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写真: 長崎県指定の有形文化財「観世音菩薩坐像」

 韓国人窃盗団に盗まれた観音寺の「観世音菩薩坐像」の返還を、韓国の裁判所が差し止める仮処分をした問題で、日韓対立の
発火点となった長崎県対馬市。古来、交易や外交の窓口として朝鮮半島と密接な関係を持ち、年間15万人の韓国人観光客が
訪れる風光明媚な島で住民の気持ちは揺れていた。(田中一世)

 「対馬をバカにしている。こんな無礼な国と友好を深める必要があるのか? 朝鮮通信使行列(の再現パレード)はもうやめた方がいい!」

 毎年8月に開かれる「厳原港まつり対馬アリラン祭」の主催者で、地元企業などでつくる同祭振興会の山本博己会長(50)はこう語気を
強めた。

 祭りのメーンイベントは、江戸時代に対馬藩が仲介役を果たした李氏朝鮮の外交使節団「朝鮮通信使」の行列を約400人で華やかに
再現したパレード。韓国から毎年舞踊団ら約40人を招待しており、対馬と朝鮮半島の交流を象徴する催しとして30年以上定着してきた。

 島内には「まるで韓国の祭りだ」と反対の声もあったが、山本氏らは「日韓友好のためだ」と説得した。だが、観音寺の仏像問題をめぐる
韓国側の対応に堪忍袋の緒が切れた。

 「韓国人との付き合いも多く、いい人もたくさんいるが、もう韓国という国に我慢ならん。パレード中止は対馬にとってマイナスだという意見も
あるだろうが、今年もやるというなら私は会長を降ります」

× × ×

 多くの対馬市民は、今回の韓国の対応に怒り心頭だが、それだけで済まされない事情もある。過疎化と高齢化が進む対馬にとって、韓国人
観光客は欠かせない存在でもあるからだ。

 普段、地元住民さえあまり見かけない閑散とした表通りが、韓国からの高速船が入港すると観光客でごった返す。島南部の厳原地区で
ホテルを営む播磨富子さん(85)はこう語った。

 「商売をやっている私たちにとっては日本人も韓国人も大事なお客さん。同業者はみんなそう思っているはずです…」

 播磨さんのホテルの宿泊客は7割が韓国人。取材に訪れた20日は韓国人33人、日本人は7人だった。

 韓国では、対馬観光が空前のブームとなっている。対馬は福岡から130キロ離れているが、釜山からはわずか50キロ。高速船は最短
1時間10分で結ぶ。平成22年に年間6万人だった韓国人観光客は、24年に15万人に達した。対馬市の人口は約3万4000人なので、
4倍以上の観光客を迎え入れている計算となる。

 観光客急増の最大の理由は、韓国の船会社1社の独占運航だった航路に、22年10月に日韓2社が新規参入し、運賃の熾烈(しれつ)な
値下げ競争が起きたからだ。

 韓国のツアーガイドによると、大亜高速海運(韓国)は釜山発着便の往復便を4千円前後で販売する。

 昨年増えた観光客の目的は「免税店でのショッピング」。まず、韓国の百貨店や釜山旅客ターミナルの免税品店で買い物をし、出国時に
ターミナルで受け取る仕組みだ。対馬に到着したら5、6時間散策して、日帰りで帰国するパターンが多い。

 免税店で、高級ブランド品を2〜3割安く買えるならば、2万円分(割引額は5千円程度)買えば往復の交通費は十分に元が取れる計算に
なる。こういう観光客は島内ではあまりお金を落とさない。

(>>2以降につづく)


msn産経ニュース: 2013.3.24 22:00
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130324/crm13032422000004-n1.htm
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