【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
和泉 千晶(いずみ ちあき)
峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日
窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。
千変万化する彼女の魅力について語ろう
中身は彩世ゆうが有力
★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1325586230/ 今、PS3版の千晶の一周目だが、絵が出てこない以外は完全にCEROZだろw。
一周目ENDってこうだったのかと思い出した。そのまま終われば事情通のいい娘だったのにねw。
一周目は春希への優しさで去り、二周目は自分の我儘で残ったと理解したわ。だから二周目はあんなに悪女だったんだと。
個人的には雪菜を抜いて2位に浮上しましたw。 意外と忘れてること多いよね
自分もなんか急に気分盛り上がってきてICやり直してみたけど
意外と忘れてたこと多かったらしくて、かなり新鮮な気持ちになったわ >>101
悪女の役を演じきれなかった が正解
春希の為に悪女になりきるつもりが愛しすぎてしまた自分に舞台の上で気づいちゃった
あのセリフは春希に向かって発せられたセリフでもあり
奥底にしまっていた自分自身へのセリフでもある
という妄想で千晶かわいいよ千晶 ttp://www15.wind.ne.jp/~jekyll-and-hyde/121207.jpg
冬コミで同人出るんだね というか、この同人の人、有名よ
杉浦小春のビッチな週末
風岡麻理の制服と有休
和泉千晶の演技する夕暮れ 新規の人にも千晶√好評なようだ
もしかしたら年齢層的に拒否反応出て叩かれるかもとか心配してたけど
CCの中じゃ一番よかったって意見が多いみたいでよかった
ただ、それはあくまで√の評価で
千晶の人気に必ずしも繋がってないようなのがちと残念ではある >>112
PS3の千晶ルートって、エロシーンは全スキップ? 千晶√に限らずエロシーンはNGでしょ
ただ前後のシーンが結構エロいらしいけど まぁ千晶好きは特殊な一面はあると思うよ
スレの数こそ少ないけど中身みれば争いなんてまずないし
千晶好きを煽る他キャラ信者はいても千晶好きにそういう事する奴見たことないし
宗教みたいにかずさや雪菜を信仰するのと違って
どこにでもある恋愛感情みたいな移入の仕方してる人も多そう
という事で
千晶かわいいよ千晶 千晶おめーかわえーずら
今年も一年お前ぇさんに萌えるずらよ 千秋かわいいよ千秋
ってちがうわぼけぇぇぇぇ
千晶かわいいよ千晶 うれしはずかし SS初投下〜♪
Coda 雪菜True End後
千晶登場はちょっとまって下さい。 **********5/10(月)冬馬宅地下練習スタジオにて
フランツ・リスト作曲、詩的で宗教的な調べより第10曲…Cantique d'amour『愛の賛歌』
かずさはそれを奏でたつもりだった。しかし…
奏で終わった途端に押しつぶされそうな罪悪感が彼女を襲った。罪悪感に重みがあったなら彼女の身体
は鍵盤に叩きつけられて二度と起き上がることはなかっただろう。
ぱん、ぱん、ぱん…
練習スタジオ入口から曜子が拍手をしつつ入ってくる。その表情は笑顔に満ちていた。
「素晴らしい出来じゃない、かずさ。こんな演奏、わたしには逆立ちしてもできっこないわよ」
母親の言葉には痛烈な皮肉が混じっていた。
「わかっているよ、母さん。今の演奏は…」
弱々しい娘の口応えを遮るように曜子は追撃を続ける。
「ええ、出来は素晴らしいわよ。賛否両論あるだろうけど、今の演奏は全盛期のわたしでも敵いっこない
。たぶん、ウィーンで値段をつけさせたら倍の値段がつくわよ。フランツ・リスト作曲ザイン・ヴィゲン
シュタイン侯爵夫人に献呈された詩的で宗教的な調べより第10曲…」
「もうやめてくれ。母さん…」
娘の懇願に耳を傾けることなく、母親はとどめの言葉を撃ちこむ。
「『愛の《怨嗟》』ってね」
「っ…!」 やはり、母親には全部見抜かれていた。
「もぉ、すっごいわたし好み。オンナの秘めておきたい部分がもぉ『これでもかっ』ってぐらい伝わってきて、同じオンナ
に生まれてきたこと懺悔したくなるぐらい。フランツに聞かせたら墓から飛び出してきて、あなたの首を絞めにかかる
か、頭を垂れるかのどちらかね。まぁ、カレも身に覚えが二つ三つあるコだから後者の方が若干確率高いかな」
200年前の偉大な先人を元愛人の一人のように看做す発言の方こそ祟られても文句言えないほど不敬極まりな
い。しかし、かずさは罰を受ける罪人のようにうなだれて口をつぐむ。
そう、被告人かずさが全く弁明できないほど、今の演奏はどす黒い感情に満ちていた。
春希を奪った雪菜への嫉妬、自分を捨てて雪菜をとった春希への妄執
そして…春希を振り向かせる事が出来なかった自分への自己嫌悪
「熱心なのは結構だけど、あまり入れ込みすぎるんじゃないわよ」
曜子はそう言って練習スタジオから出て行った。
残されたかずさの口から嘆息とともに男の名が漏れる。
春希ぃ…
5年間付き合ってきた慕情を振り切ろうと決意したのが2ヶ月前。しかし、心身の隅々まで根を張った感情から容易く
免れることなどできるはずもなかった。
冬の終わりにはかずさ、春希、雪菜の3人が心重ねた一瞬があったが、春が来て夏が近づくにつれ、かずさ心の隙
間から抑えきれない感情が滲み出てきた。忘れるためにピアノを弾けば逆に、自分は今まで春希の事ばかり考えてピアノを弾いてきたのだと思い知らされた。かずさのピアノはあたかも鏡のように容赦なく彼女の内面を映し出していた。彼女自身でどうにもならないほどに。
「やっぱり私、母親失格かも」
曜子は、閉じた練習スタジオのドアの向こうでため息交じりにつぶやいた。
「娘がつらい経験を重ねるたびにピアニストとしての艶を増していくのを見て…喜ばずにはいられないなんて」 ちょ、まさか今頃SS投下とかワロタ
この内容ならかずさスレでも良かったんじゃないの **********5/12(水)複合文化施設「Kaikomura」1階レストラン「コクーン」にて
からり、から… からり、から…
コーヒーシュガーが空しい音を立て、黒褐色の液体の中に埋没していく。
その数が5杯目にさしかかったが、同席している誰も彼女―売り出し中の若手女性ピアニスト、冬馬かずさ―の糖分過剰摂取に気付きすらしなかった。
目の前では、彼女のマネージャーがクライアントとの打ち合わせのまとめにかかっている。かずさはそれを他人事のように眺めていた。
同じ建物の3階にあるコンサートホールの下見が済んだ時点でかずさの本日の仕事は終わったようなものであった。
あとのこまごまとした打ち合わせ事項はいつもどおり全てマネージャー任せであり、かずさ本人にはそういった仕事上のすり合わせを行う能力も意思も全くなかった。
そんな事情を察するや、クライアントの男性もマネージャーとの用談に集中した。だから、下見後のフレンチレストランでの会食はかずさにとって、クライアントとマネージャーが話をまとめるまでの時間つぶしにすぎなかった。
マネージャーが「では、そういうことでいいですね。かずささん」と確認を求めた際も、かずさはほとんど内容を理解することなく「うん、いいよ」と、答えた。
かずさが理解していたのは「3階のホールで秋にピアノを弾く」、それだけであった。食事の間かずさが聞いていたのは打ち合わせの内容ではなく、レストランの外の喧噪の声であった。
