818 :薔薇と百合の名無しさん:2010/01/23(土) 11:59:57 ID:z8RTd0i+0
「何これ」
ある女生徒が廊下でジャケットを拾い上げる。妙にトイレの中を賑やかに感じた。
また何処かの組の不良軍団が弱い者から金を巻き上げてるのだろうかと自由に想像する。荒れた中学なのは知っていた。たかりくらい日常茶飯事だと言う事も十分承知だ。
しかし、最近の不良と言うのはクールに振る舞うものだ。
本物の子どもの様にギャーギャー騒いでる不良と言えば一人しか浮かばない。
自分の中では有名だった。隣のクラスのデブだ。まん丸な顔して、幼い顔つきを浮かべ、それでも仲間を横に並べて不良を気取っている。前から腹が立っていたが、彼に誰も逆らえないのは知っていた。
「おいおい、来いって。あいつ脱がされてるぜ」
「マジで!?嘘だろ!?」
男子生徒たちが女生徒の横を通り過ぎ男子トイレの入り口を塞ぐ様に集まる。彼女はもう一度、自分の目の前にあるジャケットを手にして首を傾けた。一般的なサイズより大分でかい。
バサッと今度は特大のズボンが目の前に振ってくる。
(嘘…本当に…脱がしてるの?)
顔がカッと赤くなる。あの不良軍団でもそこまでするやつらだとは思っていなかった。エロそうなデブを除いて、同中の誰かをパンツ一丁にするなんて、信じられない。そして、中で誰が被害に遭っているのかを想像してしまう。
(3組のKくんかな?)
あの子なら性格も大人しい、前から不良軍団に目をつけられていた。体格もがっちりしている。同情はするが、自分には何も出来ないのは知っていた。
あのデブの餌食になっているとなるとやりきれない気持ちにはなるが、それでもズボンを脱がすと言うのはあまりにも可哀想だ。
「先生呼ぶ?」
隣にたまたまいたクラスメイトに尋ねてみた。
「いいじゃん。どーせ、もう誰か呼んでるだろうしさ」
完全に他人事だ。しかも、見たいのかトイレ前の人だかりの壁を前に背伸びをして必死に見ようとしている。男子だからできることだな。と、ちょっと羨ましくなった。
自分だってちょっとはパンツ一丁の男子に興味はある年頃だ。
「やめろよぉおおおおおおお!」
中から甲高い声が聞こえた。Kくんの声だとは思えないくらい高い声。だとすると、Cくんか?いや、彼はこんな特大なジャケットは羽織っていない。
自然と足が前に出ていた。人ごみをかき分け、男子生徒の中へ入っていく。そこで、彼女は信じられない光景を目の当たりにした。
そこにいたのはあの不良軍団の一員の糞生意気なデブリーダーだった。しかも、彼は裸で、パンツ一丁の状態で必死で不良軍団の陣の中でもがく様に短い手足を振るい、たった一枚のパンツを死守していた。