「ネット掲示板への投稿に、反応なんか不要だよ」

彩花がノートにペンを走らせていると、悠真が突然口を開いた。
放課後の文芸部部室は、三年生の佐藤悠真と一年生の田中彩花の二人だけが残っていた。

彩花は目を丸くして、先輩の言葉に耳を傾けた。
「たとえば、しかるべき投稿サイトなら、ちゃんと読者がいて、作品を発表すればレビューや評価がもらえる仕組みがあるだろ?
 自分の作品がどれだけ受け入れられるか、改善の余地があるか、ちゃんとフィードバックが得られる。
 でも、ネット掲示板にはそんな仕組みが無い」
 ネット掲示板への小説投稿なんて、投稿者にとって没アイデアの一方的な排泄行為に等しいんだよ」

彩花は感心したように頷いた。
「なるほど……そもそもの存在意義としてそうであり、それは投稿者たちの前提条件である、と」
悠真は少し満足そうに話を続けた。
「そう、ああいう場所に書き込む動機は、ただ没アイデアを吐き出して、スッキリしたいだけなんだ。
 ちゃんとした創作は、ネット掲示板なんかじゃなくて、しかるべき投稿サイトで発表してるよ。
 小説投稿サイトならちゃんとした読者がいて、ランキングがあり、評価が貰える仕組みがある。
 そこなら、自分の作品をちゃんと読者に届けられる訳で、相応しい場所を使い分けるのが大事なんだよ。
 ネット掲示板に期待してるものって、読者の反応とかじゃない。ただの排泄場所の提供でしかないんだ」

彩花は目を輝かせて、先輩の言葉に深く頷いた。
「そうですね! 確かに、ネット掲示板なんてアイデアをただ吐き出す気軽に書き込めるだけが取り柄の場所ですよね!」
「だろ?」悠真は少し皮肉げに笑った。
「ネット掲示板みたいな場所に投稿する人たちは、最初から読者の反応なんて気にしてないんだ。
 実際に『こんなん書いてみたわ』みたいな感じで投げやりだろ?
 掲示板なんて最初から、せいぜいその程度の扱いでしかないんだよ」

彩花は深く頷き、目を輝かせた。
「そうですよね! 先輩の仰る通りです!」
「その意気だよ、田中」悠真は満足そうに頷いた。
「お前なら、きっと良い使い分けをするだろう」

「ありがとうございます、先輩! 私、もっと頑張ります!」
彩花は頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。
「それはそうと……ネット掲示板への創作的排泄だけでなく、私の肉体で先輩の欲望を排泄してみませんか?」
夕陽が部室をさらに深いオレンジ色に染め、二人の時間は激しさを増して続いた。