パリのカフェと同じようにポットで出されたコーヒーを砂糖で流し込み終わるころには外の喧噪も打ち合わせも止み、かずさは本日最後の仕事を実行することにした。
何度も練習させられた、ぎこちない営業スマイルと共に
「では、本日はどうもありがとうございました。これからよろしくお願いします」
これが、かずさの5月12日最後の仕事であった。 「では、かずささん。また明日お願いします」
「ああ・・・。いつもありがとう。美代子さん」
レストランの外でかずさはマネージャーと別れた。マネージャーはこれから冬馬曜子―稀代の世界的ピアニストにしてかずさの母、そして、冬馬曜子オフィス社長―の所に報告に向かうことになっている。
行先は峰城大学病院…公表はされていないが、曜子は白血病を患い定期的に検査入院を繰り返している。娘の売り出しのためには病床を抜け出し駆け回ることを厭わない曜子であったが、今日のような簡単な打ち合わせは報告受けで済ましている。
だから、かずさは今日はひとりで帰ることになっていた。
帰る、か…
かずさの足取りは重たかった。今日は形ばかりの仕事であったが、それでも仕事のあるうちはそれで気を紛らすことができた。母親から押しつけられた忙しいスケジュールも却ってありがたかった。
しかし、仕事が終わってひとりになった時に襲う寂寞感をやり過ごす術までは、まだかずさは見出せてはいなかった。
そうしてふらふらと出口に向かうかずさの横をひとりの女性が通り過ぎた。
ぴく…
かずさは足を止める。
「?…誰だっけ…」
振り返るが、後ろ姿ではわからない。最近会ったような気がしたが、どこで会ったかも思い出せない。
しかし気になる。5年間ウィーンで暮らし5ヶ月前に帰国した彼女がこの国で「知り合い」と感じることのできる人は少ない。同年代くらいの女性だったが…
かずさは追いかけて確かめることにした。たとえ人違いだったとしても気乗りのしない帰宅よりはマシと感じていたからだった。
その女性はエスカレーターで2Fに上がり、「シアターモーラス」スタッフ出入り口の付近で立ち止まった。かずさはもう一度その女性の顔を見て、やっと彼女が誰であったか思い出した。
帰国して間もないころ、ピアニストかずさに「ファッションについて」というインタビューを求めてきた不躾な女性記者…確か板倉とかいう名前だった。
「なぁんだ…」
どちらかと言うとあまり会いたくない人物である。かずさは軽く肩を落とした。すぐ立ち去ろうかとも考えたが… 彼女と会った時の記憶がよみがえる。いろいろと神経質になっていた時期にわけのわからない取材を求められ怒りを覚えたかずさは手にあったバッグを投げつけて逃げ出した。財布や携帯まで全て入ったバッグを…
何も考えず駆け出し、気がつくと迷子になってしまったかずさであったが、春希に助けられ事無きを得た。なお、投げつけたバッグはこの女性記者が律義に冬馬曜子オフィスまで届けてくれていた。
今から思い起こせば赤面ものである。しかも、その後この板倉とかいう女性記者にお礼もお詫びもしていない。当時の自分自身はそれどころではなかったし、今からお礼なりお詫びをするとしても完全に時期を逸しているが…
「『ごめん』、くらい言っておくか」
このまま知らんふりをして帰っても同じくらい気まずい思いが残る。ならば、また少々無遠慮な取材を食らうことになったとしても、謝意を伝えてすっきりした方がいいとかずさは考えた。
「すいません。記者の板倉さん…ですよね」
「え、…ええっ!」
話しかけられた女性記者板倉は驚き、当惑した。なにせ目の前にいるのは冬馬かずさ。数か月前には取りつくしまもなかった人物の方から話しかけられれば面くらうのも当然だった。
かずさはかまわず、たどたどしく謝罪の言葉を口にする。
「この前はごめんなさい。いや、あの時はちょっと気が立ってたっていうか…その…」
板倉記者は困った。相手は今をときめく話題の美人女性ピアニスト。ここは謝罪を受けつつ、うまくすり寄って取材に持ち込めたら僥倖である。しかし今日は別の取材相手の出待ち中で、タイミングが悪かった。
『なんでこんなタイミングでこんなチャンスが…』
しかし、二兎を追う者一兎を得ず。ここは当面の取材を優先すべき。少し待ってと板倉記者が言いかけたその時だった。
「あれ? 冬馬かずささんじゃないですか?」
そう言ってスタッフ出入り口のドアを開けて出てきたのは、板倉記者の本日の取材のターゲット。劇団コーネックス二百三十度の新人女優、瀬ノ内晶、本名和泉千晶であった。 >>136
ワロて頂き何より
かずさスレへの投稿も考えましたが、書き込み多いスレに長文投稿は
まずかろう&雪菜True後ですし
とりあえず、千晶登場まで かずさはやっぱ糖分過剰摂取じゃないとなw
千晶がとういう格好してるのか気になる 「あ、瀬ノ内さん。今日は…」
板倉記者が口を開いたところを、すかさず千晶は自分のセリフを重ねてつぶす。
千晶はいつもこの手でこの小うるさい雑誌記者をはぐらかしていた。舞台の間の取り方を逆用したワザである。
「ああ、冬馬さん。わたし。クラス別だったけど学年同じだったよ。でも覚えてないよね。瀬能千晶っていうんだけど」
突然見知らぬ学友に話しかけられ、今度は冬馬が泡を食う。
「え、ええ?」
かまわず千晶は続ける。
「ひょっとして、今の舞台見ていた? ごめんごめん、全然気付かなかった」
そういう千晶の顔は悪戯を見つけられた少年のものだった。だが、その目はひそかにかずさの反応を注意深く見ている。
「あ、いや、今日は別件で…」
その答えを聞き、千晶は軽い舌うちとともにぼやいた。
「やっぱりか…、ちぇ。春希も雪菜もチケット渡したのに見に来なかったし…」
そのつぶやきは誰にも聞きとれないほど小さかった。しかし、ピアニストであるかずさの耳にははっきりと聞こえた。
「…春希たちの知り合い?」
かずさの声のトーンが微妙に変わったのを千晶は聞き逃さない。
「うん、春希とは何度か寝たよ」
「…っ!」
「わたしはベッドで春希は床で」
「………」
からかわれたことに気付いたかずさは凶悪な目つきで千晶を睨む。しかし千晶は気押されることなく、飄逸な口調をやめない。
「ごめんごめん、ゆるしてちょんまげぇ〜…って」
かずさから、けして許すまじとばかりの怒りのオーラが立ち上る。千晶はその様子をひととおり観察し終わるや、カバンから何かを取り出し、両手を前で組んで言った。
「まぁ、おわびといっちゃあなんだけど…『かずさぁ、明日ヒマ?』」 その言葉に、かずさは不意をうたれる。急になれなれしく名前で呼ばれたことに対してではない。
その口調、しぐさがまるで…かずさの不倶戴天の親友のまさにそれであったから。
「???っ…あ、ああ…」
かずさは思わず肯定の返事を返してしまった。
「『よかったぁ。じゃ、絶対絶対来てよね。…来てくれないとちょっとだけ傷ついちゃうかもなぁ…』」
そう言って、千晶はかずさの手に強引にチケットを2枚握らせる。
その際の演技も完璧に『小木曽雪菜』のそれであった。かずさは混乱のあまり何も反抗できずにチケットを受け取る。
「『じゃあ、見終わったらまたこの場所で会おうね』」
「………、あ、うん…」
かずさは呆気にとられ、こくりとうなずくばかりであった。
その後の事はかずさはよく覚えていない。
たしか、瀬能千晶と名乗るあの新人女優は板倉記者にもチケットを渡して去っていった。
板倉記者からはいろいろと質問されたが、何も答えられなかった。ただ、一緒に翌日の舞台を見に行く約束だけして別れた。
自分と峰城大付の同学年ということだが、もちろん覚えはない。『春希』と『雪菜』を名前で呼ぶあの人物は何者?
ただの大学とかの同窓生? あの時見せた演技は何? ただのモノマネ上手?
