暫くすると、電車が停止して反対側のドアが開いた。幸い、乗ってくる人はあまりいなくて、私の周りは空いたままだった。
 (良かった・・・。それに落ち着いてきたし、もう大丈夫・・・)
  私は、安心していた。ドアが閉まり、また電車が動き出す。そしてドアのガラスに目をやった時、ギョッとした。反対側のドアの近くの座席に座っている人が明らかにこちらを見ていた。
  (何・・・!何なの・・・)
 再び心臓の鼓動が跳ね上がった。振り向くこともできず、私はその場で固まってしまった。
すると、その男の人は立ち上がり、私の方に近づいてきた。
 (ダメ・・・!来ないで・・・)
 「あの、良かったら座りますか?なんか調子が悪そうに見えるんですが・・・」
 (黙ったままでいると、怪しまれる・・・)
 そう考えた私は、意を決して振り向いた。
 「大丈夫です。それに私、次の駅で降りるんで。お気持ちだけで十分です・・・」
 マスク越しの声で答えた。
 「そうですか?なら、良いのですが・・・」
 男の人は、少し怪訝な顔をしたももの、席に戻り、私は再び外の方へ向いた。
 (お願い・・・!早く着いて・・・)
 そこから駅に着くまでの時間は、物凄く長く感じられた。そして電車が駅に着き、目の前のドアが開くと私は、飛び出すように電車を降り、早歩きでホームを歩き、改札を通り抜けた。
 駅舎の外に出たところで、漸く息をつくことが出来た。
 (あの人、気づいたかな・・・)
 そう思いながらも、私はマンションまでの道を歩き始めた。暫くして歩いて、私はあることが気になり始めた。
 (食事どうしよう・・・)
 流動食が入ったパックはあまり大きくなく、いくら、腹部を締め付けられてるとはいえ、お腹を満たすことはできなそうに思えた。
 ふと、何回か利用したことがあるコンビニが目に入った。
 (何か買っていった方が・・・でも、さっきみたいな状況になったら・・・)
 悩んだ結果、私はコンビニに寄ることにした。
 (2週間あったら、必ず何回かは寄らざるを得なくなる・・。だったら・・・)
 決意した私は、コンビニの入り口のドアを開けた。