「あらそう?熱でもあるのかしらね…」
 (アランに見抜かれるほど顔が赤いのか、今の私。迂闊だわ)
 「あまり無理すんなよ、メアリ。まあジオルドの兄貴にゃ最近は俺も少し辟易してる」

 「へ、へえ〜あなたにも、彼のカタリナ様への執着心が異常なものだと見えるようになったの?」
「度が過ぎてるな、と思うようにはなったな」
 (よしよし。その調子よ!)
 「過保護過ぎとでもいうのか、まあ言葉では説明しずらいんだが…」
 「私も、アランにそこまで流麗な説明を期待していませんけど」
 「ひでえな、オイ」
 しかし苦笑するアラン。
 (あ、あれ?バカにしやがって!と、なる流れじゃ?―)
 「確かに、俺には何かをうまく説明する才能はねえしな。人には向き不向きがある、
ってあいつにも言われたし」

 アランが知らず、部屋の虚空を見上げる。そこにセリフの中の「あいつ」の顔が浮かんでるとばかりに。
 その「あいつ」とは誰か?
 (言わずもがな、ですわね)

 「アランは、カタリナ様をどう思っているの?」
 「えらい直球だな。名前は出さなかったのに」
 (ふふ。私の目を出し抜こうだなんて、まだまだ甘いわアラン)
 「そうだな…」
 しかし、メアリはその質問をしてしまった事を後悔する事になった。
 「なんだか、やたら騒がしくて落ち着きのない猿みたいなとこがあるんだが―
一緒にいると、何故だか不思議と落ち着くんだよ」

 メアリは戦慄した。
 (惹かれ、はじめている…)
 そしてその意識を、再度違う方向へと逸らすように考えた時だった。
 メアリの心の中の、イタズラな小悪魔が顔を出したのは。

 「アランさま」
「ん?なんだよ、急に改まって…」

 「私と一緒だと、落ち着きませんか?」