いろいろ考えたけど埒があくはずもない。
かずさは考えるのをやめた。明日、あの瀬能千晶という女に直接聞けばわかることだ。
寝床に転がりながら眺めた、シーリングライトに透けるそのチケットには「5/13(木) シアターモーラス 劇団コーネックス二百三十度『届かない恋』」と印刷されていた。 **********5/13(木)「シアターモーラス」『届かない恋』開演前
「明日の講演後このコ連れて来て。そしたら取材でも何でも応じるよ」
瀬之内晶はそう言って板倉記者にチケットを握らせると、あっという間に雑踏へ消え失せてしまった。
あとに残されたかずさと板倉記者だが、かずさのほうは呆気にとられたようすで、板倉記者が何を話しかけても生返事しか返ってこなかった。
仕方なく、明日会う約束だけしてその場は別れた板倉記者だったが、かずさが来るかは半信半疑だった。久しぶりに会った学友?にしては様子がおかしかったが…
翌日の講演開始10分前。待ち合わせは20分前だったから、もう10分の遅刻だ。
「…また騙されたかも?」
シアターモーラスの入口で待ちつつ、そうぼやいた板倉であったが、程なく彼女は現れた。
「…やあ、板倉さん」
「はいはい、かずささんこんにちは〜。今日はお付き合いありがとうございます。いやいや、本日は僭越ながら御同席させていただきますので…」
かずさが現れた嬉しさのあまり、忽ちテンションを上げる板倉であったが、かずさはそんな板倉がまるで視界に入っていないように、
「…行くか…」
と言うと、すたすた劇場に脚を進めた。
訝しげな表情のまま付いていく板倉であったが、彼女の記者のカンは、
『ここは機会を待て、じきに大ネタが来る』
と告げていた。
「これ、どんな劇なの?」
開演を待つかずさにそう問われ、板倉は答えた。
「ええ、一人の男性をめぐる二人の女性の恋と友情の物語ですね。バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係に苦しみつつ成長する、という話です…かずささんは演劇はよく御覧になるのですか?」
「…いや……それで、瀬能さんは?」
「瀬之内さんはヒロインの一人、冬木榛名役です。脚本も瀬之内さんが大学時代に所属していた劇団で書いたもので、なんとその時はもう一人のヒロイン、初芝雪音も瀬之内さんが演じました。つまり、一人二役ですね」
「…へぇ…」
自分で聞いておきながら、かずさの目はまだ開かぬ舞台に、正確にはその向こうにいるであろう瀬能千晶という女に釘付けになっていた。
彼女は…何者? 春希たちとの関係は?
この時既に、かずさは千晶という役者の罠に心の奥まで完全に絡めとられていた。 間もなく舞台が始まった。オープニングニングに流れたのは「White Album」。かずさにとっても懐かしい曲だ。
メジャーデビューを夢見る高校生、西村和希が二人のヒロインをバンドに引き込もうとするシーン…前半はラブコメディ色が強い
「俺と合わせられるのはお前しかいない!」
「だから質問に答えろ」
「俺みたいなヘタクソをフォローするには、お前くらいの腕がないと不可能なんだよ!」
開演後、しばらくして…2人目のヒロイン『冬木榛名』登場のあたりから…板倉はかずさの異変に気づいた。
最初はギャグシーンで他の観客と同じようにクスクス笑っていたかずさが、やがてクスリとも笑わなくなったばかりか、だんだんと表情を強ばらせている。
「…あの…かずささん?」
「…まさ…か……っ」
かずさは、気付きつつあった。
この劇は…彼女と春希、そして雪菜の関係をモデルにしている。いや、三人の性格から関係、あの日々までを調べ尽くし、えぐり出している。
なぜ? なぜこんなことまであの女は知っている? どうやって知った? 誰から聞いた?
…そして、なぜ、自分にこの劇を見せようとした?
かずさは舞台の上の『冬木榛名』から、もはや目を逸らすことができなかった。
榛名の演技は、かずさにとってあたかも呪いの鏡であり、かずさは自分の虚像たる榛名に存在を突き崩されつつあった。 舞台はコンテストの直前、控え室での和希と雪音。雪音が和希にキスをねだるシーンだ。
「じゃ、もう一度目をつぶるので考えてみてください。制限時間は30秒!」
「え? え? え?」
「ん〜っ!」
「目をつぶったのはわかったけどさ…その背延びは何?」
「残り20秒〜」
「ゆ、雪音…?」
「残り10秒〜」
「10秒はやっ!?」
「………」
「………」
「残り15秒〜」
「増えてる!?」
「…っ!」
観客がどっと笑ったその時、かずさの口から漏れたのは笑いではなく驚きの絡んだ呻き声であった。
気付いたのは板倉だけであった。彼女がかずさの視線の先を追うと、その先には舞台袖に控える千晶がいた。
千晶はそんなかずさの様子を観察して悦に入っていた。
「いやいや、あの席は特等席だねぇ…」
前列端のその席は舞台を見るための特等席ではなかった。舞台袖に控える役者がその観客を観察するための特等席だったのだ。
「3人の1人しか引っ掛からなかったのは残念だけど…さあ、見せてちょうだい。冬馬かずさの怒り、嫉妬、嘆き、叫び、涙。全部を…」
千晶はそう呟くと『榛名』に戻り、舞台へ踏み出した。 終わってなかったのかよw
気持ちはわかるがあまり一気に投下すると何だから焦らず日を跨いだ方がいいんじゃない?
どうせ過疎ってるんだし
あまりに長文すぎると読むこと自体拒絶したくなるわ
何より連投規制で引っ掛かる可能性が高くなる(まして書き込みの少なくなる深夜) こんばんは
昨日は長文連投失礼。
もうラスト以外できているけど、ペース配分して投稿します。
今日は、『届かない恋』の終幕まで。
ちなみに、雪菜True後の後日談ですので、千晶Trueの『届かない恋』とは内容異なる
(千晶入れ込んでない、雪音に千晶入ってない等)ってことでご了承ください。 「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」
ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。
「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
「………西村」
「ん…?」
『冬木榛名』が『西村和希』に歩みを進める。
「…やめ…ろ…」
かずさには次の『榛名』の行動がわかっていたから、抗議の声を漏らさざるを得なかった。
しかし、かずさの弱々しい声は聞き入れられず、『榛名』は『和希』に唇をよせる。
舞台上のキスにどよめきの声を上げる観客の中で、かずさ一人だけが軋むような声を上げていた。
そして流れる『3人』の「届かない恋」
かずさの心の悲鳴は止まらなかった。 **********幕間
「…かずささん?」
板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。
「…行く…」
そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」
板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
無理に出ようとしてつんのめったかずさを板倉は止めた。
「かずささん! まだ一幕目が終わっただけで、すぐ次が始まりますよ! まだ瀬之内さんには会えませんってば!」
そう諭されて、我に返り腰を下ろすかずさ。
しかし、体は座しつつもその目は怒りと苛立ちに満ちており、今にも舞台に飛び上がりそうであった。
何で? 何を怒っているの?
