「―意外ね。貴方は人間嫌いだと思っていたわ」
勿論嫌いだ。およそ多くの人間が同胞を憂いるように、オレは連中を憎み続ける。この悪心は、弱さを拒む正義から生まれたもの。敵対者として崇拝された以上、その機能を果たし続ける。
それは永遠に変わらない。
悪は生み出されるものではない。作り出されるものだ。確かに弱い人間はいる。だが
種の中であぶれ出す弱者はどのような生態系にも存在する。一つの命の悪など、自然界においてさしたる影響はない。
人間が最強で最低なのは、その機構自体が悪という事。外道を育み、火を与える人間の情。指導者とは特別では
ない何者かであり、それになり損ねた数多の無関心が、頂点を歪めていく。
ただひたすらに生を謳歌する生命。神さまなんてものまで持ち出して繁栄を肯定し、自らの悪性を拭ぎ払う。
この世全ての悪などと笑わせる。それは人間の総称だ。我は人間より生まれしもの。
人間である限り、君はあらゆる悪を再現可能だ。
醜悪な個人、醜悪な社会、醜悪な概念。言い逃れはできない。同胞からして同胞を悪と見なせる生き物は、そも在り方を間違えている。
ああ、けれど―――
「―それでも、命には価値がある。悪を成す生き物でも。人間に価値がなくても、今まで
積み上げてきた歴史には意味がある。いつまでも間違えたままでも―
その手で何かが出来る以上、必ず、救えるものがあるだろう」
彼方(ほし)を目指す旅のようだ。
遠い遠いソラを目指して、長い長い階段を上っていく。