ドレスでお散歩を楽しんできました
自宅から少し離れたところにある公園まで行き、人目のつかない遊歩道を散策していました
ピンクのドレスに薄紅色のショール、赤いハイヒールで、金髪のウィッグをつけていきました
気分はまさに、お忍びで夜の森を見てまわるお姫様
小石に蹴躓いたときには思わず「きゃっ」と女の子声が出てしまいました

しばらく歩くと屋根のある休憩所が見えたので、中のベンチで休もうと思いました
しかし休憩所に一歩足を踏み入れると、すでに先客の壮年の方がいることに気づきました
普段なら回れ右をして逃げだすのですが、ハイヒールで歩き疲れていたためままなりません
それに、かつてこのスレでも公園で老人と仲良くなった方がいたことを思い出しました
なので勇気を振り絞り、壮年の方のお隣に腰掛けました

休憩所の電灯は切れていたので、お互いに顔は分からないままでした
そんな折りに、相手から「一人ですか?」と声をかけられました
反射的に「ええ」と女の子声で返すと、「ゆっくりしていきなさい」と優しい声で促されました
ぽつりぽつり話していくうちに、相手の方は日課の散歩がてらよく公園を歩くこと、たまにドレス姿の人を見かけること、一度ドレスの人と話してみたかったことなどを知りました
あえて性別に触れないでいてくれたのは、優しさゆえのものだったのでしょう
私が「公園をドレスで歩くのが好き」と言っても、「よくお似合いです」とだけ返されました
次第にふたりの距離は詰められてゆき、「来なさい」の一言で相手の方に頭を預ける形になりました
頭を撫でられたり、肩に手を回されましたりしました
私はハイヒールを相手の足に絡めたり、相手のたばこくさい服に顔をうずめたりしていました

やがて私は「もうじきお暇しないと」と言って立ち上がりました
暗がりの中でドレスの衣擦れの音がやむと、「送っていってあげましょうか?」と声をかけてくれました
私はドレスの裾をつまんで、「いえ、大丈夫ですわ」お辞儀をしました
「またいつでも来なさい」と言われたので「ええ」とだけ返し、ドレスの裾を翻して休憩所を去りました
ハイヒールの足音を響かせつつ、私は逢瀬から帰ることにしました

とても素敵な夜でした