板倉は不安を隠せなかった。
やがて、第2幕が始まった。
ここからは物語が大きく現実から逸れ始めた。板倉がかずさの方を見ると、射抜かんばかりの視線で舞台を見ていた。板倉はホッとした。とりあえずは大人しく鑑賞しているようだ…
榛名の想いを知りつつ、和希に猛烈アタックを仕掛ける雪音。やがて、二人は恋人として付き合いを始める。
しかし、新進気鋭のポップス歌手として一人メジャーデビューを果たした雪音は和希とすれ違いの生活を続け、やがて、和希は雪音に隔意と嫉妬を抱き苦しむ。
一方、ピアノより和希のそばにいることを、雪音の身代わりであり続けることを選んだ榛名。しかし、やがて二人は過ちを犯してしまう。
『お前のことなんか別に何とも思っていなかった』榛名の、本当の、そして真摯で深い思いの発露。
そして… 「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」
暗転する舞台
「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」
雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。
「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
場面が明転し、雪音の自室。電話の切れる音ともに枕に伏し、独り涙をこらえる雪音。
くすんだ色の空虚な部屋から「会えない二人」のハリボテのような関係がにじみ出ていた。
枕元に置かれた写真立ての中にだけ、3人の色褪せない姿がある。
…優しさ故、会えない日々の中で一人待ち続ける雪音
…臆病さ故、和希の想いから逃げ続ける榛名
…立ちどまる和希
かずさは血色を失いつつも舞台を凝視し続ける。板倉が時折小声で心配そうに話しかけたが、全く反応しない。
ピアノを捨てた榛名には、和希が側に残り、捨てなかった雪音には、歌だけが残される。
そうして、第2幕が終わったが、かずさは手足が震えてもはや立ち上がることすら出来きなかった。
ただ、張り付けられたように幕の閉じられた舞台を見つめ続けるのみであった。 そして、最終幕。
そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。
「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。
「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
ぱしんっ。榛名も負けじと返す。
平手打ちとともにお互いの本音をぶつけ合い、いつしか和解する二人。
「おまじないだよ」
別れ際に雪音が榛名に渡したのは、あのコンテストの控え室で和希から受け取り、以来片時も離すことがなかった、和希との絆のギターピックだった。
「おまじないだ」
そして、和希からは、キスを
舞台にあのコンテストの日の「届かない恋」が流れ、榛名はピアノを取り戻す。しかし、それは皮肉にもあの日の3人の思い出と和希と雪音の仲まで取り戻してしまった。 二人の為に身を引く決意を固める榛名。
榛名がピアノを取り戻したことを知った母親からの留学の薦めを承け、誰にも知らせずウィーンへ去ろうとする。
飛行機が起つ直前でその事を知り、空港へと向かう和希と雪音。
雪による遅延で奇跡的に3人は出会うことができた。
再会を誓い、和希と雪音は榛名を見送る。しかし、榛名はもう二人の元に戻らないと心に決めていた。
「あれ?」
「何か…ポケットに…」
「これ…和希のギターピック…」
その意味に愕然として飛行機に向かい榛名の名を叫ぶ雪音。その雪音に寄り添う和希。
二人の姿を照らしていたスポットライトが徐々に絞られ、舞台は暗転し、最終幕は閉じられた。
スポットライトが最後に照らしたのは二人の繋がれた手、それは二人の未来を暗示していた。
拍手に包まれる劇場にかずさの慟哭が響き渡った。 >>142-146
いきなりかずさに馴れ馴れしすぎるような>千晶
千晶演じる雪菜に騙くらかされうなずいてしまうかずさ
バンドを組んで友情を深めた三人が三角関係にってとこでちょっと反応欲しかった気も
かずさの前で榛名を演じニヤニヤする千晶、美味しいぞw あら随分大作
ご苦労さん
でもこのスレ的には雪菜End後より、千晶End後の方が需要があったような… >>150-154
ん〜もう少しかずさの蒼白度(?)が欲しかったかなーと
それこそ顔面蒼白で声も出せないみたいな
て、なぜに張り手合戦!?まさか千晶はその後もずっと観察し続けてたとか?
ピック、たしか雪音は返さなかったんだよな
次はかずさが楽屋へ乗り込んで派手に張り手合戦、と読んだw >>156
>>158
感想サンクスです。
スマホからで恐縮ですが、千晶さんにインタビュー
>>千晶さん。かずささんに馴れ馴れしくないですか?
「あはは。そこは賭けだったなぁ。向こうは今をときめくヒトだし、こちらも時間ない中、最終日前にかずささんの『演技指導』受けたかったしね
…決め手は春希と雪菜の名前出した時の反応かな。『かずさの事も知っている二人の共通の友人』って誤解させて切り込むコトにした」
>>バンド組んで三角関係って、かずささんとってはすごくトラウマですよね。かずささんの反応薄くなかったですか?
「ん〜。確かに。1幕より三角関係露わな2、3幕の方が反応薄かったよねぇ? 事実から離れてるからかな? 閉幕時の声はでかかったけど…何でかなぁ?」
>>どうして張り手合戦?
「あれ? 三角関係の争いで張り手合戦って定番じゃない? いやさ、雪音はともかく榛名ピアニストなのに張り手いいのかわかんないけどさ」
>>雪音ちゃん、ピックを一時手放しちゃうんですね。
「うん。『和希から離れてもピックは返さない雪音』も構想したけども、雪音には愛や友情のために誓いを犠牲にできる強さがあると思った」
「さて、なんか控え室で待っていても来そうにないし。ちょっと行ってきま〜す」
**********「シアターモーラス」『届かない恋』閉幕後、場外のベンチにて
「…かずささん! …大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「………ううぅ…うう…」
板倉は困り果てた。閉幕後、板倉が何度呼びかけてもかずさはベンチにうずくまり、立ち上がろうとしない。
そこへ現れたのは千晶だった。
「いやぁ、そんなに泣かれるほど感動されると役者冥利に尽きるねぇ…」
「…っ!」
かずさが顔を上げ、涙も拭かず、憤怒の視線を千晶に向ける。
千晶は鋭い睨みにもひるむことなく、手にしたボストンバッグを床に置くと、飄々と芝居じみた語り口を始めた。
その口調は雪菜のものを模していた。いや、意図的に慇懃無礼な言葉を選んでおり、彼女を知るものなら怒り出すように意図されたバッドコピーだった。
「いやいや…『本日は脚本、私、瀬ノ内晶。本名、和泉千晶の劇『届かない恋』ご覧いただき誠にありがとうございました。
甚く嘆称いただけ何よりです。この度はご感想を頂戴したく参りました』」
それが、かずさの逆鱗に触れた。
…わたしの前でその女のマネをするな…
ゆらりとかずさが立ち上がった。そして、
バシンッ! …どさっ
平手打ち一閃。千晶は豆が弾かれたように床に吹き飛んだ。
「かずささん! やめてください! 手を出すなんて!」
板倉が止めに入る。
が、その背後で背筋が凍るような冷たい声がした。
「これか…これが足りなかった…」
「!?」
驚く板倉が目を向けると、千晶がすくりと立ち上がった。 「ピアニストだから本能的に手をかばう、なんて都市伝説だね。フルパワーじゃん。
それに、昨日も触って思ったけど鍛えられた硬い手指。鉤爪みたいだね。弱々しい音ばかりの平手打ちとは月とスッポンだ」
「まさか…あなた…」
板倉は悟った。さっきの吹き飛び方はいくらなんでもおかしかった。手も予想していたように素早く顔を完全にガードしていた。それに、吹き飛んだ先には本人が事前に置いた大きなボストンバッグ。
「…わざと、冬馬かずささんを怒らせて…手を出させた?」
「ご名答」
「…なんで?」
「『恋敵に対してするように手を出して下さい』ってお願いしたらちゃんとやってくれた?」
「?? …なんで冬馬さんに…っ!? まさか…」
板倉は勘付いた。かずさも気づいた。
「そう、演技指導は本人にお願いするのが一番だしね」
この女、和泉千晶は自分の脚本のために、演技のために、実在の人物を糧とする怪物であることに。
「そうか…そうやって春希たちにも近づいたんだな…なぜだよ…」
砂でも飲み込んだかのようなかすれた声でかずさは聞いた。
「だって、あたしファンだも〜ん。あなたたちの…そう、付属時代のステージから」
「…っ!」
「あんたたちの三角関係、歌からダダ漏れだったもん。もうはまっちゃってさぁ。
絶対これは脚本にしてやろうって。で、大学の三年間、二人を調べさせていただきました〜」
それから千晶は、かずさたちが聞きに入ったのを見計らい、ぺらぺらと何の罪悪感もなく、どうやって3人の関係を調べ上げたか喋り出した。
『女を感じさせない女性』を装って春希に近づいた事。
『商学部の長瀬晶子』に化けて雪菜に近づいた事。
春希からより多くの情報を得るために母との不仲を装い、夜明けまで語りあったことまで…
