【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目
和泉 千晶(いずみ ちあき)
峰城大学文学部3年。
誕生日は8月6日
窓際の席どころか、ゼミ室に寝袋を持ち込んで熟睡している、
怠惰、無気力、依存症を絵に描いたような典型的な大学生。
要領がよく甘え上手なため、今までなんとか進級してきたが、
最近はさすがにゼミのレポートが増えてきたため進級が危ぶまれている。
実は興味を持ったことには寝食を忘れ熱中する性格らしいが、
誰もその姿を見たことがないため真偽のほどは定かではない。
千変万化する彼女の魅力について語ろう
中身は彩世ゆうが有力
★前スレ
【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ねこ一匹目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1325586230/ 春希を象られた口が言葉を発するために開かれる。その刹那だった。
バタンっ、ごんっ!
「かづっ#@&!※@#!」
勢い良く開けられたらドアに、千晶はしたたかに顔を打ち、言葉にならぬ悲鳴とともに尻餅をついた。
「…母さん、美代子さん、ごめんなさいっ!」
籠城戦の集結を告げる謝罪の声の大きさに安堵の表情になる曜子や武也たち。
「…部長も依緒もありがとう。迷惑、かけたな…。この埋め合わせはきっとさせてもらうよ…」
「いやいや。いいって、いいって。いいってことよ〜へへへ」
「よかった、冬馬ぁ…」
「板倉さんもいろいろありがとうございます」
「い〜え〜。どう致しまして」
と、ひととおり礼を言ってまわるかずさを、千晶は尻をついたまま鼻を押さえて涙目で恨みがましく睨みつける。
そんな千晶にやっと気づいたように、かずさが声をかける。
「瀬能さん許してちょんまげ」
「…※@#※&!」
痛みでまだ声が出ない千晶は、声にならない怒声と共に中指を立てた。
かずさは礼を言い終わると、
「みんな悪いけど、すぐにカンを取り戻したいんだ。下のスタジオに行くから。あ、美代子さん、さっきのサンドイッチ持って来て」
そう告げて慌ただしく階下に降りてしまった。美代子はかずさの回復ぶりに嬉々として後を追う。
「…っあぁ。あいたたた…もう、これ腫れちゃうよぉ…最終日の後でよかった…すいません、洗面所借ります…」
ようやく声が出るようになった千晶が、立ち上がりよろよろと洗面所に向かった。 「…ほんと、我が娘は…」
残された曜子が詫びともつかない呟きをもらす。武也も、呆れ顔で言う。
「完全復活…ですね」
板倉と依緒も、かずさの回復を喜びつつ、何か釈然としない表情であった。
「あれは…瀬之内さんの説得が効を奏したのでしょうか?」
「…なんで? どこが?」
翌日、レッスンに来たかずさのピアノを聞いた彼女の師、ヴァレンガリア・溝口は呆れたようにこう語った。
なんで、レッスン休んでおいて完璧に仕上がってるの、と。 **********5/16(日)少し時間を巻き戻り、『シアターモーラス』控え室、『届かない恋』公演最終日カーテンコール後
鏡の前でメイクを落としている先輩女優を前に、千晶はどう声をかけたものかと思案していた。
女優、似鳥まふゆ。劇団「コーネックス二百三十度」所属の看板女優にして、日本屈指の若手演技派舞台女優である。
舞台の下では『そこそこの美人』程度の印象しか与えない彼女だが、一度舞台に上がると圧倒的な存在感で観客の心を鷲掴みにする。
演技力も演技の幅も千晶を凌いでおり、また、豊富な声量とそれを最大限活用した高い歌唱力を誇っている。
それでいて博識で鋭い洞察力、理解力を有しており、旺盛なバイタリティで脚本を貪欲に吸収する。
千晶の脚本『届かない恋』についても鋭い質問を重ね、あっという間に『初芝雪音』役を自分のものにしてみせた。
千晶が彼女に勝てる点は一点、脚本家としての能力のみであり、つまりは役者として何一つ勝てる点はなかった。
