そう言い残して久弥はあっけなく死んだ。
2020年の3月のある晴れた日曜日の朝、右手に麻枝の肖像画を抱え、
左手に鹿せんべいを持ったまま、東京都庁舎の屋上から飛び降りたのだ。
彼が生きていたことと同様、死んだこともたいした話題にはならなかった。