「あなたの服や靴、持ち物は、下の階の専用ロッカーに入れてあるから、そこで着替えてね」
 私の拘束を解いた千晶さんがそう言った。
 「あの・・・ラバースーツは脱げないんですよね・・・」
 「そうよ。2週間はね」
 (ラバースーツを着たままで、外へ出るなんて・・・)
  私の戸惑いを察したかのように、千晶さんが言った。
 「服を着れば、殆ど隠れるとはいえ、ハードルが高いかもね。そう思って準備しておいたわ」
 「花粉症対策用のゴーグルと大きめのマスク、後は帽子ね。それとこの白いのは、首に巻くと医療用のコルセットに偽装できるから」
  それらを紙袋に入れて、私に持たせてくれた。
 「後は、佳奈から預かったあなたの食事よ」
 「私の食事ですか・・・?」
 「今は、腹部を締め付けているからあまり、食べられないでしょう。そこで用意したのがこれらしいわ。流動食になっていて、味もついてるみたい。
 これを必ず毎食1袋摂取するように言っていたわ。これ以外のものも食べるのは良いみたいよ。とりあえずこれで三日分」
 そう言って、別の紙袋を渡された。
 「これで全部よ。初仕事はどうだった?」
 「えっと・・・やっていけそうです・・・」
 (本当は、あんな状態が続いたら、やっていく自信がない・・・)
 私の曖昧な返事にも千晶さんは笑顔で、労ってくれた。
 「そう。明日からも頑張ってね。帰ってゆっくりと休んで」
 「はい。千晶さん、さようなら」
 そう挨拶をした私は、エレベーターに乗り、下の階にあるロッカールームを目指した。