0075名無しさんだよもん2018/02/09(金) 20:49:30.95ID:tnseGMQ80 いや、そう思っているのは自分だけで、向こうは気づいていないのかもしれない。 その証拠に、女の子の視線は足下に注がれていた。 そこには、夜の街があった。 たった一歩を踏み出すだけで、遠くの街はすぐ目の前に現れる。 じっとその場から動かなくなった女の子は、やがて何かを決心したように、唇を噛んだ。 一歩を、踏み出したように見えた。 俺は、慌てて声を出した。 声は音にならなかった。 届かなかった。 しかし、やがて女の子はその足を戻した。 そして、後ろを向いて、そのままどこかへと立ち去った。 最後まで、俺の存在に気づくことはなかった。 それが『ひさや』との最初の出逢いだった。