>>400
「あの時、あの島でみんなが絶望していたわ」
「まあ…な」
(みっともなかったよな、俺は)

「そんな時、あなたは生き残る事に必死になれていた」
「そりゃお前の方が、だろ?」

「だからあなたにあの時犯されても、文句を言う気はなかったわ」
「――!」
里奈の瞳に、揺らぐ気配は全く無かった。
(やっぱり、あの時その「覚悟」はあったんだな)

「そして、決して哀れみや同情であなたを彼氏に、なんて言った気はないわ」
「嘘、だからな」
「そうよ。口からでまかせ、生き延びさせたくてね」
里奈に悪びれた気配も無い。
「……」
「だから」
里奈は、比嘉のベッドの上に乗り上がり。
「お、おい?!俺怪我人なん―」
「嘘でなく、本当の恋人になってみない?私の」
比嘉は息を飲む。
わずか、骨折していた足の部分に感じたその痛みすら忘れて。
「みんなあの島で死んでいったわ…いろんな人の夢や希望を打ち砕かれて、ね」
そして覆い被さるようにして、その顔を近づけて。
「悔しいじゃない?あの島を開発してた連中に、自分たちの命運をイタズラに弄ばれてただけ、それでお終いだなんて」

キスをした後、里奈は言った。
「復讐、してやりたいの」
「誰に?…て、ああそういう事か」
「氷川さんに聞いたわ。あなたも、利用されたんだって、ね」
「……お前をレイプまでしかけた言い訳にはならん」

くす、と里奈は笑った。
「あの時の顔の痣、そういう理由だったのね」
「その「対価」には及ばないだろうけどさ」

「そうね、確かに釣り合わないわね」
「だろ?」
「バカ。逆な意味でよ。今私キスまでしたの、無意味にしたいの?…」

比嘉は「釣り合わない」の意味を理解した。

「…復讐、しようか」
「ええ。これから私たち二人で、あの島で夢を叶えられずに終わった人たちの分まで
幸せになる、その復讐を!」


――Fin.