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皆さん、「怒りが増長する」って言葉、聞いたことありますか?

実はこれ、日本語としてはちょっと違和感がある表現なんです。ところがですね、特に中国語を母語とする日本語学習者の中には、けっこうこの表現を使ってしまう人が多い。なぜか?
これはね、漢字が同じでも意味が違うという、まさに中日言語間でありがちな落とし穴なんですよ。

まず、日本語の「増長」という言葉、どういう意味かというと──
「傲慢になること」「つけあがること」。
つまり、たとえば誰かが褒められて調子に乗っちゃった時に、「あいつ、最近増長してるよね」なんて言うんですね。これは、人の態度や行動が悪い方向にエスカレートしていくときに使う。感情そのものに対して使うことは、ほとんどないんです。

ところが、中国語では「増长」って言うと、「量や程度が増える」っていう中立的、あるいはポジティブな意味合いで使われるんですよ。たとえば「人口が増长する」とか、「経済が増长する」とか。
だから、中国語を母語にしている人が日本語の「増長」という漢字を見た時に、「あ、これは“感情が強くなる”って意味でも使えるんじゃないか」って無意識に思っちゃうわけです。
でも!それをそのまま使ってしまうと、「怒りが増長する」なんていう、日本語ネイティブからすると「うーん、ちょっと違うな…」と感じる表現になってしまう。

ここで大事なのは、「同じ漢字を使っているからといって、意味まで一緒とは限らない」ということ。むしろ似ているからこそ、誤解が生まれやすいんですね。これは、言語学で「false friends(偽りの友)」と呼ばれる現象の一種です。
だから日本語を学ぶ皆さんには、「増長」は「悪い意味」で、人の態度や行動に使うという点を、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

感情が強くなることを言いたいなら、「怒りが高まる」「怒りが募る」「怒りが増す」など、自然な日本語の表現を使いましょう。
言葉って、本当に奥が深いですね!