「さて今日のお勉強はこれぐらいかしら。」先生がそう言ったので、シイナはホッとしたようでした。ところがその時、誰かが質問しました。
「先生、体の中のはらわたとかにも英語の名前があるのですか?」「いい質問ですね。もちろん内臓にも英語の名前があります。そうですね、今日は特別に授業を延長して、内臓の英単語も勉強しましょうか?」
みんながワーッ!と歓声を上げます。「それじゃ、今から山谷さんを解剖しましょう。」
 シイナは青くなって逃げようとしましたが、すぐに先生に捕まってしまいました。先生は暴れるシイナの両腕をしっかりつかみながら叫びました。
「暴れないで!今さら往生際が悪いですよ!誰か体育倉庫へ行って、ロープとビニールシートを持って来て!それから家庭科教室から包丁と手拭も!」何人かの生徒が走って行きました。

 結局、シイナは手足を大きく拡げて黒板の前に縛り付けられてしまいました。口には手拭で猿轡がされました。これでもうシイナは叫ぶ事もできません。ただわずかに身をよじるだけです。
足下にはビニールシートが広げられました。こうしておかないと教室の床が汚れてしまいますものね。
 先生が包丁を持ってシイナに近付きます。生徒たちは怖いもの見たさでしょうか、期待のこもった眼差しで見つめています。シイナが激しく首を振ります。涙が飛び散ります。
先生はかまわずシイナのみぞおちに包丁を突き立てます。シイナの顔が苦痛に歪み、体がビクンと動きました。たちまち血があふれ出します。「血はbloodですね。」
先生はそのままシイナのお腹を切り開いていきます。「今切っている皮膚がskin、肉はfleshですが、筋肉という意味ではmuscleですね。meatは食用の肉の事です。
でもこの後山谷さんは給食のお肉にするぐらいしか使い道がありませんから、meatでも正解かもしれませんね。」
 シイナのお腹は、女の子の割目まで切り開かれてしまいました。先生が切り口を押し広げます。シイナの腸がこぼれ落ちます。
「腸はbowelsと言います。はらわたの意味でも使いますが、内臓は正式にはviscusと言います。複数形ならvisceraですね。小腸はsmall bowels、大腸はlarge bowelsです。」
先生がシイナのお腹の中を探ります。「これが胃ですね。Stomachです。上の方にあるこれが肝臓、liver、要するにレバーですね。」
 説明しながら先生はシイナの内臓をどんどん切り出していきます。「これが膵臓、pancreasです。この背中の方にあるのが腎臓、kidneyと言います。」
今度は先生は下の方、シイナの股のあたりを探っていきます。「これが膀胱、bladderです。これは子宮、uterus、そしてこれが卵巣、ovariumです。このあたりはあなたたちにはまだ難しいかな?」
 お腹の中を空っぽにされたシイナはもう意識がないようで、頭も力無く下がっています。でも時々体がピクピクと動くので、まだ完全には死んではいないようです。
 「次は胸ね。」先生が今度はシイナの胸の皮を切っていきます。シイナの肋骨が見えてきました。「骨はbone、あばら骨、肋骨はribですね。」
 その後、先生は技能員室から借りてこさせたワイヤカッターで、苦労してシイナの肋骨を切り取りました。シイナの肺と心臓が露出しました。
「肺はlungです。アクアラングのラングですね。それから心臓はもちろんheartです。」
 心臓と肺を切り取られて、シイナは完全に死んでしまったようです。全く動かなくなってしまいました。
「山谷さんは死んでしまったようですね。死はdeathですね。あっ、今のは洒落じゃないですよ。死体はcorpseと言います。後は、さっき言ったとおり給食の材料にしてもらうしかないですね。
本当は頭の中、脳はbrainですね、も見たかったのですが、今日は道具がないのでここまでにしましょう。」
 
 みんなが拍手をします。今日は本当に勉強になったようです。でもみんなの拍手はもうシイナには聞こえないのです。

(おわり)