ここに全員いる。
みんなが、ここにいる。
単に、制作スタッフがいるという意味だけじゃない。
幾多の嘘と騙しの上に存在した、仲良しこよしの残骸だ。
そんなものが、この世界に生きる俺たちの寿命を、
心の崩壊までのリミットを、少しだけ延ばしてくれる。
「いいぞ、久弥」麻枝が合図を送る。
「6時まであと、5、4……」いたるが口を閉じ、指を一本ずつ減らしていく。
  3。
夢見ていた。
  2。
こういう他愛ない制作活動、普通のエロゲスタッフらしい日常を。
  1。
思い出があれば、俺はそれでいい。

  0。

満足だ───。

息を吸う。
原稿を手放す。
夏の香りを含んだ夕風が悪戯する手つきでそれをさらっていく。
「あっ?」
原稿は連なって飛び立ち、千々に乱れて中空に散った。
さあ発表だ。
「こちら、東天満パークビル、Key開発室、」
たとえ無駄だとわかっていても。
すがりついて生きていく。
そして俺は力強く言葉を押し出した。