【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
和泉 千晶(いずみ ちあき)
峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日
窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。
千変万化する彼女の魅力について語ろう
中身は彩世ゆうが有力
★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1325586230/ 「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」
ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。
「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
「………西村」
「ん…?」
『冬木榛名』が『西村和希』に歩みを進める。
「…やめ…ろ…」
かずさには次の『榛名』の行動がわかっていたから、抗議の声を漏らさざるを得なかった。
しかし、かずさの弱々しい声は聞き入れられず、『榛名』は『和希』に唇をよせる。
舞台上のキスにどよめきの声を上げる観客の中で、かずさ一人だけが軋むような声を上げていた。
そして流れる『3人』の「届かない恋」
かずさの心の悲鳴は止まらなかった。 **********幕間
「…かずささん?」
板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。
「…行く…」
そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」
板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
無理に出ようとしてつんのめったかずさを板倉は止めた。
「かずささん! まだ一幕目が終わっただけで、すぐ次が始まりますよ! まだ瀬之内さんには会えませんってば!」
そう諭されて、我に返り腰を下ろすかずさ。
しかし、体は座しつつもその目は怒りと苛立ちに満ちており、今にも舞台に飛び上がりそうであった。
何で? 何を怒っているの?
板倉は不安を隠せなかった。
やがて、第2幕が始まった。
ここからは物語が大きく現実から逸れ始めた。板倉がかずさの方を見ると、射抜かんばかりの視線で舞台を見ていた。板倉はホッとした。とりあえずは大人しく鑑賞しているようだ…
榛名の想いを知りつつ、和希に猛烈アタックを仕掛ける雪音。やがて、二人は恋人として付き合いを始める。
しかし、新進気鋭のポップス歌手として一人メジャーデビューを果たした雪音は和希とすれ違いの生活を続け、やがて、和希は雪音に隔意と嫉妬を抱き苦しむ。
一方、ピアノより和希のそばにいることを、雪音の身代わりであり続けることを選んだ榛名。しかし、やがて二人は過ちを犯してしまう。
『お前のことなんか別に何とも思っていなかった』榛名の、本当の、そして真摯で深い思いの発露。
そして… 「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」
暗転する舞台
「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」
雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。
「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
場面が明転し、雪音の自室。電話の切れる音ともに枕に伏し、独り涙をこらえる雪音。
くすんだ色の空虚な部屋から「会えない二人」のハリボテのような関係がにじみ出ていた。
枕元に置かれた写真立ての中にだけ、3人の色褪せない姿がある。
…優しさ故、会えない日々の中で一人待ち続ける雪音
…臆病さ故、和希の想いから逃げ続ける榛名
…立ちどまる和希
かずさは血色を失いつつも舞台を凝視し続ける。板倉が時折小声で心配そうに話しかけたが、全く反応しない。
ピアノを捨てた榛名には、和希が側に残り、捨てなかった雪音には、歌だけが残される。
そうして、第2幕が終わったが、かずさは手足が震えてもはや立ち上がることすら出来きなかった。
ただ、張り付けられたように幕の閉じられた舞台を見つめ続けるのみであった。 そして、最終幕。
そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。
「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。
「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
ぱしんっ。榛名も負けじと返す。
平手打ちとともにお互いの本音をぶつけ合い、いつしか和解する二人。
「おまじないだよ」
別れ際に雪音が榛名に渡したのは、あのコンテストの控え室で和希から受け取り、以来片時も離すことがなかった、和希との絆のギターピックだった。
「おまじないだ」
そして、和希からは、キスを
舞台にあのコンテストの日の「届かない恋」が流れ、榛名はピアノを取り戻す。しかし、それは皮肉にもあの日の3人の思い出と和希と雪音の仲まで取り戻してしまった。 二人の為に身を引く決意を固める榛名。
榛名がピアノを取り戻したことを知った母親からの留学の薦めを承け、誰にも知らせずウィーンへ去ろうとする。
飛行機が起つ直前でその事を知り、空港へと向かう和希と雪音。
雪による遅延で奇跡的に3人は出会うことができた。
再会を誓い、和希と雪音は榛名を見送る。しかし、榛名はもう二人の元に戻らないと心に決めていた。
「あれ?」
「何か…ポケットに…」
「これ…和希のギターピック…」
その意味に愕然として飛行機に向かい榛名の名を叫ぶ雪音。その雪音に寄り添う和希。
二人の姿を照らしていたスポットライトが徐々に絞られ、舞台は暗転し、最終幕は閉じられた。
スポットライトが最後に照らしたのは二人の繋がれた手、それは二人の未来を暗示していた。
拍手に包まれる劇場にかずさの慟哭が響き渡った。