それから半年だったか一年だったかしてナリミがひょっこりと職場へ現れた。
袖を引っ張られてついて行ったのはいつもの喫煙スペースだった。
タバコに火をつけようとしたら止められて、小さな、和菓子か何かの紙袋を渡されたので、
「あ、俺だけにお土産?悪いねー」みたいな軽口を言うと、
「違いますよ、これバイブちゃん」と、座っている俺の耳元で途中からはヒソヒソ声で囁いた。
あーあーてな感じに大きく頷いたら、
「時間いいですか?」と問うので、
「そこで入れてみるか?」とあくまでも冗談でトイレをタバコで指したのだが、
「会議室で!」
すぐには…ということでいったん俺は持ち場に戻ってから出直したのだが、例の一家だけが使うというエレベーターの前で待ち合わせた。
階段へ迂回すると他の者の目に触れるおそれがあり、ナリミには伝えなかったが旧館の建て替えの話はすでに進んでいて、俺はあの一家ももう住んでは
いないことは知っていた。
「2階じゃなくて3階のほうへ行こう」
書類の運び出しと称して動員かけられたことがあって知ったのだが、物置として使われている部屋があって、そこに重厚な一人掛けソファがあることを俺
は知っていた。
少しは埃が溜まっているかもしれないが、その対策としてのモップはちゃんと持ち場から持ってきた。
「俺、これ貰って帰ろうかな、車に乗るかな?」と、かつてヒサタが話していたのを思い出したが、このこともナリミには言わなかった。
後ろ手にドアを閉めたらキスっていうのがかつても流れだったが、
「喫煙者の人とはキスしませんよ」と笑って拒否られた。
「じゃあお姫様は・・・」みたいな感じにおどけて抱き上げてみると想像以上に軽くて驚いたのが印象に残っている。
こんなんで子ども産んだりできるんだろうか?と素朴な感じに疑ったのも忘れていない。
ナリミをソファの座面の前のほうに置いて身を委ねさせると、思いのほか顔が下のほうに行って、自分の下半身のことは何も見えないだろうと思ったが、
却って好都合かとも思え、そのままスカートの中へ手を入れて一気に下着を脱がせた。