僕は毎日、必死で自炊したりして、爪に火を灯すような生活をしているのに、
猫又は人間におごってもらおうとするのだ。
たとえば、こんなこともありました。
お昼ごろ、人間があちこちで食事を取ります。
僕は当然、お金がないので外食は出来ません。ですから、手製のお弁当です。
しかし、猫又は弁当を持ってくるわけでもなく、外食するわけでもないのです。
ただ、公園で得意の寂しそうなポーズで時間が過ぎるのを待っているようでした。
「あっ、本物の猫娘だ。お昼、食べないの?」
男の子たちがまた、猫又の周りに集まります。
そうすると、猫又一流の演技が始まります。
「いいの。体の調子が悪いから。」
ウソをつけっていうんです。
体の調子が悪い猫又が仲良しの人間や妖怪と遊ぶかってんだ。
みんな、それを知っているから、きっと、「妖怪だから。」という理由で仕事を断られて、お金がないのかと思ってしまうんです。
「じゃあ、これあげる。猫娘の口に合わないかもしれないけど。」
これですよ。これで、結構、鳥のから揚げなんかをあっちから、こっちからもらって、昼食代を浮かしているわけです。
僕も知らずに「明日、弁当を作ってきてあげるよ。どうせ、1個作るのも、2個作るのも同じだから。」と言って、
本当に作ってきてあげたことがあるんです。
「ありがとう。嬉しい。あなたって、料理が上手なんだね。」
何、言ってやがんだと思いました。
結局、それだって、猫又の同情をかうそぶりにまんまと乗せられてしまったからなんです。
この清く、貧しく、恥ずかしく、生きている僕が猫又のためになぜ、弁当を作ってあげなければならなかったのか。
今、考えてみても、くやし〜い。