迷宮の出入口から軽快な足音が聞こえて来る。出て来たのは二人の忍者の男女。いつものようにリルガミン市街へと帰っていく。
二人とも何も着てないのは変わらないが、今回はその背に背嚢を、しかもパンパンに詰まったいかにも重そうなのを担いでいた。
少年の、女性と見間違えそうな中性的な容貌は、口元にひっそりと笑みを浮かべるだけに留まっている。
しかし端麗な容姿に反した股間の堅いペニスは、少年の喜びを代弁するように、ビクンビクンと嬉しそうに震え、すれ違う女性達の頬を赤く染めた。
一方少女の方は、嬉しさを隠そうともせずに満面の笑みをふり撒き、歓喜を全身で表すかのように軽快なステップで歩を進める。
その際にたわわな乳房が上下にぷるるんと揺れて、街ゆく人々、主に男性達に凝視されたのは言うまでもない。
そんな二人をひっそりと見つめる影があった。



「うふふっ。今日は大量だったねー。これだけあれば今回の返済金を払い切って、次の分も賄い切れるかも!」
今回の探索で大当たりを引き、多くのレアアイテムやお金を回収できたのがよっぽど嬉しかったのか、彼女は太陽用のような笑顔を僕に向ける。
勢いよく身体ごとひねったのもあり、胸元のおっぱいも、男を惹き寄せるような揺れを披露し、思わず息を呑みそうになりつつ平静を保とうとする。
「そうだね。これでかなり余裕ができたし、たまには休みをとってどこかに遊びに行こうか?」
「いいね! じゃあ思い切ってリルガミンの外に旅行に行ってみようよ」
僕と彼女は意気揚々と、返済金を払った後の予定を、楽しげに語り合った。
やがて彼女のお姉ちゃんの経営する、ギルガメッシュの酒場に到着するんだけど……まさかあんな事に巻き込まれるなんて思ってもみなかった。



「ふむふむ………………………今回は文句のつけようがないくらい、稼ぐことができたわねえ」
お姉ちゃんは僕達が背負っていた背嚢を受け取って中身を確認すると、満足気に頷きながらにこやかに微笑んだ。
「と、いう事はお姉ちゃん!」
「ええ、これだけの量なら返済金2回分に達するわ。よく頑張ったわね」
姉の労いの言葉に喜ぶ彼女だが、次の言葉でその喜びも立ち消えた。
「そういえばあなた達に頼みたい事があるのだけど」
「頼みたい事?それって「マスター!! 先輩ー!! 会いたかったあああああ!!!!」」
僕の言葉を遮って突然誰かが抱きついてきたのだ。曲がりながりにも忍者である僕の隙を突いて抱きつくなんて芸当が出来るのは……。
「あ、あなたはっ、後輩っ!?」
僕より先に彼女が抱き付いてきた影の正体を見破る。
黒装束で身を包むも、抱きつかれた時に感じた胸の柔らかな感触や身体つきから、性別は女性だとわかる。
そして顔を隠す忍び頭巾からはみ出ている長い、エルフの耳。次の瞬間頭巾を脱いで露わになった素顔は僕の予想通りだった。
「はいっ……マスターと先輩のっ、後輩ですっ! ずっと……ずっとお会いしとうございました!!」



再開の歓喜に震え涙を流すエルフの少女を落ち着かせて、お姉ちゃんが用意してくれたお茶を飲みながら、僕と彼女は話を聞く事にした。
僕をマスター、彼女を先輩と慕うのから察せると思うが、後輩と僕達は初対面ではない。
まだ僕達が駆け足で忍者になり、全裸で戦えるようになったばかりの頃。
駆け出しの冒険者だった後輩が……悪漢達に取り囲まれ、衣服を破かれ輪姦されそうになっていたのを見かけたのだ。
僕と彼女は悪漢達を蹴散らしたが、輪姦寸前の所に僕の裸。気が昂ぶって勃起した肉棒を直視したせいで……失神してしまったのである。
それからが大変で、後輩は裸で戦う忍者に会うなんて僕達が初めてだったせいか、随分と苦手意識を持たれてしまったのだ。
同じ女性である彼女の仲介のお陰でなんとかなったが、このまま放ってもおけないので冒険者のノウハウを教える事になる。
やがて共に過ごす日々を重ねるにつれ、後輩は裸の忍者へ苦手意識を抱く事はなくなっていった。
むしろ装備を奪われ輪姦されかけた経験から、全裸でも高レベルの戦闘を可能とする忍者に憧れを抱き始めたのだ。
その頃から僕に対する視線が熱を帯びたものに変わっていった……。やがてとうとう僕をマスターと慕うようになる程に。
「むぅ〜〜〜っ……。なんで私の呼び方は先輩のままで、あの人だけマスターなのよ」
彼女が嫉妬に満ちた視線で後輩を睨む事があったが、あんな体験をしたからか、妙な所で度胸の着いたエルフの少女はどこ吹く風。