はじめはジョークに過ぎなかった。
久弥はこの世のどこかにいるはずの理想のシナリオライターだった。
しかしそれは当時のまさに『糞』と呼ぶに相応しいエロゲーにウンザリしていたユーザーの間で瞬く間に広まって行った。
久弥ならこう書いた。久弥のあのシナリオは良かった。
ユーザーはそうやって、少しずつ理想のシナリオライター久弥のイメージを固めていった。
彼は不健康で肥り気味の男である、彼が敵対する作家は麻枝である、彼は萌えキャラを自分の手許に置いておかないと落ち着かない、そして彼は親しみやすいことに安易な奇跡が大好きなのだ!
久弥はこうして、読者の理想のシナリオライターのイメージのコラージュとして生まれたのである。
読者は久弥を欲した。故に久弥は存在するのである。