「では……手始めに、彼女のスリーサイズでも教えてもらいましょうか」
 僕はまず場を和ませるため、あまり品が良いとはいえない冗談で攻めてみた。
 そこ、変人だと思わないでくれ。信頼を込めたジョークだ。
 まだ少ししか話していないが、彼女は割りと冗談の通じる人間だ。
 この程度の話を軽く受け流せるだけのスキルはあると見ている。
「それも操作の一環ですか、久瀬さん?」
「うむ。僕は事件に重大な関係があると見越しているのだ」
「なら言わなくちゃいけませんね……ってなるわけないですよ。そんなこと言う人嫌いです」
 予想通り彼女は精神的に大人だった。
 僕が本気で言っていないのを見越して、冗談に乗ってくれる。
 やはり会話を弾ませるのなら彼女のように、
 ある程度以上こちらの真意を察することの出来る人物がいい。
 こんな感じでこの話題は終わるはずだった。ところが……
「う〜ん……俺の見たところ、79・53・80って所か」
「ははは、そんな当てずっぽうで言われても」
 彼が数字を適当に羅列した瞬間、彼女がぴしりと固まった。
 ……待て、ちょっと待て。まさかとは思うが……当たってしまったのか。
 どれだけ低い確率を引き当てたというのだ、この男は。
 彼女の肩は小刻みに震えている。……何やら嫌な予感がするのは気のせいか。
「お、当たった?
 やっぱりな〜。俺さ、目もかなり良い方だから自信あったんだよ」
 この男、空気を全く読めていない。
 駄目だこいつ、早くなんとかしないと……。
 だが、僕がフォローを考え付くよりも早く、彼女は恐ろしい形相で彼に詰め寄った。
「嫌いです嫌いですそういうこと言う人大嫌いですっっっ!!」
「ま、まさかマジで当たってたの!?
 ゴメン! 悪かった、俺が悪かったよっ!!」
「……あんまりですっ! 気にしていたのにっ、しかも暴露までされて!!
 さては一昨日の夜お風呂場で私がうっかり洩らしちゃったの聞いてましたね!?
 最低です、人類の敵です! 乙女の秘密も台無しです!!」
「い、いやそれは誤解だって! まさか俺も完全に一致するとは思わなくて……!!」
 彼女が凄い剣幕で次々に要らぬことまでまくしたてる。