外は丁度、暗くなる寸前だった。元々、人通りが多い場所ではなかったけど、通行人はそれなりにいた。
 (普通にしてたほうが良いよね・・・)
 私は、いつも通り歩くことを意識して、駅までの道を歩いた。途中で何人かの人とすれ違ったりしたけど特に変わったことはなかった。
 (皆、私がラバースーツを着て、貞操帯を装着していることに気づいてない・・・)
  私は、安心していた。しかし、それと同時にもし、そのことに気づかれたら、という思いもあることに気がついた。
 (何を考えてるんだか・・・そんなことになったら・・・)
 そう思いながらも、完全にそれを払拭することはできなかった。
  やがて駅に到着すると、私はポケットから電子マネーのカードを取り出し、自動改札に押し当てた。するとピッ、と音がして問題なく通過できた。
  (電車が来るのは、15分後・・・。座ってよう・・・)
 立って待っていられない時間ではなかった。しかし、立っていると近くに人が寄くる可能性が高いと思って、私はホームのベンチに腰を下ろした。
 現に、ホームには少しづつ人が増え始め、人と人の間隔も狭くなっていった。そして、電車がホームに入ってきて、ドアが開くと次々と電車の中に入っていった。
 私は、遅れてベンチから立ち上がり、電車に乗りこんだ。座席はほぼ埋まっていたけど、立っている人は殆どいなかった。
 (こっちのドアは次の駅では、開かないはずだから、ここにいよう・・・)
 私は、ドアの近くに立って、外の方に向くことにした。外はすっかり暗くなり、ドアのガラスには自分の姿が映っていた。
  不意に、電車が揺れ、私は思わずラバーに包まれた右手で側の手すりを掴んでしまった。
 (っ・・・!まずいかも・・・)
 私は、すぐに手を離そうとした。でもこの後、揺れるたびに手すりを掴んだり、離したりしたら余計に目立つかもしれないと考え、そのままでいることにした。
 心臓の鼓動がだんだんと早くなり、呼吸も荒くなってきた。
 (落ち着いて・・・落ち着いて・・・)
 そう自分に言い聞かせていた。