「ふむふむ、よく似合ってるじゃないか」
「こ、これは…その…ちょっと、恥ずかしい、です…」

情報量の対価として、グレイを連れ、ライネスが訪れたのは百貨店、カルナック。
そこの試着室で、ライネスはグレイを着せ替え人形の如く様々な衣装に着替えさせてその目を楽しませていた。
エルメロイ教室でも数多くの生徒から注目を浴びるほどの、美しく、可愛らしい見た目のグレイに似合わない衣装なんてないほどだったが、当の本人はいつもフードで隠していた顔を晒しているのもあってか、恥ずかしそうだ。

「さぁ、次はこの服を着て貰おうかな」

そう言ってライネスはまた衣装を取り出す。
まるでセレブのお嬢様が着ていそうな淡いエメラルド色のワンピースだ。
これはそういう約束だからとライネスの言うことを素直に受け入れるグレイ。しかし、この新鮮な体験はグレイにとっても、なんだか楽しかった。

試着室。そこは人一人が入ることを想定して作られた、小さな箱のような空間。
その中に今、小柄な少女二人が入っている。当然本来二人以上入ることは想定されていないので、試着室は窮屈だ。
服が少々複雑な構造だからと、一緒に試着室に入ってグレイを着せたり脱がせたりするライネス。その時折で手以外の体が当たってしまうことも多々あった。

体と体が擦れる感覚に少しドキドキしながらもグレイ。背を向いたグレイの着た複雑な構造のドレスを楽しそうに脱がせていくライネス。お互い会話はなく、そこにはなんだか独特の雰囲気があった。

ドレスの背中のボタンを外していくライネス。

その手がふと、止まった。

一体どうしたのか、それを確認しようとグレイが振り返ろうとするその前に。

ライネスが顔はいつの間にかグレイの顔の横にあった。ボタンを外していた手をは気がついたら後ろからぎゅっと、グレイを抱き締めていた。