かずさは魂を抜かれたように聞き続けた。 全て話し終えた後で、千晶はそれまでのうすら笑いではなく、にこやかな微笑みを浮かべて言った。
「まぁ、でも、ケリついたみたいだね。あんたたちの関係」
「!? っ! 何を!?」
「アンサンブル増刊号、付属CD『White Album』ボーナストラック」
「!?」
「3人の和解の産物。あなたから声掛けないとあり得ないよね。あんな曲売られるの」
「………」
「春希とおめでとう、とだけ言わせてもらうわ。これだけは心から言える。」
「何…を…?」
「わたしが2年前最後に2人に合った時も雪菜ちゃんとの仲冷えてたしさ。特級スーパーかずさとして凱旋してきたあなたなら春希くんも鎧袖一触一発撃沈〜。そりゃあ雪菜ちゃんも笑ってあんたに譲るしかないさ」
「………違うんだ…」
かずさは弱々しい声で訂正しようとするが、千晶は聞こえないふりをして続ける。かずさの口調を真似て。
「トドメに『過去の事は忘れたさ。3人であの日に戻ってみるか。さぁ、わたしのピアノについて…』」
「違うんだってば!」
いつの間にかかずさの目から滂沱と涙があふれている。千晶は驚きの表情を見せて聞き返した。
「え? 何が?」
「………」
「まさか?」
千晶が不安げな表情をつくり、かずさを見返す。
「……うぅっ」
かずさは答えられず。ただ眼から涙を流し続ける。
その様子を念入りに伺って、千晶は言った。
「あ〜。誰かに話したほうが楽になれるよ? …例え相手が最低のクソ女でも」 かずさは訥訥と語り始めた。
「もう、春希は…」
ストラスブールでの再会。日本での公演を決めたわけ。日本での再会。イラついて板倉にあたり、春希に助けを求める羽目になったこと。
母親の悪だくみ、いや、計らいで春希の隣室で過ごした日々。
しかし…
コンサートの時に来なかった春希とズタボロの演奏。
旧冬馬宅まで逃げた自分を追ってきた春希。自分を支えようとする春希。
だが…
「わたしは………春希を信じることができなかった………自分の親も………」
そして、知るべきでなかった真実を知ってしまう。母と春希が隠していた、母を蝕んでいた病魔…
世界を失い、部屋に籠る自分を助けに来たのは…
「雪菜…だったんだ…」
雪菜を拒絶した。
しかし、かずさを恐れず、春希を失うことも恐れず、自分の持てる力の限りの世界を巻き込んで、ただ自分を救おうとしてくれた雪菜に…
「完敗…だった」
元より周回遅れだった自分は身を退くしかなかったのだと。
言い終わったかずさの手足から力が抜け、かずさはその場に崩れ落ちた。
千晶はその結果に唖然としているかのように口を開けていたが、すぐに涙を流して見せた。
「ごめんなさいっ! そんな事になっていたなんて…知らなかった…全然想像もつかなかった!」
慌てて駆け寄り、慰めようとかずさの肩を抱く千晶。 >>159
ちょっw
千晶が賭けをするとはw失敗したら千晶的に劇の面白さが(リスク高すぎ)
冷静に自己分析するかずさ・・・ありえねぇw
>>160-163
閉幕後にしてはちょっと元気すぎって感じがしなくもないけど
かずさに頬を張られて役者本能に目覚める千晶はナイス展開ですな
かずさが手を庇わないのもストラスブールのストキング事件で証明済みだし説得力感じる
で・・・・・・・・次は、まさかの百合展開とか
春希がいないなら、自暴自棄半分でかずさ意外と目覚めてしまったりしてw
千晶も引き出し広げるためにあえて果敢に挑戦
・・・やばい、わりと真面目に可能性あるような気がしてきた;; 「**の表情を見せて」
「不安げな表情をつくり」
「涙を流して見せた」
だまされるな〜かずさ〜 特級スーパーかずさってこれか?
ttp://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%9A%E3%81%95_(%E5%88%97%E8%BB%8A) 整理してたらWA2のピロートークCDが出てきた
久しぶりに心温まる猥談を聞いたらまた千晶熱がぶり返してきたぜ
FD欲しいな…後日談欲しいな…勿論18禁要素アリで 今日は日付変わるまで仕事して、明日は6時出;;
ともあれ、今日はかずさvs千晶の続き その鼓動のリズムはゆっくりと、規則的だった。あの時の、春希と同じ…
「………っ!」
だからこそかずさは気づいてしまう。感情を押し殺し、何かを隠そうとしている鼓動だと
どんっ!
「きゃっ!?」
かずさから両手で突き放され、慌てて声をあげ、距離をとる千晶。
「だからぁ………悪かったって……」
だが、かずさは暗く震えた口調で千晶を問い詰める。
「『知らなかったから』悪かった…って、本当に思っているというのか?」
「え?」
「本当に『知らなかった』『想像もつかなかった』と言うのか?」
「何を?」
千晶はあくまでシラを切ろうとした。
しかし、かずさは追及の刃を振り上げる。
「嘘を吐けっ! お前のシナリオでは雪音が勝っているだろう!
雪音はっ、自分を省みず榛名を助けに来たじゃないか!
わたしが雪菜に勝ったと思っているならなんで、わたしを怒らすのに雪菜のマネをしてみせたんだっ!
おかしいんだよっ! おまえはっ!」
掴みかからんばかりの剣幕に慌てて板倉が間に入ろうとするが、かずさの手足には未だ立ち上がる力は戻っていなかった。
「…ちぇ…おかしいのはあんただよ」
千晶の目からは既に涙は引いていた。
千晶は舌打ちすると先ほどまで被っていた仮面の表情を一枚外し、不機嫌そうに眉を寄せて言った。
「…明らかに判断材料は足りていないのに…推論を勘だけで確証づけて正解に至ってしまうタイプ…
あたしの一番むかつくタイプだ」
「…っ!」 千晶は思った。
慰めさせてももらえないか。
じゃあ、あんたに本当に必要なモノをくれてやるよ。
春希も、あんたの母親もしてくれないことをね。あんたのファンだからね。
ここまでする義理なんてないけど。蛇足だけど。
副作用の強い『劇』薬だけど。くらいやがれ。
そして、一週間で立ち直れよ。
「ああ、そうだよ。振られたのはあんたの方だって、ハナから気づいてたよ。あんたに勝ち目はないって」
「…っ!」
「あんたの話を引き出して、自分の脚本の『答え合わせ』したかっただけだよ。ペラペラしゃべってくれてありがとさん」
「………なんで、わたしが…ふられたと…」
「だってそうじゃん。自分から和解を申し出られるくらいなら、3年間2人に音沙汰なしなんてはずがない。
雪菜の方だろ。あんたに足蹴にされても和解を求めたの」
容赦ない言葉の刃がかずさを血まみれにする。
「逃げてたんだろ? 春希の想いから! 空港であんたを抱きしめてくれたやつから! 恋人の前にもかかわらず!」
「…馬鹿やろう…あたしが…どれ…だけ…」
消え入りそうなかずさの声に、千晶は容赦ない凍てつかんばかりの冷水を浴びせる。
「ああ、全く想定内の負け犬の遠吠えならぬ遠ピアノだね。全部ピアノにぶつけてやんの。
帰ってきても中身は高校生のガキのまんま。ぶっぶー」
「………」
「…雪菜はね。じっと待ってた。選ばれるのが自分でない可能性に怯えつつも。春希の側で傷付きつつも、ね」
「………あ…あぁ…」
千晶は頃合いを見極め、トドメを入れた。
「春希や雪菜のイメージの中のあんたはともかく、実物のあんたを見てると反吐が出る。
脚本家の対象外。『お話にならない』ってやつさ。
『悪いのは自分だ、こんな自分は誰にも愛される訳がない』なんて、
あんたを想う人を踏みにじる有り得ない言い訳に逃げ帰りな、冬馬かずささん」
かずさの目から涙も、光も何もかもが消えた。 「ひどい…ひどいです。瀬ノ内さん。人を何だと思っているんですか!」
板倉が動かないかずさを抱きしめつつ、泣きそうな声で千晶を責めるが、千晶は口調を変えずに答えた。
「そだね〜。『これも役作りのため。わたしにとっては芸がすべて』かな。
あんたが聞きたがっていた『瀬ノ内晶さんの役作りの秘訣は何ですか?』の答えがこれ。記事にしていいよ」
「…っ!」
板倉はくちびるを噛んだ。記事にしてこの怪物を懲らしてやりたいのはやまやま。
しかし、それが冬馬かずさを再び傷つけるのは明白。記事にできようはずがない。千晶もそれがわかって言っている。
魂まで打ち砕かれたかのようなかずさが、床に手をついたままで口を開く。
「…最後の…質問だ…」
千晶は人を喰った態度を続ける。
「〜ん〜。最後だなんて名残惜しいねぇ。でも、まぁ、何でも聞いてちょ」
かずさが絞り出すような声で質問を紡ぐ。
「話にならないわたしは…ともかく…なぜ…榛名は和希と…話の中で結ばれない…」
「へ?」
亡骸のような様子だったかずさの首が持ち上がり、死霊のような呪いの声を上げる。
「なぜ榛名は和希と結ばれなかったのかと聞いているんだっ! 結ばれる結末はなかったかと聞いているんだっ!」
完全に予想外の質問だった。千晶は平静を装うことすらできず、今日初めてかずさの前でうろたえる姿を見せる。
「答えろっ!」
「………」
役者、和泉千晶は何のアドリブも返すことができず。立ちつくした。 こよいはここまでにしとうごじゃります。
…かずさいじめすぎて胃が痛い >>170-172
うーん、かずさって取られたってワンワン泣きじゃくるタイプではあると思うけど
ここまで恋愛の勝ち負けにこだわるタイプでもなさそうな気が
というか、ここまでかずさが初対面の相手にペラペラ本音打ち明けるようにも思えないw
ちょっと強引すぎな展開の感じもするかもw >>174
感想まじありがてぇ
>>かずさ恋の勝ち負けこだわりすぎでは?
