しかし、ハナウドは毒性を持つ植物であってスープのもとには使えない食材である

こと、また「ボルシチ」とよばれるハナウドスープのレシピが現存しないこと、

さらにハナウドスープからテーブルビートスープへの移行が明らかにされていな

いことなど、ファスマーの仮説には不自然な点がある。


料理人の間で人気のある仮説としては[9]、「ボルシチ」(Бърщь)とは古スラヴ語

のテーブルビートそのもの呼称でもあり、そのテーブルビートでつくったスープも

また「ボルシチ」と呼んでいた、というものがある。確かに、ボルシチの主な食材

はテーブルビートではあるが、「ボルシチ」というテーブルビートの呼称がスラヴ

諸語の辞典に登場していないので、これも仮説の域を越えない。