「優子ちゃ〜ん、KO!!」
「倒せるよ!」
地元でのKO防衛を期待するファンからの声が黒木の耳に聞こえる。
「(KOで決めてやる!)」
黒木が安藤に攻めかかる。速い右ジャブが顔を弾き、たじろぐ安藤。
「(いける!一気に決めてやる!)」
黒木は畳み掛けるように攻めた。右ジャブで仰け反る安藤、辛うじて左ストレートはかわしたが、返しの右フックを喰らいよろけてしまった。
「(これで倒れろ!)」
黒木が左ストレートのモーションに入る。
「ゆ、優子、いかん!!」
黒木のセコンドが叫んだが…。
いつもより遥かに大振りで、ガードが完全に疎かになっていた。
眼光鋭い安藤の眼が捉えたのは…。無防備の黒木のボディだった!
「(腹がノーガードや!!)」
「ドスッッッ〜〜〜!!」
黒木の左ストレートより一瞬早く、安藤の右ボディストレートが黒木の腹部に深々とめり込んでいた。カウンターになった一撃は恐るべき威力のパンチとなった!
安藤の青いグローブが黒木の腹筋を突き破りストマックを「グシャッッ!」と押し潰した。
「!!ウゥ〜ウゲェェェッ〜!!ッ〜!!」
堪らずねっとりとしたマウスピースを口から半分以上はみ出させた黒木。
口元から唾液が垂れ流し、思わずグローブで腹を押さえてしまった黒木。
安藤が不敵な笑みを浮かべた。
「(腹押さえてる場合ちゃうで!)」
安藤の右フックが唸りをあげて黒木の顎に向かっていった。