「雪菜trueでかずさ潔く身を引きすぎ」って感じたのが、このSS書き始めた動機の一つなもので(^。^;)ゞ
反動で導入から黒い感情くすぶったかずさになってます。
>>かずさペラペラしゃべり過ぎ
千晶マジックということで(^-^;)
今日は日付変わる前に投稿できそう **********5/16(日)冬馬宅にて
「かずささん! 開けてください! …せめて何か食べてください…」
これで丸3日、自室に籠もりきりのかずさの身を心配して美代子が扉を叩く。
最早かずさが冬馬曜子オフィスの唯一の稼ぎ手なわけだが、来週末に公演を控えた彼女がこの状態。美代子の心中穏やかならざることいかばかりか、である。
そこへ曜子が帰宅してきた。
「ふう…毎度の事ながらわが娘にも困ったものね…でも、今日は助っ人を連れてきたわよ…」
「こ、こんばんは…ははは…」
「…お邪魔します…」
「ばんわ〜っ」
「失礼します。お邪魔させていただきます」
かずさの友人の武也、依緒、そして、彼らに首根っこを摘ままれるようにして現れたのは千晶。最後は板倉記者であった。
あの劇の日の翌朝、レッスンに行こうとしないかずさに当惑する冬馬曜子オフィスに板倉記者から電話があった。
「お電話失礼します。東邦出版の板倉です。…ええ、その節はどうも
…いえいえ…いえ、今回は取材ではなくて
…はい、実は昨晩、かずささんと元御学友の方との間でトラブルがありまして
…はい、私もその場にいたのですが、その後もかずささんのご様子が尋常ではなかったので、ご自宅まで送らせていただいたのですが
…はい、その後問題ございませんでしたかと老婆心ながら
…はい。はい?…はい、東邦出版の板倉と申しますが、
…トラブルの内容につきましてはお電話では何かと伝えにく…え、冬馬曜子様!?
はい!、はい、すぐタクシーでそちらに向かいます!」
自室に籠城するかずさの元に、曜子、美代子、板倉の3人が到着したのが2時間後。以来、天の岩戸を開けるべく説得が続けられた。
「お〜いっ。お前のお母さんは泣いているぞ〜」
「………」
全く効き目の無い曜子の説得に業を煮やした美代子は、かずさの友人達を頼ることにした。
そして呼ばれたのが武也と依緒。春希と雪菜では却って刺激してしまうと恐れ、まだ知らせていない。
また、主犯である千晶も来た。
正確には武也と曜子が、プライバシー侵害、名誉毀損から楽曲「届かない恋」無断使用による訴訟までちらつかせ、劇の最終日が終わるやいなや連行してきたのだ。 今回の説得の口火を切ったのは依緒であった。
「冬馬さん…食事くらい食べたら?」
「…いい。…食欲ない…」
その後もかずさの身体を気遣う依緒だが、かずさには聞き入れられなかった。
続いて武也が話しかける。
「…冬馬…春希が聞いたら心配するぞ…」
「っ!…おねがいだよぉ…やめてくれよぉ…こんな…こんな情けないわたしを春希に見せないでくれよぉ…」
かずさの声が泣きそうなほど弱るのを聞き、これは逆効果と悟る武也。
曜子は次の説得相手を見繕ったが…美代子も板倉記者も効果は望めない…
…と、なればこの千晶という、今回の件の主犯格と言える怪しい新人女優しかいない。
「…あなたが説得できなかったら、コンサート中止の賠償金を払って貰おうかな?」
軽く脅しを入れる曜子に、千晶が口を開く。
「え〜。お言葉ですがお母さん」
「はい? 何よ?」
「今年頭の来日時に〜、春希を指名してかずさの密着取材仕向けた上に〜、
春希の隣の部屋を押さえてかずささんに半同棲生活強要なんて、
『それなんてコロンビーナ文庫?』なマネしちゃったお母さんにも、
かずささんが失恋の傷こじらせた原因あるんじゃないかなと」
「…っ!」
曜子は毒づいた。痛い所を突かれたからではない。千晶は曜子と武也、依緒の切り崩しを図ったのだ。
現に、武也は僅かながら、依緒は露骨に『そんな事していたのか』と疑念の視線を曜子に向けた。
不利な状況に置かれながらも徐々にその場の主導権を掴む為の手を選ぶ。文字の意味以上に千晶は『役者』であった。
曜子は眉をよせつつ、
「…うちの娘泣かせた分くらいは働きなさい」
と、千晶に説得を促した。 「…ん」
促されてドアの前に立つ千晶。しばし考え込むも、やがて何か諦めたように首を振り、たどだしく口を開いた。
「…あのさ、冬馬さん。あれからずっと考えてはみたんだけど…」
ドアの向こうからは返事はない。しかし、千晶は構わず続ける。まるで自分自身にきかせるように。
「…結局、榛名が和希と結ばれて幸せになるエンディングは思い浮かばなかった…」
『結ばれるエンディングも構想していたが、ボツしただけ』という嘘が至極簡単なのは百も承知であったが、千晶の脚本書きとしてのプライドがそれを許さなかった。
ドアの向こうから僅かにため息が漏れたのが感じられた。
「榛名は…自分が傷つくことにも他人を傷つけることにも、ピアノを捨てることにも、
三人の中で一番臆病で一番不器用で…人と交わることも一番苦手なキャラだから…わたしがそういうキャラに作ったから…
…和希と幸せに結ばれるように動いてくれないんだ」
ドアの向こうから何も返らないが、千晶は滔々と語り続ける。
「…でもさ、榛名はエンディングがどうとか、そんなこと考えて生きちゃいないんだよ」
もう、千晶はドアの向こうの反応を伺うのをやめていた。
「誰だってそうだろ? 和希だって雪音だってそうだ。いや、例え意地悪な神が後味最悪のエンディングをちらつかせても、やつらは恋も友情も音楽も、そうして支え傷つき傷つけあうことをやめない。
幕が下りるまで、舞台の上で演じ続けるんだ」
千晶の独白が続くが、曜子たちもそれを見守っている。
「エンディングが予想できる? だから脚本がつまらない、観たくないなんて言う観客は馬鹿だ。演じたくないなんていう役者がいたら大馬鹿だ。
結果が、エンディングが劇なんじゃない。エンディングに向かうまでが劇なんだ」
ここまで言った後、千晶は少し惨めそうな表情になった。
「榛名は孤独だけど、お前は孤独じゃないだろう? こんな、ちょっとしょげただけで、親友達5人駆けつけてくれるなんて、普通ないぞ?
あたしが去年夏風邪こじらせて寝込んだ時なんて、3日目に親からようやくお見舞いメール一件『治った?』たった4文字だけだったんだぞぉ…」 もはや、説得しているんだか自分がいじけているんだか千晶本人も解っていない。
「お前の来週のコンサートなんてなぁ、お前ひとりにS席5500円だぞ?
