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「いたぞ!!」
「「?!」」
里奈と男の二人が声のした方を見下ろすと。

「あ!私たちを追いかけてた暴徒の人たちだ!」
「…やれやれ、どうやらこっちの事情を真面目に聞いてくれそうにゃ見えんな」
男が自分の額に手のひらをあて、呆れたような仕草をする。

「私たちが感じてた理不尽な恐怖、「今の貴方」は理解できるでしょ?」
「ああ。嫌ってくらい、な」
(あれが「さっきまでの俺」だったんだな……まるで「獣」だ)

しかし。

「となると、とにもかくにも屋上へ急がにゃな!」
「そ、そうだけど?!…あっ!わあ!」
どがががッ!!…

「こりゃまたおあつらえ向きだな、瓦礫分断」
「な、何を落ち着き払ってるのよ?!」
里奈は、男の態度がいやに冷静なのが不安だった。
「どっちみち、あの手勢の追っ手を振り切るなら、二手に別れるのは常套さ」

「…まさか死ぬ気だ、とか言わないでよ?」
「いや言うね」
「ば、バカッ!?冗談もたいがいに!…」

里奈はあっさりと死を肯定した男を叱ろうとしたが、その続きを聞いて
この場から離れる事を決意した。

「死ぬ気で、奴等を説得したい。そう「アンタが俺にがしたように」さ」

(ほんとにバカ。カッコつけ過ぎ、だってのよ……)

この島から生き延びる為には、とにかく急がなければならないとした状況下で
里奈のその足取りは重かった―