「…て解決する策もないのに、なに回してるんだ?!俺のバカ!」
しかし時既に遅し。無情にまたゴトン!と出てくるカプセル玉。

「ん?…これ何も入ってないぞ。まさか不良品か?一体…」

佐藤は普通に蓋を開ける。

「今度は…服は、そのままか。ほっ。ま、良かった…か?昨日仕事に行く……ん?
んん?あー、あー?……」

声が女性化していた。

(ちょ?!ま、マジかよ!?)

佐藤はこれで、本人が意識して振る舞う限りには、もう完璧な「女性」として仕上がってしまった。
「先に会社に電話はしておいて良かった。この声じゃ、元の男の佐藤だって
信じちゃくれなかっただろうし…」
佐藤は、改めて今の自分の姿を見てみる。服の上下は男物。履き物は革靴。
(あれ?コレって何か変?…)
よく見れば、誰かが無理矢理に変装させた、みたいな違和感がある姿だと気づかされた。

「昨日、家の鏡で見た自分の顔は…うん、まあ…悪くはない、よな?」

それでも強引にどこか納得できてしまっていたのは、それなりに自分の顔は
「美人」の類いであった事が大きいように思う、と佐藤は結論した。

(こ、この体ってどこまで「女」になってるんだろうか?…)

佐藤もそれなりに知識としては女性の裸、生態を聞きかじってはいた。
それ故に特に急いで何かしないといけない事がなくなると同時に、佐藤の中の人の
「男」的な意識が、どうしても下の事情、「性」に関心を持たずにはいられなくなった―

「…前に一度だけ、確認で胸を揉んだよな?」
本当の乳房かを確かめる為に。
「今度は…えい!」


(ッ?!!………ッ!!)
佐藤の全身に、言い知れぬ衝撃が走る。
「ちょっと、これマジで…洒落になってないぞ」
絶頂だとか、快感だとかまではいかなかったが、佐藤の自身の自我意識が揺らぐ、
何かに抵抗する意思がなくなる程度には十分達していた。