主役なだけあって49番さんの台詞は私のより長くて、それでいて予め覚えるかその場で聞き取るかしきゃいけない箇所が多い。
私は最悪、井上主人の最後の一言だけ聞き取ればあとは繰り返しでなんとかなるけど、49番さんの方はそうはいかない。

そんな台詞を大勢に、地上の感覚ならありえない枷だらけの姿と共に見られながらも、
なんとかまっすぐにぴんと立って―――まっすぐ?あ、だめだ。えーっと、どうしようか。

「あなたは、31番をはじめ従僕を助く従僕たる―――

「ぐっ」

井上主人の言葉がまだ続いてる最中、急に49番さんが頭を押さえて―――そのまま両手を後ろに持っていく。

そうそうそこそこ。今は“気を付け”じゃなくって後手。

「私は、31番をはじめ従僕を....助け、助く従僕たる管理士の姉妹のうちにっ、加えられ、共に歩むことを願います」

今ので頭がとんだのか、それとも聞き取る余裕がなかったのか。一度言葉を詰まらせて、
その先の言葉を後手にした手をぐっと握りこみながら―――まるで何かに耐えるようにしながら紡いでいく。

今の49番さんの手は、縛り上げられた奴隷の手と同じ。
目とか口元みたいに、感じていること思っていることを言葉にせずともありありと伝えてくる。そんな指先―――