「おはようございます」
 「あら、早いのね。調子はどう?」
 「はい。特に変わったことはありません」
 あれから、すぐに眠ってしまった私は、朝早くに目を覚ましてしまった。
 朝のシャワーをする必要もなく、食事もパックの流動食だけだった私は時間を持て余してしまった。。
 (クラブに行ってみようかな・・・。今の時間なら電車も空いてるだろうし・・・)
 そう思い立った私は、昨夜の格好をしてマンションを出た。予想通り人影は殆どなく電車もがら空きだった。
 (これからは、このぐらいの時間に出よう・・・。帰りは日によって乗る時間を変えれば、目立たないかも・・・)
 そんなことを考えながら、電車を降りて暫く歩くと、クラブの建物に到着した。
 (まだ早いけど、大丈夫かな・・・?)
  そんな思いは杞憂だった。受付にはすでに千晶さんが何時ものように座っていた。
  挨拶を交わした私は、質問してみた。
 「何時もこんなに早いんですか?」
 「会員様の都合に合わせるから、早い時もあれば遅い時もあるわ。まあ、コンビニみたいなものね」
  千晶さんはそう言って屈託なく笑っていた。
 「私がいない時、スーツや器具の出し入れは誰が・・・」
 「それは、その時にできる人がやっているわ。私もその一人だけど・・」
 「そんな・・・。それは申し訳ないです」
 「あなたの本業はテスターでしょう。今、やってらってるのはいわば、ついでなのよ」
 「その内、テスターとしてしっかりと働いてもらう時がくるから、気にしばいで」
 「・・・わかりました」
 釈然としない思いが残ったものの私は、納得することにした。