自宅に帰ろうと思ったのだが、私のお尻は悲鳴をあげ、限界寸前だったのでお店のトイレを探しまわりやっと見つけた。
見つかったのはいいが、トイレはお店の外にあり、古くてお世辞にもきれいとはいえないものだった。
しかし「背に腹は変えられぬ」。いや、逆に「ここにあってくれてありがとう」と感謝して駆け込んだ。和式か。
和式便所の扉の下の隙間は結構広く、お尻がスースーするので嫌だなと思った。
しかし私のお尻はもうそんな贅沢をいっていられる状態ではなかったので、とにかくズボンとパンツを一気にずりおろした。
「ジャー」だか「シャー」だかの音と共に一瞬のためらいもなく、出るべき場所から出るべきものが出た。「あ〜このまま天国に行ってもいいわ〜」スーっと腹痛が消えた。
痛みが消えたことの喜びと、なんともいえぬ爽快感を得た。しかし、それと入れ替わるように、私の第六感が鋭くなった。「何か人の気配がする」
ふと後ろを振り返ると、便所の扉の下から、一握り分の髪の毛7pほどがこちら側に横たわっていた。
のぞき魔!トイレの床に這いつくばって便所覗いてる!
私は低い声でうなった。
すると、私の声に驚いたようでのぞき魔の気配が消えた。
私は怖くて、その場から逃げようとお尻を拭きもせずにパンツをあげた。そんな緊急事態でも、お尻だけは隠しておこうと羞恥心のセンサーだけは働いたのだ。
しかし恐怖で手足が震えた。ズボンは膝のあたりまでしか上げられず、ズボンのウエスト部を両手で落ちないようにつかみ、中腰で逃げた。
なんとか店の中に入り、店員さんを見つけ「便所のぞかれた」と訴えた。
無様な格好だった。便所は覗かれるわ、ズボンはちゃんと履けてないわ。ただ一つ救われたのはパンツを履いていたことだった。
和式便所でお尻の穴を見られただけでも屈辱だが、扉下の隙間が広かったせいで、見られたのはお尻だけでないことは想像に難くない。私のお尻たちがお祭り騒ぎだったこともしっかりとさらしてしまったのだ。
たとえ便所をのぞかれたことを店員に訴えてようとも、のぞき魔の記憶にあの姿を永久保存されることにかわりはない。
もし写真を撮られていたとしても、尻紋なんぞとったことはないので、お尻の穴で身元がバレることはないだろうが実に不愉快だ。
私は、店員さんと話をするうちに少しずつ冷静さを取り戻し、お尻を拭いていないことの方がとても気になりだした。
恥ずかしさも込み上げてきたので店員さんに「すみませんでした」とだけ言い残しフェードアウトした。
自宅に帰ってすぐにお尻を洗ったことはお伝えしておく。
その後1週間ほど傷ついたこともお伝えしておこう。
のぞき魔よ、和式便所だからよく見えただろうよ。私のお尻の穴の記憶は忘れ去り、その後地獄に落ちればいい。