わたしはビンボーだからC席2500円しか買えなかったんだぞ!
ウチの劇団のチケットなんて、役者から裏方さんまで束になってかかってやっと一枚5000円なんだぞ!
しかも、チケットタダであげたのに来てくれない奴もいるんだぞ!」
もはや、ただの駄々っ子だ。
ここまでで、ようやく千晶の愚痴が終わった。当然ながらというか、ドアは開かない。少し息を荒くしつつ、千晶は考えた。
『やっぱりこの手しかないか…』
千晶は落ち着いて、心を研ぎ澄ました。
イメージするのは春希。説得の成功率が一番高そうな人物だ。もちろん、リスクもある。
第一、自分が演じているのはバレバレなのだから、すぐ反感を買うだろう。
しかし、自分の才能にかけて失敗したくはない。
自分の演技力を駆使して、一瞬だけでもかずさの心に春希を映してみせる。千晶はそう決意した。
すうっ
呼吸一つであたりの空気が舞台の上のそれとなり、緊張感が走る。
曜子たちはただならぬ気配を感じつつも、気圧されて立ち尽くす。
『チャンスは一瞬。ひとセリフで決めてやる…』
瀬之内晶の役者としての血が彼女の全身をめぐると、肩のつきや胸のはり、腰の伸び、そして目の輝きがまるで男性の、いや特定の男性の『型』を為しつつあった。
曜子や武也たちが息を呑んで見守る中、瀬之内晶の最後の変化が始まる。
わたしは、誰だ? …おれは…北村春希
…かずさが泣いていたら…何が何でも…何を犠牲にしても助けたいと思うだろう…
できるか? …やる。 おれは…
しばらくの後、瀬之内晶の体に錬成された春希の魂が憑依する。
そして、一瞬の魂の叫びを以てかずさを救うべく、ドアへ一歩踏み出した。 <Ding Dong>
本日の投下は終了しました。
明日は…たぶん投下できますが、今週末は投下できそうにないです。 >>177-180
かずさ、引き篭もったかw
って友人連れてきたってイオタケに千晶って敵ばっかじゃねーか!
天の岩戸の前での曜子さん、お茶目(脳内再生余裕だ)
千晶には曜子ママに「いま公演中で忙しいんですけど〜」くらいの嫌味言って欲しかった
うーんピシャリと言い放つ千晶は格好いいな千晶らしいというか(イオタケの前で爆弾投下はどうかと思うがw)
千晶は、どうなんだろう心理描写とかはあんまりない方がいいように思うウんだけど
一見能天気そうに前触れなくいきなり爆弾投下みたいな方がインパクト出るんじゃないかな
で、まずいぞ春希、いや春希な千晶・・・かずさの忠犬にならないよう気をつけろーwww >>182
劇の最終日が終わるや否や連行してきた、とあるから、その愚痴はない。
ただし、かずさが観劇した翌日の話となってて、
しかも「訴訟をちらつかせた」とあるから、大分破綻気味な状況なのは確かw
その辺は惜しいなぁと思いつつも、毎日楽しみにしてます>作者様 >>184
いや、ども。
こちらも思いついた順に書いていたんで、
読み返して見たら確かに解りにくいわ。
説得開始前の千晶の楽屋エピソードあるんで、
wikiとかに投稿し直す際は修正&千晶エピソード
先にはさみます。 >>182
イオタケ敵じゃないッスよ。
春希に変な気起こさなければ今のところはw
千晶の心理描写なんだけど、省くと書いているほうも訳わからなくなっちゃうので書いてますw
謎の多い千晶のサプライズアタックも魅力的なんですが(あぁ、蘇る本編プレイ時の衝撃)
私には真似できないなあ(^-^;) 春希を象られた口が言葉を発するために開かれる。その刹那だった。
バタンっ、ごんっ!
「かづっ#@&!※@#!」
勢い良く開けられたらドアに、千晶はしたたかに顔を打ち、言葉にならぬ悲鳴とともに尻餅をついた。
「…母さん、美代子さん、ごめんなさいっ!」
籠城戦の集結を告げる謝罪の声の大きさに安堵の表情になる曜子や武也たち。
「…部長も依緒もありがとう。迷惑、かけたな…。この埋め合わせはきっとさせてもらうよ…」
「いやいや。いいって、いいって。いいってことよ〜へへへ」
「よかった、冬馬ぁ…」
「板倉さんもいろいろありがとうございます」
「い〜え〜。どう致しまして」
と、ひととおり礼を言ってまわるかずさを、千晶は尻をついたまま鼻を押さえて涙目で恨みがましく睨みつける。
そんな千晶にやっと気づいたように、かずさが声をかける。
「瀬能さん許してちょんまげ」
「…※@#※&!」
痛みでまだ声が出ない千晶は、声にならない怒声と共に中指を立てた。
かずさは礼を言い終わると、
「みんな悪いけど、すぐにカンを取り戻したいんだ。下のスタジオに行くから。あ、美代子さん、さっきのサンドイッチ持って来て」
そう告げて慌ただしく階下に降りてしまった。美代子はかずさの回復ぶりに嬉々として後を追う。
「…っあぁ。あいたたた…もう、これ腫れちゃうよぉ…最終日の後でよかった…すいません、洗面所借ります…」
ようやく声が出るようになった千晶が、立ち上がりよろよろと洗面所に向かった。 「…ほんと、我が娘は…」
残された曜子が詫びともつかない呟きをもらす。武也も、呆れ顔で言う。
「完全復活…ですね」
板倉と依緒も、かずさの回復を喜びつつ、何か釈然としない表情であった。
「あれは…瀬之内さんの説得が効を奏したのでしょうか?」
「…なんで? どこが?」
翌日、レッスンに来たかずさのピアノを聞いた彼女の師、ヴァレンガリア・溝口は呆れたようにこう語った。
なんで、レッスン休んでおいて完璧に仕上がってるの、と。 **********5/16(日)少し時間を巻き戻り、『シアターモーラス』控え室、『届かない恋』公演最終日カーテンコール後
鏡の前でメイクを落としている先輩女優を前に、千晶はどう声をかけたものかと思案していた。
女優、似鳥まふゆ。劇団「コーネックス二百三十度」所属の看板女優にして、日本屈指の若手演技派舞台女優である。
舞台の下では『そこそこの美人』程度の印象しか与えない彼女だが、一度舞台に上がると圧倒的な存在感で観客の心を鷲掴みにする。
演技力も演技の幅も千晶を凌いでおり、また、豊富な声量とそれを最大限活用した高い歌唱力を誇っている。
それでいて博識で鋭い洞察力、理解力を有しており、旺盛なバイタリティで脚本を貪欲に吸収する。
千晶の脚本『届かない恋』についても鋭い質問を重ね、あっという間に『初芝雪音』役を自分のものにしてみせた。
千晶が彼女に勝てる点は一点、脚本家としての能力のみであり、つまりは役者として何一つ勝てる点はなかった。
千晶がこの劇団に入団したのも彼女がいるからである、と言って過言でない。
彼女は千晶にとって尊敬する目標であり、越えるべき壁であった。
後ろでもじもじしている後輩に声をかけたのは似鳥の方からだった。
「脚本の直し、良かったわよ。平手打ち対決のシーンも金曜日からぐっと良くなってた」
「は、はい!」
先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。
彼女の言う「脚本の直し」とは、今公演『届かない恋』最終日間際にラストシーンに入れた修正である。
大きな修正ではないが、重大な修正だった。
ラストシーン、幕が閉じる直前に機上の榛名の慟哭の声を入れる、それだけだった。
自ら身を引いた榛名の未練を露わにし、後味を一気に悪くするこの修正を劇団は快諾してくれたが…この先輩にどう評価されたかまでは不安だった。
「榛名の慕情の生々しさが出てる。前のはきれいすぎ。あれでいい」
「あ、ありがとうございます!」 千晶はほっと息をついた。
自分のような新人の脚本が公演されるに至ったのは、実力というより「劇団に試されている」面が大きい。
特にこの先輩の評価は怖かった。
二人一役でやっていた大学時代の脚本を磨きなおしてはみたものの…
