「私―…私、2年間―…ずっとお待ちしていました……」
待ってた?ボクを?2年も?
何がミリアさんにあったのか、ボクにはわからなかった。けど、でも。
「初めは―…この村を開放して下さる方として……でも…今だけは一人の男性として…」
ボクはミリアさんを誤解していた。洗脳か何かされて進んでクライアントに協力しているのかと思っていたけど違っていた。
ミリアさんは苦しんでいたのだ。ずっと。たぶん、ボクが思っている以上に。
そんな女(ひと)がボクと結ばれたいと言っているのだ。でも。
「ボクは…」
「存じています。シオン様がヴァンパイアであられることは」
ボクが純粋な人間でないことを知っていて、人の血を吸う存在であることを知っていて、なおボクと?
嬉しかった。それほどまでにボクのことを想ってくれているなんて。
どうしてボクのことを知っていたのか、どうしてボクを慕ってくれるようになったのか、わからないことはまだ多かったけれど、ボクの心の内は決まっていた。
「私の血でよければいくらでも飲んでください―…私、生娘だから喜んでいただけると思います。そしてこの村をクライアントから解放してください。シオン様」
「クライアントと村を裏切ることになるよ。それでも」
言葉とは裏腹にボクはミリアさんの手を取った。
「あっ」
嬉しそうな、甲高い声だった。ミリアさんの肩を抱き、ボクの方へと引き寄せる。
細い肩がボクの腕の中で少し震えていた。
「シオン様の力になれるのなら私はどうなってもかまいません…でも……今だけはシオン様……」
長い睫の下から大粒の清らかなしずくが玉となってなめらかな頬を流れ落ち、少し尖った顎を濡らしている。
ボクは胸の高鳴りを抑えることができないでいた。
「私を女にしてください……」
真紅のバラの蕾のような唇が、声を絞り出すように言った。
いつものボクなら断っていた願いだけれど、このときは違った。ボクは心の底からミリアさんの願いを叶えたい、と思った。
ずっと、苦しんできたんだ。この女(ひと)は。
助けてあげたい。
セックスが女性を救うきっかけになることはボクもよく知っている。
レインやヘレンが知ったらいい気分にはならないだろう。でも、気を失っている今なら。
二人の中に出したばかりだったけど、ボクの下半身には血が集まりだしていた。