千晶がこの劇団に入団したのも彼女がいるからである、と言って過言でない。
彼女は千晶にとって尊敬する目標であり、越えるべき壁であった。
後ろでもじもじしている後輩に声をかけたのは似鳥の方からだった。
「脚本の直し、良かったわよ。平手打ち対決のシーンも金曜日からぐっと良くなってた」
「は、はい!」
先輩から誉められて千晶は顔を明るくする。
彼女の言う「脚本の直し」とは、今公演『届かない恋』最終日間際にラストシーンに入れた修正である。
大きな修正ではないが、重大な修正だった。
ラストシーン、幕が閉じる直前に機上の榛名の慟哭の声を入れる、それだけだった。
自ら身を引いた榛名の未練を露わにし、後味を一気に悪くするこの修正を劇団は快諾してくれたが…この先輩にどう評価されたかまでは不安だった。
「榛名の慕情の生々しさが出てる。前のはきれいすぎ。あれでいい」
「あ、ありがとうございます!」 千晶はほっと息をついた。
自分のような新人の脚本が公演されるに至ったのは、実力というより「劇団に試されている」面が大きい。
特にこの先輩の評価は怖かった。
二人一役でやっていた大学時代の脚本を磨きなおしてはみたものの…
…直接モデルに会っていない「冬木榛名」の人物描写はまだ改善の余地があるものだった。
そんな折に目の前にひょっこり現れてしまったかずさも不運だったのだろうが…
千晶が強引にかずさを『観察』しにかかったのはそういうわけでもあった。
「でも、最初から思いつかないあたり、あんたやっぱり『まだ』ね」
「…*※#!」
自身のプライベートな極秘事項を言い当てられ、慌て驚く千晶。
「カラダ捧げたオトコから簡単に身を引けるなら苦労しないってこと。あんたも早く経験しときなさい」
「あはは…」
先輩の生々しい指導に苦笑する千晶だった。言われて思い浮かべてしまうのは特定の男性。
千晶は慌ててそのイメージを振り払って、本来伝えるべき話に戻ろうとする。
「…あの、先輩、実は今日の打ち上げちょっと…怖いヒトに呼ばれちゃって…」
「原因は冬馬かずさ?」
「!」
またもや言い当てられ、驚く千晶に似鳥は言う。
「そりゃわかるわよ。前列の方に一幕目なのに顔強ばらせた美人がいればね。あなたが呼んだんでしょ。自分の芸の肥やしに」
「は、はい」
たじろいで答える千晶 2年前の春希や雪菜の時のように十分に作戦を練ることなく、強引にかずさをひっかきまわしたツケは最終日の後に回ってきた。
あの日以来―今日で3日目になる―かずさは部屋に籠って食事もとっていないらしい。
そして、かずさを心配する周りの人間―母親である曜子や友人たち―により、千晶はひっ立てられる羽目になってしまったのだ。
「まあ、脚本の直しに貢献してくれたからいいか…って言えるのは、劇団に迷惑かけないようにしてからね」
「は、はい。そういうわけで今日は失礼します…新人の分際ですいません…」
「ちゃんとみんなもフォローするから、心配しなくても良いわよ」
「あ、ありがとうございます!」
千晶は思った。
本当にこの人はいい人だ。役者としても、先輩としても尊敬できる…ある一点を除いて
「ま、そういうわけだから、来週末はわたしに付き合いなさい。TRPGのコンベンション」
「…え…また…ですか」
「今度はクトゥルフ神話RPGオンリーイベント。どっかのラノベで扱われて以来、変なファンが増えているから、ちゃんと本気のクトゥルフ神話を教えてあげないとね〜」
「あの、来週末はちょっち用事が…」
「あら、じゃあ土日どちらかでいいわよ」
「…」
両方潰させる気だったのか、この先輩は。
「はやく千晶ちゃんにもルール覚えてもらってゲームマスターとかキーパーとかしてもらいたいのよ。千晶ちゃんの作るシナリオ楽しみ〜」
「あはは…じゃあ日曜に…失礼します」
TRPG―テーブルトークRPGという、審判役一人と複数のプレイヤーが架空の人物になりきり、アドリブ会話とサイコロで進行するRPGゲーム―に無理やり人を誘うのが、女優、似鳥まふゆの悪癖であった。