梓さんがいなくなると、フロアーにいるのは椅子に拘束された私だけになってしまった。
 (この空間で、私一人だけ・・・)
 ここには、無数の器具とスーツが置かれている。それは私の想像力を掻き立てた。
 (どんな人がどんな風に使用しているんだろう・・・)
 さらに、ラバーや革の匂いがそれに拍車をかけた。
 「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
 呼吸が荒くなり、全身が熱を帯びてきたような感覚がした。もし、椅子に拘束されていなかったら間違いなくオナニーをしていただろう。
 (拘束されてるし、何より禁止されてる・・・。でも・・・)
 もどかしい気持ちを味わっていると声がした。
 「お願いします」
 スタッフの人がカウンターにファイルを置き、リモコンを操作した。
 「あっ・・・お待ちください・・・」
 拘束を解かれた私は、椅子から立ち上がり、該当するものを用意した。
 「以上です。・・・あの、トイレに行きたいんですが・・・」
 「ああ・・。どうぞ」
 私は、部屋の隅にあるトイレに入ると、ドアを閉めた。便器に座り、力を入れると貞操帯に網状に開けられた穴からオシッコが溢れる様に出てきた。
 (これで暫くは大丈夫・・・)
 さっきまでのもどかしい気持ちも落ち着いていた。
 「ありがとうございました」
 外にいたスタッフの人にお礼を言って、私は再び椅子に座ると、程なくして、私は再び拘束されてしまった。
 その人がいなくなると、再びフロアーには私一人だけになってしまった。すると、また私は想像を膨らませてしまい、もどかしい気持ちになってしまっていた。
 (こんなんじゃ、ダメなのに・・・)
  結局、私は尿意がないのにスタッフの人が来るたびにトイレに行くことを繰り返してしまった。
 そして、それが限界に達しようとした頃、千晶さんがやってきた。
 「今日の業務は、終了。帰宅して良いわよ」
 それは、私にとっては救いの言葉だった。