第一章:深夜のスクリーンと心の波
深夜の部屋に、ディスプレイの青白い光が揺れている。
難波恭也、14歳、中学二年。
ベッドに寝転がりながら、ノートパソコンの画面に映るYouTubeの動画をぼんやりと眺めていた。
イヤホンから流れる音が、静かな部屋に響く。
動画は、色とりどりの人々が集まり、笑顔で声を揃えるシーンで始まった。
「Biracial! Lives! Matter!」
日本人、西洋人、アフリカ系、アジア系――さまざまな顔が画面に映る。
みんなが一つのスローガンを叫び、笑い合い、手を振っている。
恭也は少しだけ眉を寄せた。
この動画、国連が推し進めている「Biracial Lives Matter」運動のコマーシャルだ。
ナレーションが、低く落ち着いた声で流れ始める。
『異種交流は大切です。
「Biracial Lives Matter」運動は、異種交流と少数民族保護を目的としたプロジェクトです』
恭也の頭に、プロジェクトの概要がぼんやりと浮かぶ。
単一民族の割合が高い先進国が、少数民族を移民として受け入れる。
それがこの運動の骨子だ。
受け入れた少数民族は、特別に設けられた「租界」で生活する。
租界は自治区みたいなもので、少数民族の出身国の法律が適用されるらしい。
その見返りに、先進国は少数民族の出身国に租借地を得る。
日本もその一環で、東京湾の埋立地を租界として提供し、
西アフリカの小国ガニアからファルキナ族を受け入れている。
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