【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
和泉 千晶(いずみ ちあき)
峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日
窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。
千変万化する彼女の魅力について語ろう
中身は彩世ゆうが有力
★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1325586230/ その鼓動のリズムはゆっくりと、規則的だった。あの時の、春希と同じ…
「………っ!」
だからこそかずさは気づいてしまう。感情を押し殺し、何かを隠そうとしている鼓動だと
どんっ!
「きゃっ!?」
かずさから両手で突き放され、慌てて声をあげ、距離をとる千晶。
「だからぁ………悪かったって……」
だが、かずさは暗く震えた口調で千晶を問い詰める。
「『知らなかったから』悪かった…って、本当に思っているというのか?」
「え?」
「本当に『知らなかった』『想像もつかなかった』と言うのか?」
「何を?」
千晶はあくまでシラを切ろうとした。
しかし、かずさは追及の刃を振り上げる。
「嘘を吐けっ! お前のシナリオでは雪音が勝っているだろう!
雪音はっ、自分を省みず榛名を助けに来たじゃないか!
わたしが雪菜に勝ったと思っているならなんで、わたしを怒らすのに雪菜のマネをしてみせたんだっ!
おかしいんだよっ! おまえはっ!」
掴みかからんばかりの剣幕に慌てて板倉が間に入ろうとするが、かずさの手足には未だ立ち上がる力は戻っていなかった。
「…ちぇ…おかしいのはあんただよ」
千晶の目からは既に涙は引いていた。
千晶は舌打ちすると先ほどまで被っていた仮面の表情を一枚外し、不機嫌そうに眉を寄せて言った。
「…明らかに判断材料は足りていないのに…推論を勘だけで確証づけて正解に至ってしまうタイプ…
あたしの一番むかつくタイプだ」
「…っ!」 千晶は思った。
慰めさせてももらえないか。
じゃあ、あんたに本当に必要なモノをくれてやるよ。
春希も、あんたの母親もしてくれないことをね。あんたのファンだからね。
ここまでする義理なんてないけど。蛇足だけど。
副作用の強い『劇』薬だけど。くらいやがれ。
そして、一週間で立ち直れよ。
「ああ、そうだよ。振られたのはあんたの方だって、ハナから気づいてたよ。あんたに勝ち目はないって」
「…っ!」
「あんたの話を引き出して、自分の脚本の『答え合わせ』したかっただけだよ。ペラペラしゃべってくれてありがとさん」
「………なんで、わたしが…ふられたと…」
「だってそうじゃん。自分から和解を申し出られるくらいなら、3年間2人に音沙汰なしなんてはずがない。
雪菜の方だろ。あんたに足蹴にされても和解を求めたの」
容赦ない言葉の刃がかずさを血まみれにする。
「逃げてたんだろ? 春希の想いから! 空港であんたを抱きしめてくれたやつから! 恋人の前にもかかわらず!」
「…馬鹿やろう…あたしが…どれ…だけ…」
消え入りそうなかずさの声に、千晶は容赦ない凍てつかんばかりの冷水を浴びせる。
「ああ、全く想定内の負け犬の遠吠えならぬ遠ピアノだね。全部ピアノにぶつけてやんの。
帰ってきても中身は高校生のガキのまんま。ぶっぶー」
「………」
「…雪菜はね。じっと待ってた。選ばれるのが自分でない可能性に怯えつつも。春希の側で傷付きつつも、ね」
「………あ…あぁ…」
千晶は頃合いを見極め、トドメを入れた。
「春希や雪菜のイメージの中のあんたはともかく、実物のあんたを見てると反吐が出る。
脚本家の対象外。『お話にならない』ってやつさ。
『悪いのは自分だ、こんな自分は誰にも愛される訳がない』なんて、
あんたを想う人を踏みにじる有り得ない言い訳に逃げ帰りな、冬馬かずささん」
かずさの目から涙も、光も何もかもが消えた。 「ひどい…ひどいです。瀬ノ内さん。人を何だと思っているんですか!」
板倉が動かないかずさを抱きしめつつ、泣きそうな声で千晶を責めるが、千晶は口調を変えずに答えた。
「そだね〜。『これも役作りのため。わたしにとっては芸がすべて』かな。
あんたが聞きたがっていた『瀬ノ内晶さんの役作りの秘訣は何ですか?』の答えがこれ。記事にしていいよ」
「…っ!」
板倉はくちびるを噛んだ。記事にしてこの怪物を懲らしてやりたいのはやまやま。
しかし、それが冬馬かずさを再び傷つけるのは明白。記事にできようはずがない。千晶もそれがわかって言っている。
魂まで打ち砕かれたかのようなかずさが、床に手をついたままで口を開く。
「…最後の…質問だ…」
千晶は人を喰った態度を続ける。
「〜ん〜。最後だなんて名残惜しいねぇ。でも、まぁ、何でも聞いてちょ」
かずさが絞り出すような声で質問を紡ぐ。
「話にならないわたしは…ともかく…なぜ…榛名は和希と…話の中で結ばれない…」
「へ?」
亡骸のような様子だったかずさの首が持ち上がり、死霊のような呪いの声を上げる。
「なぜ榛名は和希と結ばれなかったのかと聞いているんだっ! 結ばれる結末はなかったかと聞いているんだっ!」
完全に予想外の質問だった。千晶は平静を装うことすらできず、今日初めてかずさの前でうろたえる姿を見せる。
「答えろっ!」
「………」
役者、和泉千晶は何のアドリブも返すことができず。立ちつくした。