「皆さんに報告があります。さあ、入って」
 部屋の外で暫く待機していた私は、呼ばれて部屋に入った。
 「今日から彼女にテスターとしてこのクラブで働いてもらいます。長らくテスターが不在でしたが、これでクラブをより充実させることができるでしょう」
 「えっと・・・沙織です。よろしくお願いします・・・」
 事前に偽名でも良いと千晶さんに言われてたけど、思いつかず結局本名を言ってしまった。
 パチパチパチパチッ・・・
 スタッフの人達の拍手を聞き、少しだけ安心した。
 「ミーティングは、ここまで。梓さん、彼女を案内してあげて」
 「分かりました」
 ミーティングが終わり、次々とスタッフの人達が部屋を出ていく。
 「これから宜しく」
 「頑張ってね」
  全てのスタッフの人達から私は声をかけられた。
 「それじゃあ、行きましょうか」
 最後に、梓さんが私に声をかけてきた。梓さんの後に続いて、部屋を出るとエレベーターに乗り込んだ。
 「あなた、テスターになったんだ。なんとなくそんな気はしてたんだけど・・・」
 「そうなんですか・・!」
 「間違いなくクラブにはプラスなことだから、頑張ってね」
 「あの・・・梓さんもこのクラブの元会員なんですよね。どれぐらい、ここに通ってるんですか?」
 私は、気になっていたことを質問した。
 「それはヒ・ミ・ツ。プライベートなことは言わない、聞かないというのがここのルールよ」
 そんな会話をしているうちに、エレベーターが停止した。
 「このフロアーがあなたの働く場所よ。テスターが本業だから、ここは仮の職場ということになるかな」
 梓さんが、そう言った。