これは。
公があの「無人世界」へ来る前の、ある日の出来事。
(恐らく―)
「なあ、タマ?」
「うんにゃ?」
(予感だけど。もう彼女に会えるのはこれが最期になる、そんな気がして)
幼馴染みのタマ(本名は玉城 麻衣子/たまき まいこ)にこう質問していた。
【世界最後の日は何をする?】
特に、いつも手を焼かされてるからその仕返し的な意地悪してやりたい、
とかの気持ちなぞ一切なくて。純粋な、公自身のタマへの疑問、好奇心で聞いただけだった。
或いは、公自身がタマ、相手の返答に「死にたくないよ」的弱音を期待し、
それに自身が癒されたいとした深層心理的働きがあったのかもしれない、とは
後から思った事だが。
「う〜…なぞなぞ?」
「ん、割りと真面目に」
しばらく考えた後、タマはこう言った。
【普通に一日を過ごす】と。
公は、その返答に瞬間呆けた。
「お、お前はそれで…いいのか?」
「うん。だって、他にどうしようもないじゃん?その日で終わるんでしょ?世界」
公は、タマにはこの設問の裏に隠された世界の危機的な状況への想像が追い付いていない
だけなんだろう、と思ったりもしたが。
(……存外、真理かもな)
結局、人が一人できる事なんて何時如何なる時も、そんなもんじゃないのか?と
タマのその返答と言葉に、強く打ちのめされている自分を見出だしていた。