うのか、どんな人なのか、どんな風に話すのか、瞳の色・髪の色、背格好はって……気がつけば私いつもシオン様のことばかり考えてた」
そうか。それでボクのことを――
「そして今回の話を耳にしてどうしてもお会いしたくて。この館に誘い込むことが罠であることを伝え――……この村を救っていただけるために。何よりシオン様にお会いしたくて私は初めて女としてあの館へ―…」
ミリアさんは少し口ごもった。そのときに嫌なことがあったのだろうか。
「生まれて初めて人前で肌をさらしシオン様の貢ぎ物として――」
有力者たちに初めて裸を見られたことを思い出したのかもしれない。
「……現実のシオン様は私が想像してたよりずっとステキでした」
そうはっきり言われるとボクも恥ずかしい。でもミリアさんがそう言ってくれるのはすごく嬉しい。
「でもお二人と愛し合うシオン様を見ていて、胸の奥にしまっていた思いをおさえられなくて私――あんな……」
そう言うと、ミリアさんは黙ってしまった。
ボクはその理由がわかっていた。そう昨日、ミリアさんと初めて会ったあの日―