「ルスランの戦力増強が急激だからね。トラキアにはこれからも戦力の要になってもらわなくては困る。艦載機戦力の増強は必須だよ。
 いくらマコト君が一騎当千の強者でも、彼女一人にすべてを負わせるわけにもいかない。さっきの映像のゲルググが出てきたときは、君に押さえてもらいたい――その露払いが出来る態勢ぐらいは整えさせてもらいたいのだ」
「やめてください、閣下。私はエースですらないんですよ」
 マコトが呆れたように肩を竦めてみせると、隣でリンが笑った。
「マコト、どしたの。今日、なんかずいぶん疲れてない?」
「そりゃまあ、なにぶん連戦でしたからね――実は私、か弱い乙女なもので」
「うわべの撃墜数に関係なく、間違いなく君は我々の切り札の一人だ。だからこそ、今は休んでもらわなくては困る。特に君はP−04を離れてから、もう半年も大切な人に会えていないのだろう?
 それは駄目だ。私も責任を痛感している。混乱が重なった結果とはいえ、人として許されない」
 にこやかに微笑むと、ソギルはリドリーに視線を移した。
「だから、フランクス大尉。マコト・ハヤカワ准尉に、今日から――いや、今すぐ10日間の有給休暇を付与したまえ。
 P−04基地司令として命ずる。これから退艦した後は別命あるまで、マコト・ハヤカワ准尉のトラキアへの接触を禁ずる。雑事に煩わされることなく一私人として、純粋な休暇を楽しみたまえ」
「…………。……は?」
 開いた口が塞がらなくなったマコトの横顔を見るのはいつ以来だろうな、とリドリー・フランクス大尉はぼんやりと思った。