…直接モデルに会っていない「冬木榛名」の人物描写はまだ改善の余地があるものだった。
そんな折に目の前にひょっこり現れてしまったかずさも不運だったのだろうが…
千晶が強引にかずさを『観察』しにかかったのはそういうわけでもあった。
「でも、最初から思いつかないあたり、あんたやっぱり『まだ』ね」
「…*※#!」
自身のプライベートな極秘事項を言い当てられ、慌て驚く千晶。
「カラダ捧げたオトコから簡単に身を引けるなら苦労しないってこと。あんたも早く経験しときなさい」
「あはは…」
先輩の生々しい指導に苦笑する千晶だった。言われて思い浮かべてしまうのは特定の男性。
千晶は慌ててそのイメージを振り払って、本来伝えるべき話に戻ろうとする。
「…あの、先輩、実は今日の打ち上げちょっと…怖いヒトに呼ばれちゃって…」
「原因は冬馬かずさ?」
「!」
またもや言い当てられ、驚く千晶に似鳥は言う。
「そりゃわかるわよ。前列の方に一幕目なのに顔強ばらせた美人がいればね。あなたが呼んだんでしょ。自分の芸の肥やしに」
「は、はい」
たじろいで答える千晶 2年前の春希や雪菜の時のように十分に作戦を練ることなく、強引にかずさをひっかきまわしたツケは最終日の後に回ってきた。
あの日以来―今日で3日目になる―かずさは部屋に籠って食事もとっていないらしい。
そして、かずさを心配する周りの人間―母親である曜子や友人たち―により、千晶はひっ立てられる羽目になってしまったのだ。
「まあ、脚本の直しに貢献してくれたからいいか…って言えるのは、劇団に迷惑かけないようにしてからね」
「は、はい。そういうわけで今日は失礼します…新人の分際ですいません…」
「ちゃんとみんなもフォローするから、心配しなくても良いわよ」
「あ、ありがとうございます!」
千晶は思った。
本当にこの人はいい人だ。役者としても、先輩としても尊敬できる…ある一点を除いて
「ま、そういうわけだから、来週末はわたしに付き合いなさい。TRPGのコンベンション」
「…え…また…ですか」
「今度はクトゥルフ神話RPGオンリーイベント。どっかのラノベで扱われて以来、変なファンが増えているから、ちゃんと本気のクトゥルフ神話を教えてあげないとね〜」
「あの、来週末はちょっち用事が…」
「あら、じゃあ土日どちらかでいいわよ」
「…」
両方潰させる気だったのか、この先輩は。
「はやく千晶ちゃんにもルール覚えてもらってゲームマスターとかキーパーとかしてもらいたいのよ。千晶ちゃんの作るシナリオ楽しみ〜」
「あはは…じゃあ日曜に…失礼します」
TRPG―テーブルトークRPGという、審判役一人と複数のプレイヤーが架空の人物になりきり、アドリブ会話とサイコロで進行するRPGゲーム―に無理やり人を誘うのが、女優、似鳥まふゆの悪癖であった。 <ぽーん>
本日の投下終了。
週末は仕事で投稿できませんが、
週明けにはかずさの逆襲の話とかずさの籠城時のシーン(ドアの中のシーン)が入ります。 >>188-192
・ひととおり礼を言ってまわるかずさ
・「瀬能さん許してちょんまげ」
・先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。
・・・か、かずさじゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
・・・ち、千晶じゃねぇ (( ;゚Д゚)))ガクブル
まさにこれぞ、もっと恐ろしいものの片鱗をみたぜ!(AA略 >>194
>>謝罪かずさ
美代子への土下座もありましたし、ひととおりくらいはやるかなと
>>ちょんまげ
雪菜に日本に残るコト伝える際の話ふりや、夢想でのルーベンス談からするに、たまにケレンミある皮肉、意趣返しするコかなと
いや「ちょんまげ」の言い返しはキャラずれた苦笑ものと自分でも認識してますが(^。^;)「千晶をからかい返すかずさ」は入れたかったので
>>誉められ喜ぶ千晶
付属演劇部長、ウァトス姫の横暴ぶりから、逆に優れた役者には追従するかなと
雪音役取られ+完璧に演じられ&榛名役酷評され焦る千晶の話を先に入れた方が良かったかなぁ
あと、もう一人ナンバー2先輩構想してますが、横暴な先輩にして「あの男の相手をしろ」と付属演劇部時代のブーメランやるか、は需要あれば **********5/22(土)フィリア音楽ホールにほど近いフレンチレストランにて
千晶が復活した冬馬かずさのコンサートに来てみれば、チケットを購入したC席にはかずさのマネージャーの工藤美代子が待ち受けていた。
そして、S席に案内された。おかげで1ランク上の音楽鑑賞ができた。
さらに、『コンサート後に会食があるのでかずさの友人のあなたも来てほしい』と言われた。
「こないだの件か…S席に案内して聴かせてくれた上に、わざわざ食事に呼ぶのは和解の呼びかけかな? 向こうも訴訟ちらつかせたりしてたし」
と、その時千晶は思っていた。
会食の席もメンバーもだいたい千晶の予想どおりだった。
自分がなぜかかずさの隣り。
板倉や依緒、美代子が周りを囲んでいたが、一人だけ予想外の人物が曜子の隣りにいた。 毛利祐子…今の座長の奥さんだ。劇団の営業主任でもある。
無名の時代から座長を支えてきたヒトだが、嫉妬深く、すぐ座長の浮気を疑うらしい。
入団する新人女優をチェックするのもその一環だとまことしやかに噂されている。
どうやら、曜子と祐子は旧知の間柄だったらしい。
食事は「かずさのコンサート成功を祝して」ということで始められたが、ほどなく祐子と曜子の昔話に花が咲きだした。いや、火花がちりだした。
表面上はにこやかであるが、座長、毛利久志の話になるや、言葉の節々に棘が飛び出し始めたのだ。
「しっかし、あの久志くんのほうからあなたにプロポーズしてきたなんて、今だに信じられないわねぇ」
「ええ、どこぞの性悪女が引っ掻き回してくれやがらなったら、もっと平和だったでしょうねぇ」
「まぁ、賞味期限切れまで平穏無事、なんてことなくて良かったわぁ。ところで、10年目にもつれこんだ結婚生活はまだ楽しい?」
「もちろん。和えて不満を言うとすれば、あなたが永遠にウィーンで頑張ってくれていたらもっと楽しかったのにねぇ」
…あまり関わりたくない会話だ。
と、他の誰もが思った。
しかし、不幸にも千晶に次の会話のバトンが渡された。 「瀬之内ちゃん。曜子となんかトラブったんだって?」
「はい、ちょっと…冬馬かずささんと」
「本当に?」
「? はい」
「…う〜ん。本当か…」
何を疑っているのか、という疑問は曜子が明らかにした。
「だからそう言っているじゃない。久志クンと会ったのは、あくまでかずさと瀬之内ちゃんの件だってば。ここにいるみんな証人よ」
「娘の件をダシにしてまた久志にコナかけに来た、という可能性も残っているけどね」
…四十路めぐってるのにどれだけ信用ないんだ、曜子さんは。
察するに、曜子が劇団を訪れたのを聞いて座長、つまり夫の浮気を疑った、ということらしい。
つまり、千晶、板倉、依緒は「曜子が劇団を訪れた訳」にウソがないことを示す証人というわけだ。
しょーもな…まぁ、変な態度を取って座長の奥さんに睨まれてとばっちりを喰らわないようにしよう、と千晶はそう思っていた。 「で、かずさちゃんはウチの劇団員とどんなトラブルがあったの?」
「あ…それは…ちょっと話す前に『千晶』に確認することが」
「…っ!?」
「ねぇ、千晶…」
千晶は戦慄した。かずさに『千晶』と名前で呼ばれたのは初めてだ。なれなれしさよりもっと危険なものを感じる。
彼女の勘が非常ベルをけたたましく鳴らし始めた。
「千晶…あんたさ…」