河野明子がM女という憶測は間違いない。誰にも気取られていないマゾとしての本質を
心に秘めているのだ。
河野明子は、自分の心の奥底に眠っている「誘拐され、身動き出来ないくらいの厳しい緊縛と一声も発せられない猿轡をされてみたい」という卑猥な願望がある。
子供の頃から現在まで、他人に自分が『マゾの血が流れている』事を見抜かれまいと生きてきた。
しかし、それ以上に自分の心の奥底に眠っている「クロロホルムを嗅がされて眠らされ
て誘拐され、身動き出来ないくらいの厳しい緊縛と一声も発せられない猿轡をされてみたい」という願望は年齢とともに強くなり、今では毎夜のように、誘拐妄想をして自慰の虜になっている。
河野明子は、俺の中では理想とする顔と身体の持ち主で、妖艶でなまめかしく、しかも、高貴な薫りが漂う「最高級の獲物」と感じるくらいの優雅でエレガントに加えマゾの本性を秘めた、正に絶品と思わせる女性だ。
 きっと、誘拐され監禁された河野明子は猿轡と縛りの厳しさから身体が痺れ、もっと辛そうに身悶えするに違いない。
猿轡の辛さに耐え身悶えする河野明子の姿こそ、この世でもっとも美しい女の姿だ。
「麻縄の胸縛り」、「厳しい猿轡」、「背中に透けるブラジャー」、着衣緊縛の3種の神器も、河野明子はすべて整っている。
 今、俺の目の前のテーブルには、予め準備したクロロホルムを含ます為に使う白いガーゼの大きな布と、白地に紫紺の水玉模様の豆絞りの手拭が、細長く綺麗に折り畳まれている。この手拭の真ん中に結びコブを作って猿轡にするのだ。
 その豆絞りの手拭を玩びながら、俺は時間を忘れて、深い妄想に入り込んで行く。