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 「…う……ん?」
 佐々木は、ラブホのベッドの上で目を覚ました。
 (どうしてこうなった――?!!) 思わず叫びそうになる衝動を何とか飲み込んで、できる限り冷静に周囲の状況を確認、
この部屋に来るまでの経緯を思い出していた。
 既に自身の格好は、上下下着のみ、清々しいまでに「これからHしますよ」な姿だった。
 (…ある意味ここまで来ると、邪さへの憤りより、その行動力に敬服すら覚えるな。―いや、単に男の性欲が為せる業、か?)
 「…私を酔い潰して、いきなりラブホへ閉じ込めるなんてヒドい人」
 ベッドで布団を頭から被り、横になったまま、佐々木は部屋に入ってきた野獣(安中)に
そう語りかける。
 「あんな無防備に酒をガバ飲みした挙げ句自滅して、倒れた女の介抱代、としては安いものだと思いますが」
 (…自分、酒に強くはない自覚はあったんだ。反省)
 「―佐々木、さん?」
 「?!」
 不意に安中に名前で呼ばれた佐々木は、その呼び掛けに戦慄した。
 「貴女の持ち物に、佐々木さんの運転免許やらポイントカードやらを見つけましたよ」
 (やっべ…正体バレたか?―)
 と、思いきや。

 「あなたは―もしかして佐々木さんの親戚か何かの方ですか?」
 (ま…普通は女体化を信じる方があり得ない、か)
 「違わい!」
 「?!」
 あまりにも脱力する展開に、佐々木はとうとう自分から正体を明かす行動に出た。
 (そして奴の金的蹴り上げて、この部屋からとっととおサラバ、だ)
 そして佐々木のその計画は、実行不可能と大誤算に気づいたのはその数十秒後だった。